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【番外編】
6月21日
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レイルの誕生日祝いとして書き下ろしました。
本編よりも前のお話になります。
--------------------
『親愛度って何?好感度とはどう違うの?』
『そんなことやってる暇あるならエリア出せ』
『つまんな』
『これいいと思います!楽しみです!』
そんなプレイヤーの声があふれる中、レイルは配信情報を更新し続けていた。
「……魔術を使ってリロードし続けるな…」
「悪ィ……とか言って、リヒトも気になってるじゃねえか」
否定はしない……とオレが更新し続けている画面をじっと見続けている。
「β版…実装するかどうか、怪しそうだ……」
「してくれたらいいな程度だろ」
淡い期待を抱いているリヒトだったが、きっとオレと同じくらい楽しみにしているのだろう
そんなある日のことだった。鍛錬後の休憩でうとうとしていたところ、突然オレは別空間へ飛ばされた。
「なっ…何だ?」
瞬時に周辺を調べてみるが何も出て来ない。全く情報がない、なんてことはトリスピでは有り得ない。となればここは――――。
『は…?まい、るーむ……?…“あなたを呼び出しています?”…何だ、どうなって…… うわっ!?』
眩しくて慄いている間に、目の前には黒い人型のシルエットが目の前に立っていた。
「…すご…… レイルじゃん…」
声からして男性のようだ。こんな近距離であるにも関わらず、顔はぼんやりとして認識出来ない
怪訝な表情でその者を見ていると、頭上に“ユヅキ”、それから本人確認OKと表示されているのに気が付いた。
(は…!?嘘だろ)
それでも思わずピーンと背筋が伸びてしまった。ユヅキ様は、オレの主人である方のお名前だ。
この世界において急に物事が始まるのはいつものことだったりするものの、悪い事態に転がることはない
となると、もしかしてこれは少し前に配信でやっていた親愛度とやらに関連するものなのだろうと思い至る。
『…ダンナ?』
「会話出来るのかな、えーっと…… 元気…?あー…何かメモしとけば良かったな」
聞いておきながらお一人で何か呟いている。ユヅキ、と示されているその者の顔を認識出来たら良かったのにと少し残念に感じた。
それでも表情が全く読み取れないというわけではない、β版ともいっていたし欲深く生きてはいけないと己に言い聞かせる。
『元気です。ダンナはどうですか?』
「げ、元気…です……」
何ともいえぬ空気が広がったところで、あ!とダンナは思い出したかのような表情を見せた。
「6月21日、誕生日だよな!」
『へ…?そう…ですね?』
ダンナによって創られたオレが誕生した。ただそれだけの日である。あまりピンと来ず、首を傾げた。
「…触れる、んだよね」
触れる?と不思議に思いながらもそのダンナの動きを目で追っていると、手が肩にポンと乗った。
『…っ!?』
「おお…肩だけでもすげ…… 腕も…」
触るだけではなく、なぜか肩を揉まれている。流れるように腕も揉まれて困惑する。ダンナに触れられる感触がする。
「今は1人しか選べないっていうからさ…迷ったんだけど、誕生日が近いからレイルにしたんだ」
本当は2人も選びたかったんだけどさ、とダンナは困ったようにそう言った。
これは運が味方したといっていいのだろうか。初めに創られた愛着のあるエースよりも、最近創られたばかりで新鮮さのあるリヒトよりも
「なーにをにやにやしてんだ」
つんつんと頬を突かれる。時々ぐりっとえぐられるように入って若干痛いが、嬉しさの方が気持ちとしては大きい
そうこうしているうちに、あと30秒です。とアナウンスが入る。
『もう終わりですか?』
不満そうに言うと、ダンナは照れくさそうに笑った。
「あっという間だな~ またよろしく、ありがとな」
『……1ついいですか?』
ダンナの顔色を窺いながらオレは軽く拳を作る。β版だし、下手したらこのチャンスがもうないかもしれない
ダンナの存在を確かめるように手を、そして手首から腕を伝うようにして触れる。そのままゆっくり引き寄せた。
「おおっ…?」
実際に感じるダンナの体温を抱き締め、少し腕の力を込めた。彼は驚いていたが、背中に手を回してポンポンと叩いてくれた。
「お~ こんな事もするのか、びっくりした」
『勝手な事をしてすみません』
そう言うとダンナは照れくさそうだった。それがこの空間で見た最後の表情だった。
何度かまばたいて、トリスピに帰ってきたのだと実感したのはその30秒後だった。
(……これを体感したのは、3人の中でオレが…初めてになる…)
それに誕生日だからオレを選んだって、すげえ…嬉しすぎねえ?
あの空間はとても不思議で、ダンナの喜ぶ事をしてあげたくなる気持ちが常に溢れ出るようだった。
(うお~…!いきなり抱き締めるなんてっ…恥ずかしい事しちまった!顔が、熱い……!)
浮かれすぎないようにしなければと、そう思っていても表情が緩んでしまう
自慢くらいなら2人にしてもいいよな?とやや興奮しながらもオレは家へと戻った。
あとからオレの部屋にギフトが届いていたのは、また別のお話。
--------------------
ゲームイベントの企業ブースにて、キャラクターとより深いコミュニケーションがとれるシステムをマイルーム(仮)としてβ版を追加予定
恋愛ゲームに近しいことが出来るため、プレイヤーによってはかなり評価の分かれる機能となっている。
ユヅキは運営からも認知されており、熟練者というのもあって特別に招待された1人
本編よりも前のお話になります。
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『親愛度って何?好感度とはどう違うの?』
『そんなことやってる暇あるならエリア出せ』
『つまんな』
『これいいと思います!楽しみです!』
そんなプレイヤーの声があふれる中、レイルは配信情報を更新し続けていた。
「……魔術を使ってリロードし続けるな…」
「悪ィ……とか言って、リヒトも気になってるじゃねえか」
否定はしない……とオレが更新し続けている画面をじっと見続けている。
「β版…実装するかどうか、怪しそうだ……」
「してくれたらいいな程度だろ」
淡い期待を抱いているリヒトだったが、きっとオレと同じくらい楽しみにしているのだろう
そんなある日のことだった。鍛錬後の休憩でうとうとしていたところ、突然オレは別空間へ飛ばされた。
「なっ…何だ?」
瞬時に周辺を調べてみるが何も出て来ない。全く情報がない、なんてことはトリスピでは有り得ない。となればここは――――。
『は…?まい、るーむ……?…“あなたを呼び出しています?”…何だ、どうなって…… うわっ!?』
眩しくて慄いている間に、目の前には黒い人型のシルエットが目の前に立っていた。
「…すご…… レイルじゃん…」
声からして男性のようだ。こんな近距離であるにも関わらず、顔はぼんやりとして認識出来ない
怪訝な表情でその者を見ていると、頭上に“ユヅキ”、それから本人確認OKと表示されているのに気が付いた。
(は…!?嘘だろ)
それでも思わずピーンと背筋が伸びてしまった。ユヅキ様は、オレの主人である方のお名前だ。
この世界において急に物事が始まるのはいつものことだったりするものの、悪い事態に転がることはない
となると、もしかしてこれは少し前に配信でやっていた親愛度とやらに関連するものなのだろうと思い至る。
『…ダンナ?』
「会話出来るのかな、えーっと…… 元気…?あー…何かメモしとけば良かったな」
聞いておきながらお一人で何か呟いている。ユヅキ、と示されているその者の顔を認識出来たら良かったのにと少し残念に感じた。
それでも表情が全く読み取れないというわけではない、β版ともいっていたし欲深く生きてはいけないと己に言い聞かせる。
『元気です。ダンナはどうですか?』
「げ、元気…です……」
何ともいえぬ空気が広がったところで、あ!とダンナは思い出したかのような表情を見せた。
「6月21日、誕生日だよな!」
『へ…?そう…ですね?』
ダンナによって創られたオレが誕生した。ただそれだけの日である。あまりピンと来ず、首を傾げた。
「…触れる、んだよね」
触れる?と不思議に思いながらもそのダンナの動きを目で追っていると、手が肩にポンと乗った。
『…っ!?』
「おお…肩だけでもすげ…… 腕も…」
触るだけではなく、なぜか肩を揉まれている。流れるように腕も揉まれて困惑する。ダンナに触れられる感触がする。
「今は1人しか選べないっていうからさ…迷ったんだけど、誕生日が近いからレイルにしたんだ」
本当は2人も選びたかったんだけどさ、とダンナは困ったようにそう言った。
これは運が味方したといっていいのだろうか。初めに創られた愛着のあるエースよりも、最近創られたばかりで新鮮さのあるリヒトよりも
「なーにをにやにやしてんだ」
つんつんと頬を突かれる。時々ぐりっとえぐられるように入って若干痛いが、嬉しさの方が気持ちとしては大きい
そうこうしているうちに、あと30秒です。とアナウンスが入る。
『もう終わりですか?』
不満そうに言うと、ダンナは照れくさそうに笑った。
「あっという間だな~ またよろしく、ありがとな」
『……1ついいですか?』
ダンナの顔色を窺いながらオレは軽く拳を作る。β版だし、下手したらこのチャンスがもうないかもしれない
ダンナの存在を確かめるように手を、そして手首から腕を伝うようにして触れる。そのままゆっくり引き寄せた。
「おおっ…?」
実際に感じるダンナの体温を抱き締め、少し腕の力を込めた。彼は驚いていたが、背中に手を回してポンポンと叩いてくれた。
「お~ こんな事もするのか、びっくりした」
『勝手な事をしてすみません』
そう言うとダンナは照れくさそうだった。それがこの空間で見た最後の表情だった。
何度かまばたいて、トリスピに帰ってきたのだと実感したのはその30秒後だった。
(……これを体感したのは、3人の中でオレが…初めてになる…)
それに誕生日だからオレを選んだって、すげえ…嬉しすぎねえ?
あの空間はとても不思議で、ダンナの喜ぶ事をしてあげたくなる気持ちが常に溢れ出るようだった。
(うお~…!いきなり抱き締めるなんてっ…恥ずかしい事しちまった!顔が、熱い……!)
浮かれすぎないようにしなければと、そう思っていても表情が緩んでしまう
自慢くらいなら2人にしてもいいよな?とやや興奮しながらもオレは家へと戻った。
あとからオレの部屋にギフトが届いていたのは、また別のお話。
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ゲームイベントの企業ブースにて、キャラクターとより深いコミュニケーションがとれるシステムをマイルーム(仮)としてβ版を追加予定
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