61 / 63
【番外編】
2月2日
しおりを挟む
エースの誕生日祝いとして書き下ろしました。
本編よりも前のお話になります。
--------------------
2月に入ると、トラインはバレンタインデーというもので溢れ返る。
マスターの世界では主に女性が意中の男性に贈るというのがどうやら主流のようだ
(ふむ、イベント自体は知っていたが…こちらからアクションを起こせないのが不満だな)
唸りながら投函されていたチラシを、余程険しい表情で見ていたのかレイルに笑われた。
「そんな小難しいイベントじゃないだろ?去年だってハート集めっていうのやったし」
「ああ、そういうことではなく…… 俺達がマスターや世界を認識してから、何か違う事も出来るのではないかと思ったんだ」
どういうことだ?と彼は不思議そうに首を傾げた。すると後ろから俺が持っていたチラシをすっと、リヒトに取られる。
「…ついこの間、アップデートがあった気がする……」
「あ、これかな?プレゼントって書いてあるぞ」
レイルが空中でメニューを開き、ニュース一覧のとある記事をタップした。
「プレゼント?ギフトとは何が違うんだ」
「ギフトはダンナから、プレゼントはオレ達からって感じみたいだな。
制限があるみたいで半年に1回だったり、高価な物は限定的にしか贈れないってさ」
レイルが要点だけ俺達に伝えると、リヒトは冗談じゃない…と呟いている。
「いつも特別な物を贈るべき…… 怠けているのか…?」
「そう言ってやるな。俺達から贈り物することすら出来なかったんだ、そのうち緩和されるかもしれないだろう?」
まだ納得いかない様子のリヒトだったが、俺の隣に座ってからもう一度チラシを見直していた。
「試しに俺が贈ってみよう。どの程度まで出来るのか2人も気になるだろう」
「オレ、エースのそういうところにいつも関心するよ」
率先して行うのが俺のすべきことだと思っているだけだ、と当たり前に返した。
プレゼントを贈る手続きの詳細を見てみることにした。まだ始まったばかりの機能で、やはり制限があるようだった。
(贈れる物は……金、素材…食材……)
この中でランダムに贈れるようだが、想像していたものよりもやや落胆してしまう内容だった。
最初はこんなものだろうと、強引に納得してからマスターにプレゼントする為に依頼を出した。
やることを済ませて自分の部屋へ向かうと、テーブルの上でギフトが跳ねていた。それはやや光を灯っているが、俺にはとても輝いて見えた。
慌ててそれを両手で受け取った途端にそわそわしてしまい、一度テーブルに置き直した。
(手汗が……)
このギフトはマスターからのものだ。それも1年に1回で、俺にとっては特別で大事な物
じんわりと湿る手の平を揉み込んで、再び手にしてからリボンをゆっくりと引っ張った。
開けてみるとわずかに甘い匂いがする。覗き込んでみると一口サイズのチョコレートが色とりどりに並んでいた。
早速開封して1つ食べてみた。アーモンドが入っていたが、チョコレートとの相性がよく食べ応えもあった。
(マスターにとって、俺は――――。)
頂いた箱をそっと閉じ、心がじんわりと温かくなった気がした。
結局アレコレ悩んだ後にチョコレート、という選択になってしまった。
エースの好みなんて分からないし、本当にこれでいいのだろうかと思っていた。
それでも2月が来るといつも思い出す。エースを初めてキャラメイクした時のことだ
こだわっていたら2月2日になっていた、なんていうのも懐かしい思い出になる。
そこからは彼を操作して没入出来る楽しさも嬉しさも、時々悔しさも味わった。
だから様々な味が楽しめるこれかなって。分からないなりもおいしそうだなと思うものを選んだ。
所詮ゲームかもしれない。でも、そんなの俺には関係ない
「……あ、えっ!?今一瞬ハート出た!?」
好感度を確認してみると、ぐんっと上がったようだった。
そのあとの様子を見ていると、いくつかチョコレートを食べてくれているみたいだった。
その度に滅多に見ることのないハートがいくつか見えて少し興奮してしまった。
『マスター、ありがとう。色々なチョコレートがあって迷うな。このホワイトチョコはおいしかったぞ』
いきなり耳元からそう聞こえ、思わずイスから落ちそうになった。
今までそこまでの長いボイスとかなかったのに!ちゃんとこっち見て言ってるし!なんだかとても照れる。
トリスピはそういうサプライズをしてくるから嬉しい、けど心臓に悪い
そうしているうちに画面上にあったプレゼントボックスが光り出した。不思議に思って開けば“エースからの贈り物です!”と表示された。
「あ、これ…この前お知らせにあったやつか。ん…お金?俺があげたタイミングと被っただけっぽいな」
きっとたまたまだった、それでもなんだか嬉しくなった。例え些細な事でも、ちょっとした事だとしても
そういうものの積み重ねで俺はもっとこのゲームが好きになった。次は何を贈ろうかなと、俺は口元を綻ばせた。
本編よりも前のお話になります。
--------------------
2月に入ると、トラインはバレンタインデーというもので溢れ返る。
マスターの世界では主に女性が意中の男性に贈るというのがどうやら主流のようだ
(ふむ、イベント自体は知っていたが…こちらからアクションを起こせないのが不満だな)
唸りながら投函されていたチラシを、余程険しい表情で見ていたのかレイルに笑われた。
「そんな小難しいイベントじゃないだろ?去年だってハート集めっていうのやったし」
「ああ、そういうことではなく…… 俺達がマスターや世界を認識してから、何か違う事も出来るのではないかと思ったんだ」
どういうことだ?と彼は不思議そうに首を傾げた。すると後ろから俺が持っていたチラシをすっと、リヒトに取られる。
「…ついこの間、アップデートがあった気がする……」
「あ、これかな?プレゼントって書いてあるぞ」
レイルが空中でメニューを開き、ニュース一覧のとある記事をタップした。
「プレゼント?ギフトとは何が違うんだ」
「ギフトはダンナから、プレゼントはオレ達からって感じみたいだな。
制限があるみたいで半年に1回だったり、高価な物は限定的にしか贈れないってさ」
レイルが要点だけ俺達に伝えると、リヒトは冗談じゃない…と呟いている。
「いつも特別な物を贈るべき…… 怠けているのか…?」
「そう言ってやるな。俺達から贈り物することすら出来なかったんだ、そのうち緩和されるかもしれないだろう?」
まだ納得いかない様子のリヒトだったが、俺の隣に座ってからもう一度チラシを見直していた。
「試しに俺が贈ってみよう。どの程度まで出来るのか2人も気になるだろう」
「オレ、エースのそういうところにいつも関心するよ」
率先して行うのが俺のすべきことだと思っているだけだ、と当たり前に返した。
プレゼントを贈る手続きの詳細を見てみることにした。まだ始まったばかりの機能で、やはり制限があるようだった。
(贈れる物は……金、素材…食材……)
この中でランダムに贈れるようだが、想像していたものよりもやや落胆してしまう内容だった。
最初はこんなものだろうと、強引に納得してからマスターにプレゼントする為に依頼を出した。
やることを済ませて自分の部屋へ向かうと、テーブルの上でギフトが跳ねていた。それはやや光を灯っているが、俺にはとても輝いて見えた。
慌ててそれを両手で受け取った途端にそわそわしてしまい、一度テーブルに置き直した。
(手汗が……)
このギフトはマスターからのものだ。それも1年に1回で、俺にとっては特別で大事な物
じんわりと湿る手の平を揉み込んで、再び手にしてからリボンをゆっくりと引っ張った。
開けてみるとわずかに甘い匂いがする。覗き込んでみると一口サイズのチョコレートが色とりどりに並んでいた。
早速開封して1つ食べてみた。アーモンドが入っていたが、チョコレートとの相性がよく食べ応えもあった。
(マスターにとって、俺は――――。)
頂いた箱をそっと閉じ、心がじんわりと温かくなった気がした。
結局アレコレ悩んだ後にチョコレート、という選択になってしまった。
エースの好みなんて分からないし、本当にこれでいいのだろうかと思っていた。
それでも2月が来るといつも思い出す。エースを初めてキャラメイクした時のことだ
こだわっていたら2月2日になっていた、なんていうのも懐かしい思い出になる。
そこからは彼を操作して没入出来る楽しさも嬉しさも、時々悔しさも味わった。
だから様々な味が楽しめるこれかなって。分からないなりもおいしそうだなと思うものを選んだ。
所詮ゲームかもしれない。でも、そんなの俺には関係ない
「……あ、えっ!?今一瞬ハート出た!?」
好感度を確認してみると、ぐんっと上がったようだった。
そのあとの様子を見ていると、いくつかチョコレートを食べてくれているみたいだった。
その度に滅多に見ることのないハートがいくつか見えて少し興奮してしまった。
『マスター、ありがとう。色々なチョコレートがあって迷うな。このホワイトチョコはおいしかったぞ』
いきなり耳元からそう聞こえ、思わずイスから落ちそうになった。
今までそこまでの長いボイスとかなかったのに!ちゃんとこっち見て言ってるし!なんだかとても照れる。
トリスピはそういうサプライズをしてくるから嬉しい、けど心臓に悪い
そうしているうちに画面上にあったプレゼントボックスが光り出した。不思議に思って開けば“エースからの贈り物です!”と表示された。
「あ、これ…この前お知らせにあったやつか。ん…お金?俺があげたタイミングと被っただけっぽいな」
きっとたまたまだった、それでもなんだか嬉しくなった。例え些細な事でも、ちょっとした事だとしても
そういうものの積み重ねで俺はもっとこのゲームが好きになった。次は何を贈ろうかなと、俺は口元を綻ばせた。
1
あなたにおすすめの小説
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
※第33話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
マリオネットが、糸を断つ時。
せんぷう
BL
異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。
オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。
第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。
そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。
『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』
金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。
『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!
許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』
そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。
王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。
『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』
『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』
『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』
しかし、オレは彼に拾われた。
どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。
気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!
しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?
スラム出身、第十一王子の守護魔導師。
これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。
※BL作品
恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。
.
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる