Δ 爪痕を残して

黒野すごろく

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それぞれの想い

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オレを選んだ、かと思えば気絶しているもう1人の首に向けて剣を振り下ろした。オレは瞬時に仲間を抱え、転がるようにして避けた。
(は…!?何、してるんだ…!?何なんだ…!)
その衝撃で仲間は目を覚ましたようで、驚いた表情のままオレを見上げていた。少しかすった頬の傷から血が垂れ、彼の頬を汚した。
抱えたままの彼の視線は謎の人物に移り、確認するようにもう一度オレを見てから体を起こした。
「退くぞ…… 何だかアイツ、様子がおかしい」
「…何が起きて―――」
奴はオレに目もくれず、それは彼を襲うだけに標的を定めたようだった。体勢を立て直した彼に向かって斬撃を繰り出す。
彼はそれをすべて受け流したものの、特に表情も変えず疲れた様子も見せないこの人物が不気味だった。
(まともじゃない、こんなの相手にしていたらこっちが持たないぞ)
2人して気絶していて状況が理解出来ていないのに、目が覚めたかと思えば特に深い理由もなくオレ達を襲撃し始めた。

「…何が目的だ」
『目的?……って…?』
彼が喋り掛けた隙を見てオレは奴に拘束する魔術を放ち、とにかくこの場から逃げるべきだと判断した。
様子からして幸い奴はオレに関心がなく、仲間の彼だけを執拗に狙っていた。
急いで森から抜け出してお互いに顔を見合わせた。すると不自然に霧のようなものが視界を遮り始めた。
「なっ……これは」
「マズい!早く―――」
離ればなれにならないよう彼の腕を握ったつもりだった。しかしそれは彼ではなく、奴の腕だった。
同時に目を見張った。奴の剣は彼の瞳を目掛け、突き刺す直前で止まっていた。たまたま奴の腕を掴むのが遅かったら――――。
それに気配も一切なくこの距離まで近付いて来ていて、理解が追いつかなかった。
(拘束したのにもう抜け出したのか!?そんな…すぐ解除出来るようなものじゃないのに)
驚いて固まっていると、掴んだ腕の上から優しく手を置かれた。
『お前はとても…… それなら、お前に』
「っ!?…エース!逃げろッ!!」
嫌な予感がして、彼を出来るだけ遠くに転移する魔術を放った。

思い出したくなかった記憶だったけど、少しずつはっきりしてきた。彼の名はエースだった。
彼を狙い続けたかと思えば、今度はオレを愛おしむように抱き締められた。
そこから先は記憶が呑み込まれるような、気が付けば奴に好き勝手される日々が続いた。
『ありがとう、じゃあまたしてあげるね』
「ぃ…やめろ……!ぐ…うぁ……ッ」
初めこそ性別の判断もつかなかったが、今は明確に男性の姿で、背も俺より少し高めだった。
(コイツ…… 本当に、何者…なんだ……)
ここまで変幻自在の存在など見たことも聞いたこともない。知らなかっただけということもあるかもしれないが
寂れた古くさい小屋の中で拘束され、オレの状況などお構いなしに犯された。この目的も未だに分からず、殺そうとする様子もない
だからこそ生き地獄だった。魔術は封印されてしまったかのように不発するし、逃げ出したくても出来なかった。
(…エース…… 逃げ切れていたらいいが…例えオレが消えても、エースなら)
そう思い出したところでもう1人の存在が浮かび上がった。オレは頭を回転させたが顔も名前も出てこない
確かに存在はするが、驚くほど思い出せなかった。長く旅をしてきた2人のうちの1人だというのに
(……この違和感は、何なんだ… 大事なことを、忘れてはいけないものを…)
ちょっと、と呼び掛ける声が聞こえてオレは奴を一瞥した。そして唖然としてしまった。
『まだだけど…君のおかげで分身が生み出せるようになったんだ、だからもっとよろしくね』
本体を入れて3人の奴がオレを見つめていた。分身の2人は初めに会った時と同様に無表情ではあるものの、動けないオレに優しく触れ始めた。
「う…… や、め…!く、ひっ…… んッ」
まるでくすぐるかのような触り方にオレは身を捩る。本体は既に勃起していて、それをオレの臍で身勝手に擦り始める。
(人の身体で…シコんな……!)
両側から2人の分身はただただくすぐってきていて、しかし表情は変わらずオレを見るだけ
『好き…?なの?いいね…いいよね……』


だから、ダンナと出会えた時は嬉しかった。姿はアイツのせいで犬になってたけど
オレは奴と接触した事でこの世界が蝕まれている事実を知った。アイツは様々なものを取り込んで自分のものにしているのだ
(早くこの状況をどうにかしないと…トラインどころか、ダンナを元の世界へ帰せなくなる)
そう考えられるのに、今じゃこんな有様だ。欲情してしまって、散々弄ばれた身体はなかなか熱を引かない
馬鹿みたいにダンナを求めて、情けなく思っているからか勝手に涙が出る。
もっと、まともな形でダンナと出会いたかった。こんなの格好悪すぎる。
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