24 / 34
第一章 虜囚
24話 神人
しおりを挟む
今度こそ落ち着いて真面目な話。
エンドレスになっちゃうからって、エッチなことは禁止になった。
それでも、カモフラージュのために周りでは大乱交大会が続いているので、エッチな気分になっちゃってついもじもじしてしまう。
改めて車座になったみんなそんな感じだけど、いい加減我慢しないと。
「えっと……神人の話だったか?」
何の話だったかと思い出すように考えていたウルガが口を開く。
「ああ、俺たち人間とは違うって言ってたがどういうことだ?」
クロウくんが不思議そうな顔をしているけど、僕も気になる。
所長を見た限りでは僕ら人間と変わりがないように見えたけど、『神人』とかって大仰な名前だし、なにか特別な種族なんだろうか?
「言葉通りの意味だ。
神人はお前ら人間とは別の種族で、俺らの世界にもお前らと同じ人間も昔はいたんだが、もう滅んでいる」
ウルガの口からあっさりと出た言葉を聞いて、僕たちの間に動揺が走った。
まさか異世界では人間滅んでたとは……。
「え?ということは、所長たち神人ってなんなの?
言葉通り神様の関係者?」
「ああ、いわゆる人間と神の混血児だな」
またこちらの世界の人間が絶句してしまった。
異世界だし魔法とかある時点で何でもありだとは分かっていたけど、神様とか普通にいる世界なんだ。
「まあ、『神』と言ってもいわゆる『全知全能の神』とは違った存在だがな」
「えっと、多神教的な?」
一神教の神様は全知全能なことが多いけど、多神教の神様は意外と抜けていたりするからそう言うことなんだろうか?
「いや、そう言うのともちょっと違う。
昔話になるが、昔々……そろそろ300年になるかな?
まあそれくらい前には、人間も俺たち亜人も、今は名前も失われてる創造神を信仰していてな」
300年前と聞いて一瞬驚いたけど、神様の名前が失われるにしては随分最近だな?
300年前と言ったらニホンの場合、ヘーセーとかレーワとかの時代だったと思うけど、まだ当時の偉人の名前ですら残ってるのに。
僕以外にも不思議に思ってた人がいて――クロウくんとか――顔に出ていたのか、ウルガが少し苦笑を浮かべる。
「まあ、それくらい大きな出来事があったんだよ。
当時は、今は絶滅した人間と俺たち亜人……当時は魔族って呼ばれてた種族が長い闘いを続けててな。
それこそ千年以上長く……ダラダラとした戦いが続いていたらしい」
ダラダラとした戦いか、言いたいことは分かる。
それこそ今のニホンがそんな感じだ。
勝ち目のない戦いをただダラダラと続けている。
まあ、ニホンの場合には相手が降伏交渉のテーブルにもついてくれないっていう事情もあるんだろうけど。
「そんな平和ではないが穏やかな時代だった300年前に、突如一人の英雄が生まれてな。
そいつは今まで俺らの世界にはなかった『スキル』という化け物じみた力を使うやつでな、紆余曲折……もあったもんじゃないくらいあっさりと俺たち魔族を征服しちまったんだよ」
「スキル……。
魔法とは違うの?」
こちらの人間としては、どちらも言葉としてはあるけど実在はしなかったものなのでいまいち想像がつかない。
「ああ、発動に溜めとマナが必要になる魔法と違って、スキルは溜めもコストも必要なく、しかも、魔法以上の効果を出せるんだよ」
……一瞬、『はえぇ~』と馬鹿みたいに聞いていたけど、つまり向こうの世界には魔法の他にスキルという化け物じみた力もあるということか。
ますます絶望的だな、うちの世界。
「つまりアレか、その英雄様が魔族を征服した後、世界征服までして自分が神になっちゃったとかそんな感じか?」
クロウくんは呆れたように言うけど、本当に呆れるしかない話だ。
「ああ、そう言うこったな。
ちなみに、こっちの世界には『国』は神聖帝国一つしか無いぞ。
完全な世界統一国家だ」
つまり僕らは向こうの世界すべてを相手にしていたってことか。
向こうの世界の別の国に救援を求めるとかそう言う手すら使えないとは。
「……降伏させてもらえんなら、素直に降伏させてもらいてえもんだな」
本当だ。
流石に戦力が違いすぎて、戦い続けることが馬鹿らしくなってくる。
「……って、おいっ!?
さっき、神人は神との混血児だって言ってなかったかっ!?
しかも、神人以外の『人間』は滅んでるって」
ああ、そうそう、そう言う話だったっけ…………え?
「ま、そう言うこった。
スキルが遺伝することを知った、我らが崇拝する現人神様はうちの世界の女ども……キレイどころだけを孕ませて子供を作って、自分の子供以外の人間はすべて殺しちまったんだよ。
その最後の人間の女たちも当然もう老衰なりで死んじまってるから、うちの世界では人間は滅んでるってわけだ」
と、とんでもない『神様』だな。
「え?それ誰も抵抗しなかったの?」
「当然、世界の半数以上が……俺たち魔族ですら抵抗したさ。
だが、神本人はもとより、スキルを受け継いだ神人たちの戦力は圧倒的でな。
その上、神の『仲間』だったエルフやドワーフ、フェアリーなんかの種族が向こうについちまったせいで、抵抗軍は大敗北。
人間は滅んで、魔族は二等国民である『亜人』に落とされて、言葉も文字まで統一されて……現在に至るって感じだ」
な、なんか、向こうの世界もなかなかすごいことになってたんだな。
「ということで、これがお前らとの『戦闘』に俺ら亜人しか顔を出さない理由だ。
いや、まあ、この間の反攻戦では一等国民であるエルフが前線に出てきたけどな。
あんなことはめったに無いことだな」
「……ちなみに、エルフは『神』の仲間だったって言うけど、もし敵に回ってたら神のスキルとエルフの魔法どっちが強いの?」
「比べるまでもなく神のスキルだな」
恐る恐る聞いた僕に、ウルガがあっさりと何も迷うことなく答えた。
エルフの魔法ですら一方的だったのに、この上更に強いスキルとやらまで……。
僕達、こちらの世界の人間の絶望感が濃くなる。
……取り返しがつかないくらい濃くなる。
「まあまあ、それはあくまで『神』のスキルと比べた場合であって、『神人』のスキルと比べたらだいたいトントン、あとは個人差って感じだぞ」
慰めるようなウルガの言葉を聞いて、僕たちの間に漂っていた絶望が少しだけ薄くなる。
それでも、絶望的なことには変わりないけれど……。
「まあ、神本人のスキルがないだけまだましか。
その分数が増えたと考えると、それはそれで厄介だがな」
少しでも絶望感を薄めようと明るい材料を探すクロウくんの言葉を聞いて、ウルガたち異世界人が気まずそうな顔をする。
「あっとな……勘違いさせたかもしれないが、件の英雄……現人神、まだ生きてるぞ」
ウルガくんの言葉を聞いて、僕たちこちらの世界の人間の時が止まる。
しばらく身じろぎ一つしなくなってしまった僕らをウルガくんたちが心配そうに見てる。
そのまま十分位経っただろうか?
クロウくんが絞り出すような声で僕たちの誰もが思っていたことを口に出した。
「さ、三百年前なんだよな?
その英雄が生まれたのって?」
確かにウルガくんはそう言っていたはずだ。
その英雄とやらは300年生きていると言うんだろうか?
「だからあいつは自らを『現人神』って名乗ってんだよ。
スキルといい、300年間歳を取っていない様子といい、実際のところ本当に『人間』なのか微妙なところだって言われてる」
「生きていることにしているだけ……という可能性は?」
「それはなんとも言えないけどな。
少なくともこの世界と繋げたのは現人神のスキルの力だし、そう言う事ができる存在がいるのは確かだ」
異世界転移を可能にするとか……正しく神の所業と考えるしか無い。
え?そんなのがいる国を乗っ取ろうっていうの?
無理でしょ。
「なあ、本当に降伏するのは無理なのか?
もうこうなったら、奴隷でも生きてるだけまだマシな気がしてきた」
発案者のクロウくんも同じ結論に行き当たっちゃったみたいで、気の抜けた顔でウルガくんに聞いている。
ミツバくんももう苦笑いを浮かべちゃってる。
「残念ながら、神は異世界人がお嫌いのようでな。
さっきも言ったとおり、奴隷として扱うっていう倫理的な問題と、遺伝子汚染の話もあるから絶滅コースが一番あり得ると思う」
「絶滅させることの倫理的問題も考えてくれよぉ……」
ああ……クロウくんがガックリうなだれてしまった。
「なんで神様は異世界人のことがそんなに嫌いなんだよ……」
ガックリうなだれたままクロウくんが誰にとはなく問いかける。
実際不思議なものだ。
見てもいない異世界の人をそんなふうに嫌うとか……。
と言うか、自分の血統以外の人間も滅ぼしたらしいし人間自体が嫌いなのかな?
「正直、それは俺らにも分からん。
神から『この世界を征服しろ』って神託が出た時も意味が分からなくて大騒動になったしな」
ウルガが苦笑いを浮かべながら言うのを聞いたモルックくんも苦笑いを浮かべている。
向こうの世界の人としても、この戦争には戸惑ってたんだ……。
「あの……その件だけど……」
今まで黙って話を聞いていたミツバくんが手を上げた。
エンドレスになっちゃうからって、エッチなことは禁止になった。
それでも、カモフラージュのために周りでは大乱交大会が続いているので、エッチな気分になっちゃってついもじもじしてしまう。
改めて車座になったみんなそんな感じだけど、いい加減我慢しないと。
「えっと……神人の話だったか?」
何の話だったかと思い出すように考えていたウルガが口を開く。
「ああ、俺たち人間とは違うって言ってたがどういうことだ?」
クロウくんが不思議そうな顔をしているけど、僕も気になる。
所長を見た限りでは僕ら人間と変わりがないように見えたけど、『神人』とかって大仰な名前だし、なにか特別な種族なんだろうか?
「言葉通りの意味だ。
神人はお前ら人間とは別の種族で、俺らの世界にもお前らと同じ人間も昔はいたんだが、もう滅んでいる」
ウルガの口からあっさりと出た言葉を聞いて、僕たちの間に動揺が走った。
まさか異世界では人間滅んでたとは……。
「え?ということは、所長たち神人ってなんなの?
言葉通り神様の関係者?」
「ああ、いわゆる人間と神の混血児だな」
またこちらの世界の人間が絶句してしまった。
異世界だし魔法とかある時点で何でもありだとは分かっていたけど、神様とか普通にいる世界なんだ。
「まあ、『神』と言ってもいわゆる『全知全能の神』とは違った存在だがな」
「えっと、多神教的な?」
一神教の神様は全知全能なことが多いけど、多神教の神様は意外と抜けていたりするからそう言うことなんだろうか?
「いや、そう言うのともちょっと違う。
昔話になるが、昔々……そろそろ300年になるかな?
まあそれくらい前には、人間も俺たち亜人も、今は名前も失われてる創造神を信仰していてな」
300年前と聞いて一瞬驚いたけど、神様の名前が失われるにしては随分最近だな?
300年前と言ったらニホンの場合、ヘーセーとかレーワとかの時代だったと思うけど、まだ当時の偉人の名前ですら残ってるのに。
僕以外にも不思議に思ってた人がいて――クロウくんとか――顔に出ていたのか、ウルガが少し苦笑を浮かべる。
「まあ、それくらい大きな出来事があったんだよ。
当時は、今は絶滅した人間と俺たち亜人……当時は魔族って呼ばれてた種族が長い闘いを続けててな。
それこそ千年以上長く……ダラダラとした戦いが続いていたらしい」
ダラダラとした戦いか、言いたいことは分かる。
それこそ今のニホンがそんな感じだ。
勝ち目のない戦いをただダラダラと続けている。
まあ、ニホンの場合には相手が降伏交渉のテーブルにもついてくれないっていう事情もあるんだろうけど。
「そんな平和ではないが穏やかな時代だった300年前に、突如一人の英雄が生まれてな。
そいつは今まで俺らの世界にはなかった『スキル』という化け物じみた力を使うやつでな、紆余曲折……もあったもんじゃないくらいあっさりと俺たち魔族を征服しちまったんだよ」
「スキル……。
魔法とは違うの?」
こちらの人間としては、どちらも言葉としてはあるけど実在はしなかったものなのでいまいち想像がつかない。
「ああ、発動に溜めとマナが必要になる魔法と違って、スキルは溜めもコストも必要なく、しかも、魔法以上の効果を出せるんだよ」
……一瞬、『はえぇ~』と馬鹿みたいに聞いていたけど、つまり向こうの世界には魔法の他にスキルという化け物じみた力もあるということか。
ますます絶望的だな、うちの世界。
「つまりアレか、その英雄様が魔族を征服した後、世界征服までして自分が神になっちゃったとかそんな感じか?」
クロウくんは呆れたように言うけど、本当に呆れるしかない話だ。
「ああ、そう言うこったな。
ちなみに、こっちの世界には『国』は神聖帝国一つしか無いぞ。
完全な世界統一国家だ」
つまり僕らは向こうの世界すべてを相手にしていたってことか。
向こうの世界の別の国に救援を求めるとかそう言う手すら使えないとは。
「……降伏させてもらえんなら、素直に降伏させてもらいてえもんだな」
本当だ。
流石に戦力が違いすぎて、戦い続けることが馬鹿らしくなってくる。
「……って、おいっ!?
さっき、神人は神との混血児だって言ってなかったかっ!?
しかも、神人以外の『人間』は滅んでるって」
ああ、そうそう、そう言う話だったっけ…………え?
「ま、そう言うこった。
スキルが遺伝することを知った、我らが崇拝する現人神様はうちの世界の女ども……キレイどころだけを孕ませて子供を作って、自分の子供以外の人間はすべて殺しちまったんだよ。
その最後の人間の女たちも当然もう老衰なりで死んじまってるから、うちの世界では人間は滅んでるってわけだ」
と、とんでもない『神様』だな。
「え?それ誰も抵抗しなかったの?」
「当然、世界の半数以上が……俺たち魔族ですら抵抗したさ。
だが、神本人はもとより、スキルを受け継いだ神人たちの戦力は圧倒的でな。
その上、神の『仲間』だったエルフやドワーフ、フェアリーなんかの種族が向こうについちまったせいで、抵抗軍は大敗北。
人間は滅んで、魔族は二等国民である『亜人』に落とされて、言葉も文字まで統一されて……現在に至るって感じだ」
な、なんか、向こうの世界もなかなかすごいことになってたんだな。
「ということで、これがお前らとの『戦闘』に俺ら亜人しか顔を出さない理由だ。
いや、まあ、この間の反攻戦では一等国民であるエルフが前線に出てきたけどな。
あんなことはめったに無いことだな」
「……ちなみに、エルフは『神』の仲間だったって言うけど、もし敵に回ってたら神のスキルとエルフの魔法どっちが強いの?」
「比べるまでもなく神のスキルだな」
恐る恐る聞いた僕に、ウルガがあっさりと何も迷うことなく答えた。
エルフの魔法ですら一方的だったのに、この上更に強いスキルとやらまで……。
僕達、こちらの世界の人間の絶望感が濃くなる。
……取り返しがつかないくらい濃くなる。
「まあまあ、それはあくまで『神』のスキルと比べた場合であって、『神人』のスキルと比べたらだいたいトントン、あとは個人差って感じだぞ」
慰めるようなウルガの言葉を聞いて、僕たちの間に漂っていた絶望が少しだけ薄くなる。
それでも、絶望的なことには変わりないけれど……。
「まあ、神本人のスキルがないだけまだましか。
その分数が増えたと考えると、それはそれで厄介だがな」
少しでも絶望感を薄めようと明るい材料を探すクロウくんの言葉を聞いて、ウルガたち異世界人が気まずそうな顔をする。
「あっとな……勘違いさせたかもしれないが、件の英雄……現人神、まだ生きてるぞ」
ウルガくんの言葉を聞いて、僕たちこちらの世界の人間の時が止まる。
しばらく身じろぎ一つしなくなってしまった僕らをウルガくんたちが心配そうに見てる。
そのまま十分位経っただろうか?
クロウくんが絞り出すような声で僕たちの誰もが思っていたことを口に出した。
「さ、三百年前なんだよな?
その英雄が生まれたのって?」
確かにウルガくんはそう言っていたはずだ。
その英雄とやらは300年生きていると言うんだろうか?
「だからあいつは自らを『現人神』って名乗ってんだよ。
スキルといい、300年間歳を取っていない様子といい、実際のところ本当に『人間』なのか微妙なところだって言われてる」
「生きていることにしているだけ……という可能性は?」
「それはなんとも言えないけどな。
少なくともこの世界と繋げたのは現人神のスキルの力だし、そう言う事ができる存在がいるのは確かだ」
異世界転移を可能にするとか……正しく神の所業と考えるしか無い。
え?そんなのがいる国を乗っ取ろうっていうの?
無理でしょ。
「なあ、本当に降伏するのは無理なのか?
もうこうなったら、奴隷でも生きてるだけまだマシな気がしてきた」
発案者のクロウくんも同じ結論に行き当たっちゃったみたいで、気の抜けた顔でウルガくんに聞いている。
ミツバくんももう苦笑いを浮かべちゃってる。
「残念ながら、神は異世界人がお嫌いのようでな。
さっきも言ったとおり、奴隷として扱うっていう倫理的な問題と、遺伝子汚染の話もあるから絶滅コースが一番あり得ると思う」
「絶滅させることの倫理的問題も考えてくれよぉ……」
ああ……クロウくんがガックリうなだれてしまった。
「なんで神様は異世界人のことがそんなに嫌いなんだよ……」
ガックリうなだれたままクロウくんが誰にとはなく問いかける。
実際不思議なものだ。
見てもいない異世界の人をそんなふうに嫌うとか……。
と言うか、自分の血統以外の人間も滅ぼしたらしいし人間自体が嫌いなのかな?
「正直、それは俺らにも分からん。
神から『この世界を征服しろ』って神託が出た時も意味が分からなくて大騒動になったしな」
ウルガが苦笑いを浮かべながら言うのを聞いたモルックくんも苦笑いを浮かべている。
向こうの世界の人としても、この戦争には戸惑ってたんだ……。
「あの……その件だけど……」
今まで黙って話を聞いていたミツバくんが手を上げた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
13
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる