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【番外編】
ドロップパールのお守り
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本編の第57話にて
ユヅキが意識を失ってる間のお話になります。
--------------------
思い出されるのは、周りから距離を置かれていた俺を見つけてくれた時のことだ
マスターが声を掛けてくれなかったら、あのまま依頼をやり続ける1つの駒になっていたのだろう
あの時の俺はレイルだけでなくリヒトも、そしてマスターのことさえも覚えてはいなかった。
汚れている縁側を手で払ってから座る。そうして見上げてから空へ手を伸ばした。
光の力が込められていく、その中には葛藤や困惑といったものも混ざる。
するとそれを察知したレイルにばしっと腕を叩かれ、武術を吸収されてしまった。
「武術をそんな使い方するな」
その流れでレイルも隣に座り、怪訝そうな表情で様子を窺われた。
「……今はあまりコントロールが上手くいかないみたいだ」
未熟だと呟けばレイルに嫌味かよ、と不機嫌さを隠すことなく返された。
いつもの調子で関わってくれているんだと、それが今の俺にとってはとてもありがたい存在だった。
俺達の背後には、畳で横になっているマスターの静かな呼吸が繰り返されている。一見すれば平和なひとときなのかもしれない
レイルの赤い髪が、陽に照らされているからか少しだけ橙に見える。ちゃり、と彼の長い耳にある翠色の耳飾りが風に揺れて鳴った。
「前から気になってたんだけど、これは?」
左手で無意識に握っていたそれを指で差される。見せるように手を開くと、それは意志を持ったかのようにきらりと一瞬光った。
それは白い雫型の宝石で、金の装飾が縁取っているお守りになる。
「付けるにしても、どこか無くしてしまいそうでな」
これはまだマスターがこの世界に来ていない時に貰った大切な物になる。
装備の付け替えはよくある事だが、これはずっと俺の物だと誤解しそうになるくらいには長く所持している。
「綺麗だな…… 記憶が正しけりゃ、オレは1回も付けたことない」
「俺だって付けたことない物くらいあるぞ」
苦笑しながらそう答えると、そうだなとレイルが微笑んだ。それこそ装備品なんてたくさんあるし、強化や錬成をすれば唯一無二になる。
「羨ましがりそうだから黙っていたが、このお守り…どういう意味か分かるか?」
俺はそれを見せるようにしてレイルに聞いてみた。石言葉ってことか?と彼は首を傾げる。
「知らないけど、雫の形をした真珠ってことは…… 白だし純粋とか?でも羨ましがる…」
考え込むようにしてレイルはしばらく黙った。でも分からないというようにしてこちらを見た。
「俺も意味が分かった時はぎっくり腰になったな」
そういうのはいいから教えろ、と肘で突かれて催促される。
「“最愛の人”だ」
そのドロップパールのお守りは、何もマスターに限った物ではない
数あるうちの、アイテムの1つで他にドロップパールの装飾品などいくらでもある。
そうであってもなくても、そんなこと俺にとっては関係ない
例え主人が覚えていなくとも、俺が覚えていればいいだけのこと
2月2日は俺の誕生日、正しくは創り出してもらった日になる。
想像の中から貴方を見ていたよ。時間を掛けて象ってくれてありがとう、マスター
貴方はゲームだし、とか。そもそも作らないと遊べないじゃんと、言うだろう
そうだとしても、それがなければ俺は生まれなかった。レイルもリヒトも生まれなかっただろう
だから俺には、貴方を守り抜く使命がある。手の中で光るお守りを見つめてから、再び空を見上げた。
「俺は、俺の“最愛の人”の為に。俺にしか出来ないことをしてみせるよ」
「エースのそういうところ、苦手だけど好きだな」
遠慮ない言いようにお前は相変わらずだな、と笑ってしまった。もしリヒトが居たら嫌な顔だけしていそうだ
だからこそマスターには必ず、無事に帰って頂かなくてはならないのだ
ぐっと大切なそれを握り、マスターが眠っている方向へと振り返って近寄った。
(どうか、無事でいてほしい)
ユヅキが意識を失ってる間のお話になります。
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思い出されるのは、周りから距離を置かれていた俺を見つけてくれた時のことだ
マスターが声を掛けてくれなかったら、あのまま依頼をやり続ける1つの駒になっていたのだろう
あの時の俺はレイルだけでなくリヒトも、そしてマスターのことさえも覚えてはいなかった。
汚れている縁側を手で払ってから座る。そうして見上げてから空へ手を伸ばした。
光の力が込められていく、その中には葛藤や困惑といったものも混ざる。
するとそれを察知したレイルにばしっと腕を叩かれ、武術を吸収されてしまった。
「武術をそんな使い方するな」
その流れでレイルも隣に座り、怪訝そうな表情で様子を窺われた。
「……今はあまりコントロールが上手くいかないみたいだ」
未熟だと呟けばレイルに嫌味かよ、と不機嫌さを隠すことなく返された。
いつもの調子で関わってくれているんだと、それが今の俺にとってはとてもありがたい存在だった。
俺達の背後には、畳で横になっているマスターの静かな呼吸が繰り返されている。一見すれば平和なひとときなのかもしれない
レイルの赤い髪が、陽に照らされているからか少しだけ橙に見える。ちゃり、と彼の長い耳にある翠色の耳飾りが風に揺れて鳴った。
「前から気になってたんだけど、これは?」
左手で無意識に握っていたそれを指で差される。見せるように手を開くと、それは意志を持ったかのようにきらりと一瞬光った。
それは白い雫型の宝石で、金の装飾が縁取っているお守りになる。
「付けるにしても、どこか無くしてしまいそうでな」
これはまだマスターがこの世界に来ていない時に貰った大切な物になる。
装備の付け替えはよくある事だが、これはずっと俺の物だと誤解しそうになるくらいには長く所持している。
「綺麗だな…… 記憶が正しけりゃ、オレは1回も付けたことない」
「俺だって付けたことない物くらいあるぞ」
苦笑しながらそう答えると、そうだなとレイルが微笑んだ。それこそ装備品なんてたくさんあるし、強化や錬成をすれば唯一無二になる。
「羨ましがりそうだから黙っていたが、このお守り…どういう意味か分かるか?」
俺はそれを見せるようにしてレイルに聞いてみた。石言葉ってことか?と彼は首を傾げる。
「知らないけど、雫の形をした真珠ってことは…… 白だし純粋とか?でも羨ましがる…」
考え込むようにしてレイルはしばらく黙った。でも分からないというようにしてこちらを見た。
「俺も意味が分かった時はぎっくり腰になったな」
そういうのはいいから教えろ、と肘で突かれて催促される。
「“最愛の人”だ」
そのドロップパールのお守りは、何もマスターに限った物ではない
数あるうちの、アイテムの1つで他にドロップパールの装飾品などいくらでもある。
そうであってもなくても、そんなこと俺にとっては関係ない
例え主人が覚えていなくとも、俺が覚えていればいいだけのこと
2月2日は俺の誕生日、正しくは創り出してもらった日になる。
想像の中から貴方を見ていたよ。時間を掛けて象ってくれてありがとう、マスター
貴方はゲームだし、とか。そもそも作らないと遊べないじゃんと、言うだろう
そうだとしても、それがなければ俺は生まれなかった。レイルもリヒトも生まれなかっただろう
だから俺には、貴方を守り抜く使命がある。手の中で光るお守りを見つめてから、再び空を見上げた。
「俺は、俺の“最愛の人”の為に。俺にしか出来ないことをしてみせるよ」
「エースのそういうところ、苦手だけど好きだな」
遠慮ない言いようにお前は相変わらずだな、と笑ってしまった。もしリヒトが居たら嫌な顔だけしていそうだ
だからこそマスターには必ず、無事に帰って頂かなくてはならないのだ
ぐっと大切なそれを握り、マスターが眠っている方向へと振り返って近寄った。
(どうか、無事でいてほしい)
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