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それぞれの想い
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気持ちは焦ってしまうけれど、今出来ることなどない。ベッドへ座ってから腰に装備しているベルトを外し、護身用の短剣を近くに置いた。
そして少し衣服を緩めてからごろりと横になった。ドクン、ドクンと鮮明な脈の音が頭から響き渡る。
それが何なのかも、どこからその音がするのか分からない。けれど、何度か深呼吸をしてみるとそれは聞こえなくなった。
「……ダンナ…?」
心配そうに覗き込んでくるレイルに、俺は少し慌てて体を起こした。
「ごめん、何でもないと思う…… あれ、違う…えっと、何言ってるんだろうな…」
「休みましょう。起きる頃にはベストレルに着きます」
うん、そうする。先に寝るよ、と伝えてもぞりと布団へ潜り込んだ。慣れることのないこの旅で、俺はすぐに眠ってしまった。
毎日お祭り騒ぎをしているような、活気のある場所へと辿り着いた。
(ここがベストレルか、鬱陶しいくらいに人が多い)
見聞きしたことはあるが、実際に訪れるのは何気に初めてだったりする。露店もあれば、大道芸をやっていたりと好き放題出来る場所のようだ。
ちら、と見掛けた掲示板を見れば今は団体戦というのを連日やっているらしい
「ねえ、これやろうよ!」
ぐいっと前を歩くエースの腕を組んで引き戻した。後ろに続いていたリヒトの表情が露骨に曇る。
「話題になれれば何か情報が得られそうじゃない?」
「ふむ、確かにこれをツテにして来たところはあるが……」
エースは考え込むようにして腕を組んだ。詳しく見てみれば、3人までなら参加可能のようだった。
エントリーしてみるね、と表示された案内に従って手続きを始めた。すると、突如として3つ分の紅い輪が目の前に現れた。
それは、とエースが説明する前にズボッとリヒトは手首まで突っ込んだ。
「……参加表明だ」
その輪は手首を認識し、数秒後に“ENTRY”と表示されたのちにリヒトは手首を引いた。
ちらりとエースから視線を感じたものの、彼は一旦息を吐いてから同じように手首を通して認証した。
「わ、カッコいいね。手首に紅い紋章が纏うんだな」
「参加者であることの証明になる…」
続くように俺も手を入れてみれば、ゆらりと炎のように紋章がうっすら発光した。かと思えば何事もなかったかのように消えたりしている。
「マスター、窮屈かもしれないが俺達からは離れないように」
「分かってるって。それよりも、やっぱりこういう場は気分上がるよな!」
屈託のない笑みをリヒトにして見せれば、彼はやや動揺したように見えた。私の事が好きなクセに、まだそんな反応なんだ
(面白いな…… 気分も最高、この雑踏を――――)
わくわくする気持ちが溢れ出す前に俺は2人の間に割り込み両腕を組んだ。
「でもその前に休んでいい?船旅も悪くはなかったけど、団体戦が始まる前にきちんと準備しとかなくちゃでしょ?」
参加者に限り利用出来る宿があるようで、そちらを利用することになった。
「買い出し行かなきゃだよね、けど…何が不足してるんだっけなー?」
「俺が行く…ボスを頼む」
持っていたアイテム袋をすっと取られ、彼の視線はエースと絡んだ。その流れでエースと目が合い微笑まれた。
(避けてる訳でもないけど、私との距離感に迷ってるみたい…… 面白いなぁ)
私はもう、俺なのに。俺を認めちゃえば、あとはそのままなのに。
「もしかしてしばらく帰ってこない?…心配だな」
「マスターを大事にしたいからこそだ。俺も全てが分かるわけではないが、これだけは絶対だ」
こんな些細な事でも火が付く、燻るそれを抑えるように俺は腹部を衣服ごと掴んだ。
ずっとはっきりしない気持ちが、底なし沼のように現れて呑み込んでくる。
(……これだけじゃダメだったのかな、もっと…全てを俺にすれば)
影を感じて顔を上げると、心配そうにこちらを見つめるエースが立っていた。
「具合が良くないですか?」
「うん…そうかもしれない、だから手伝ってほしいな」
エースに気遣われた。おそらく、ボスもそれに勘付いただろう
それでも抜け出したかった。違う、俺は逃げたのかもしれない
俺はボスのように人から産まれ、人に育てられた訳では無い
それはこの世界に生きる人類全てがそうである。だから最終的にはデータで判断するのだ
その、はずだった。知り得ない予感が俺にずっと警告している。
(ずっと、何か…言い表せない違和感がある…… 信じられないなんて、俺はそんな立場でもないのに)
気の所為だろう、きっと俺が間違えているんだろう。何度も繰り返した思考が自らを蝕んでいた。
強く握っていたアイテム袋をしまい込み、ベストレルの中でも落ち着きを感じられるカフェへと向かった。
そして少し衣服を緩めてからごろりと横になった。ドクン、ドクンと鮮明な脈の音が頭から響き渡る。
それが何なのかも、どこからその音がするのか分からない。けれど、何度か深呼吸をしてみるとそれは聞こえなくなった。
「……ダンナ…?」
心配そうに覗き込んでくるレイルに、俺は少し慌てて体を起こした。
「ごめん、何でもないと思う…… あれ、違う…えっと、何言ってるんだろうな…」
「休みましょう。起きる頃にはベストレルに着きます」
うん、そうする。先に寝るよ、と伝えてもぞりと布団へ潜り込んだ。慣れることのないこの旅で、俺はすぐに眠ってしまった。
毎日お祭り騒ぎをしているような、活気のある場所へと辿り着いた。
(ここがベストレルか、鬱陶しいくらいに人が多い)
見聞きしたことはあるが、実際に訪れるのは何気に初めてだったりする。露店もあれば、大道芸をやっていたりと好き放題出来る場所のようだ。
ちら、と見掛けた掲示板を見れば今は団体戦というのを連日やっているらしい
「ねえ、これやろうよ!」
ぐいっと前を歩くエースの腕を組んで引き戻した。後ろに続いていたリヒトの表情が露骨に曇る。
「話題になれれば何か情報が得られそうじゃない?」
「ふむ、確かにこれをツテにして来たところはあるが……」
エースは考え込むようにして腕を組んだ。詳しく見てみれば、3人までなら参加可能のようだった。
エントリーしてみるね、と表示された案内に従って手続きを始めた。すると、突如として3つ分の紅い輪が目の前に現れた。
それは、とエースが説明する前にズボッとリヒトは手首まで突っ込んだ。
「……参加表明だ」
その輪は手首を認識し、数秒後に“ENTRY”と表示されたのちにリヒトは手首を引いた。
ちらりとエースから視線を感じたものの、彼は一旦息を吐いてから同じように手首を通して認証した。
「わ、カッコいいね。手首に紅い紋章が纏うんだな」
「参加者であることの証明になる…」
続くように俺も手を入れてみれば、ゆらりと炎のように紋章がうっすら発光した。かと思えば何事もなかったかのように消えたりしている。
「マスター、窮屈かもしれないが俺達からは離れないように」
「分かってるって。それよりも、やっぱりこういう場は気分上がるよな!」
屈託のない笑みをリヒトにして見せれば、彼はやや動揺したように見えた。私の事が好きなクセに、まだそんな反応なんだ
(面白いな…… 気分も最高、この雑踏を――――)
わくわくする気持ちが溢れ出す前に俺は2人の間に割り込み両腕を組んだ。
「でもその前に休んでいい?船旅も悪くはなかったけど、団体戦が始まる前にきちんと準備しとかなくちゃでしょ?」
参加者に限り利用出来る宿があるようで、そちらを利用することになった。
「買い出し行かなきゃだよね、けど…何が不足してるんだっけなー?」
「俺が行く…ボスを頼む」
持っていたアイテム袋をすっと取られ、彼の視線はエースと絡んだ。その流れでエースと目が合い微笑まれた。
(避けてる訳でもないけど、私との距離感に迷ってるみたい…… 面白いなぁ)
私はもう、俺なのに。俺を認めちゃえば、あとはそのままなのに。
「もしかしてしばらく帰ってこない?…心配だな」
「マスターを大事にしたいからこそだ。俺も全てが分かるわけではないが、これだけは絶対だ」
こんな些細な事でも火が付く、燻るそれを抑えるように俺は腹部を衣服ごと掴んだ。
ずっとはっきりしない気持ちが、底なし沼のように現れて呑み込んでくる。
(……これだけじゃダメだったのかな、もっと…全てを俺にすれば)
影を感じて顔を上げると、心配そうにこちらを見つめるエースが立っていた。
「具合が良くないですか?」
「うん…そうかもしれない、だから手伝ってほしいな」
エースに気遣われた。おそらく、ボスもそれに勘付いただろう
それでも抜け出したかった。違う、俺は逃げたのかもしれない
俺はボスのように人から産まれ、人に育てられた訳では無い
それはこの世界に生きる人類全てがそうである。だから最終的にはデータで判断するのだ
その、はずだった。知り得ない予感が俺にずっと警告している。
(ずっと、何か…言い表せない違和感がある…… 信じられないなんて、俺はそんな立場でもないのに)
気の所為だろう、きっと俺が間違えているんだろう。何度も繰り返した思考が自らを蝕んでいた。
強く握っていたアイテム袋をしまい込み、ベストレルの中でも落ち着きを感じられるカフェへと向かった。
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