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第2章 将軍絶命篇 1568年4月〜
第二十八話 天性の才能人
「やぁ、清重」
俺に向けて、微笑みを浮かべる男が一人
俺は目の前の存在に、目を細める
この男は今更、何をしに来たというのか
「花は好きか?」
恒興の問いに、俺は答えなかった。
「儂は好きじゃ。為す術無く散りゆく様、誠に儚うござる。其方もそうは思わぬか?」
恒興は歩を進め、木の幹に触れる
「然し、幾ら散りとて、一年周ればまた新たな花を咲かせる。
見よ、形は強かで、しっかりとした幹じゃ」
「何の用ですか、ただ声を掛けに来た訳じゃ無いですよね」
恒興は不敵な笑みを浮かべながら、俺を見る。
「この桜は、其方を嗤っておるぞ」
「……どういう意味ですか」
「そのままの意味じゃ」
この時、遠藤は気付く
俺の手が、ずっと震えていたことを
「まぁ、先の戦で、少しは強くなって貰わねばな」
そう言って俺の横を通り過ぎる
「なんだあの人……」
遠藤の言葉を横に、俺は振り返る。
遠ざかる恒興の背中を見て、俺は唾をのんだ。
風が再び、桃色の花を散らせる
未だに手は震え、喉はカラカラ
心臓が強く脈を打つ
これで分かった
俺は、あの人が苦手なんだ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
数刻前
「何故拙者に頼むのですか?」
書を読む秀吉は、目の前の男にそう訊ねた。
其の日、突然屋敷にやって来た男を、秀吉は招き入れる。
言わずもがな、その男こそ稲葉である。
彼がこの状況で先ず当てにしたのは、秀吉だった。
そこで秀吉は、彼の提案を耳にするのだった。
「儂はあやつの友であった。故に分かる。
あの者は、一筋縄ではいかぬ。易々と説ける男ではない。しかし悩んでおった矢先、あの時我々に説いた其方のことが、頭に浮かんだのじゃ」
稲葉は秀吉に、自分が近江に行く際に付いてきて欲しいと言った。そして、織田家に仕える旨を、重治に説いてほしいという。
無茶を申すなと、秀吉は呆れた様に頭を掻く。
「確かに、重治殿が天性の戦上手だというのは有名な話にござる。しかし、そもそも拙者は其の者に会うたことがありませぬ。どう説けば良いと申しまするか?」
「織田に志願してもらう為じゃ。無論、其方だけに任せるわけではない。
極力儂が話す様にはする」
当然だと、秀吉は書を閉じる。
(殿がその男を欲しいと申すならば、断る理由も無い)
面倒は極力増やしたくないが、
こればかりは仕方ないだろう。
「……良いでしょう。拙者も行きましょう」
「か、かたじけない!」
秀吉は息を吐く。
こうして稲葉が此処に来たのも
恐らく自分の見込んでの事だろうと、己を納得させた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
秀吉の屋敷に戻った俺達は、下駄を脱ぐ。
(……ん?)
下駄が一足分多い。
来客が来ているのかと思いながら居間に向かうと、其処に居たのは二人の男。
秀吉は俺達の存在に気付くと、その場に座るよう催促する。
「清重殿、遠藤殿。美濃で会うて以来じゃな」
俺達は稲葉に向けて一礼する。稲葉は二人に笑みを浮かべた。
「清重、遠藤、其方らは此処に残れ」
「え?」
そう言って、秀吉は稲葉を見た。
「長政殿の許に向かう」
その目は、本気である。
意味が分からずにいた俺達は、秀吉の様子に呆然としていた。
「殿、これより近江に参ります」
明くる日の朝、稲葉達は信長に謁見する。
信長はその言葉を聞くと、にやりと笑みを浮かべた。
「頼りにしておるぞ。ぬしら」
信長(かれ)の発する言葉に、二人は凍り付く。
その言葉は一見、決まり文句のようにも聞こえるが
裏を返せば、〈失敗する訳が無い〉という意味合いも含まれている。
しかも、口にするのは信長である。
失敗すれば、どうなるか分かったものではない。
あの秀吉ですら、固まってしまう程だ。
やはり、恐ろしい御方(おとこ)だ。
義龍、龍興には無かった恐ろしさを、稲葉は改めて実感するのだった。
「重治殿を味方に……成程、良い考えだな」
赤坂は腕を組み、考える素振りを見せる。
その前で俺は、名の知れぬ不安を抱えていた。
何だろう、この胸騒ぎは
俺は胸をぎゅっと押さえる
心の何処かに不安を抱えているのは、きっと俺だけではない。
きっと、秀吉自身も抱えてる。
俺の様子を感じ取った赤坂は、俺の頭に手を置く。
「……!」
「藤吉郎は、口だけは一丁前じゃ。
なに、案ずる必要はない」
そう言って頭をくしゃくしゃと撫でた。
其の時、俺は勘付く。
この不安の正体が何なのか。
秀吉は、大きな賭けに、出る気なのかもしれない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
明くる日、秀吉たち一行は北近江に辿り着いた。
第一印象は、畑が充実していることである。
見る限り、武士は勿論、商人や百姓の顔色も良く見える。
「良い所じゃな」
秀吉の言葉に、稲葉は頷く。
(民は皆、食事に困っていないのだろうな……)
主君の長政には、それ程の器量があるのだろうか
城番に刀を預け、二人は城に入る。
其処で出迎えていたのは、一人の男。
「其方らが稲葉殿と木下殿か。よく参られた、歓迎しよう」
其の男こそ、浅井家当主、浅井長政。
まさか殿様直々に出迎えてくれるとは。
流石の二人もこれには驚いていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
浅井長政は、家老や郎党に思いやりのあることで有名な男。
民のことも普段から必死に考えているのだろうと、二人は思った。
「此方は、我が殿からの貢物(みつぎもの)にございまする」
そう言って差し出したのは、大量の甘柿。
「ほぉ、甘柿とは作るのが難しいと聞くが……」
長政は其れを嬉しそうに受け取る。
「お二人とも、よくいらっしゃいましたね」
「お市様、お元気そうで何よりです」
其処にやって来たのは、以前信長が浅井家に嫁がせた、お市の方。
長政はお市がやって来たことに気付くと、笑みを浮かべる。
見る限り、長政と上手くやっているようだ。
「そういえば、其方は龍興殿の家臣ではなかったか?」
「は、先の戦で、信長殿が私を引き入れて下さった次第にございます」
「成程……織田の功績、儂の耳にも届いておるぞ。
義龍殿の頃と比べ、幾ら斎藤家が力が劣っていたとしても、あの城を落とすのは至難の業。
其方の殿、いや、義兄上(あにうえ)はやはり、凄まじい御方なのだな」
皆が笑顔を浮かべている中、唯一人、稲葉だけが無反応だったことに、秀吉は気付いていた。
「直経(なおつね)、その者らを重治殿の許へ連れて行きなさい」
「は、」
威勢の良い返事と共に、立ち上がる一人の男。
名を、遠藤直経(えんどうなおつね)という。
直経は、浅井家の重鎮である。
知勇兼備として知られ、長政からも手厚く徴用されているという。
「此処じゃ」
直経によって案内されたのは、城下の端にある、古い屋敷。
(……こんな場所に居るのか?)
「幾年前、重治殿は我が殿を訪ねてきたのだ。
我等も重治殿の知力は知っておった故、ぼろ臭い屋敷では勿体無いと、良い屋敷を勧めたのだ。
しかし、重治殿は〈此処で良い〉と言って譲らなかったのでな。
此処に住ませておるのだ」
「やはり、変わらぬな……」
直経の説明に稲葉は呟き、屋敷の扉を開ける。
その瞬間、白い煙が目の前に現れる。
「うっ」
二人は思わず、手で鼻と口を覆う。
(思ったよりも酷いな……)
二人はゆっくりと玄関を上がる。
埃が凄く、床も腐っている。
人が居る気配もない。
秀吉はゆっくりと寝室の戸を開ける。
其処に広がった光景に、彼は目を丸くした。
そこには、一人の男が背を向けながら座っている。
(……あれか?)
其の男は二人の気配に気づいたのか、ゆっくりと振り向く。
男は顎まで髭を生やし、破れた着物を着ている。
「間違いない……重治殿じゃ……」
稲葉はそう呟く。
天下の戦上手の面影は、もはや何処にもない。
しかし、何十年も、傍にいたからこそわかる。
この男は紛れもなく、竹中重治その人である。
男は二人を見るや否や、ふと笑顔を浮かべた。
「久方振りじゃな、一徹殿」
その男、名を竹中重治は、後(のち)の世を生きる人々に、こう呼ばれることになる。
軍才神の如し
稀代の戦上手
天下の名軍師、〈竹中半兵衛(たけなかはんべえ)〉と。
続
俺に向けて、微笑みを浮かべる男が一人
俺は目の前の存在に、目を細める
この男は今更、何をしに来たというのか
「花は好きか?」
恒興の問いに、俺は答えなかった。
「儂は好きじゃ。為す術無く散りゆく様、誠に儚うござる。其方もそうは思わぬか?」
恒興は歩を進め、木の幹に触れる
「然し、幾ら散りとて、一年周ればまた新たな花を咲かせる。
見よ、形は強かで、しっかりとした幹じゃ」
「何の用ですか、ただ声を掛けに来た訳じゃ無いですよね」
恒興は不敵な笑みを浮かべながら、俺を見る。
「この桜は、其方を嗤っておるぞ」
「……どういう意味ですか」
「そのままの意味じゃ」
この時、遠藤は気付く
俺の手が、ずっと震えていたことを
「まぁ、先の戦で、少しは強くなって貰わねばな」
そう言って俺の横を通り過ぎる
「なんだあの人……」
遠藤の言葉を横に、俺は振り返る。
遠ざかる恒興の背中を見て、俺は唾をのんだ。
風が再び、桃色の花を散らせる
未だに手は震え、喉はカラカラ
心臓が強く脈を打つ
これで分かった
俺は、あの人が苦手なんだ
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数刻前
「何故拙者に頼むのですか?」
書を読む秀吉は、目の前の男にそう訊ねた。
其の日、突然屋敷にやって来た男を、秀吉は招き入れる。
言わずもがな、その男こそ稲葉である。
彼がこの状況で先ず当てにしたのは、秀吉だった。
そこで秀吉は、彼の提案を耳にするのだった。
「儂はあやつの友であった。故に分かる。
あの者は、一筋縄ではいかぬ。易々と説ける男ではない。しかし悩んでおった矢先、あの時我々に説いた其方のことが、頭に浮かんだのじゃ」
稲葉は秀吉に、自分が近江に行く際に付いてきて欲しいと言った。そして、織田家に仕える旨を、重治に説いてほしいという。
無茶を申すなと、秀吉は呆れた様に頭を掻く。
「確かに、重治殿が天性の戦上手だというのは有名な話にござる。しかし、そもそも拙者は其の者に会うたことがありませぬ。どう説けば良いと申しまするか?」
「織田に志願してもらう為じゃ。無論、其方だけに任せるわけではない。
極力儂が話す様にはする」
当然だと、秀吉は書を閉じる。
(殿がその男を欲しいと申すならば、断る理由も無い)
面倒は極力増やしたくないが、
こればかりは仕方ないだろう。
「……良いでしょう。拙者も行きましょう」
「か、かたじけない!」
秀吉は息を吐く。
こうして稲葉が此処に来たのも
恐らく自分の見込んでの事だろうと、己を納得させた。
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秀吉の屋敷に戻った俺達は、下駄を脱ぐ。
(……ん?)
下駄が一足分多い。
来客が来ているのかと思いながら居間に向かうと、其処に居たのは二人の男。
秀吉は俺達の存在に気付くと、その場に座るよう催促する。
「清重殿、遠藤殿。美濃で会うて以来じゃな」
俺達は稲葉に向けて一礼する。稲葉は二人に笑みを浮かべた。
「清重、遠藤、其方らは此処に残れ」
「え?」
そう言って、秀吉は稲葉を見た。
「長政殿の許に向かう」
その目は、本気である。
意味が分からずにいた俺達は、秀吉の様子に呆然としていた。
「殿、これより近江に参ります」
明くる日の朝、稲葉達は信長に謁見する。
信長はその言葉を聞くと、にやりと笑みを浮かべた。
「頼りにしておるぞ。ぬしら」
信長(かれ)の発する言葉に、二人は凍り付く。
その言葉は一見、決まり文句のようにも聞こえるが
裏を返せば、〈失敗する訳が無い〉という意味合いも含まれている。
しかも、口にするのは信長である。
失敗すれば、どうなるか分かったものではない。
あの秀吉ですら、固まってしまう程だ。
やはり、恐ろしい御方(おとこ)だ。
義龍、龍興には無かった恐ろしさを、稲葉は改めて実感するのだった。
「重治殿を味方に……成程、良い考えだな」
赤坂は腕を組み、考える素振りを見せる。
その前で俺は、名の知れぬ不安を抱えていた。
何だろう、この胸騒ぎは
俺は胸をぎゅっと押さえる
心の何処かに不安を抱えているのは、きっと俺だけではない。
きっと、秀吉自身も抱えてる。
俺の様子を感じ取った赤坂は、俺の頭に手を置く。
「……!」
「藤吉郎は、口だけは一丁前じゃ。
なに、案ずる必要はない」
そう言って頭をくしゃくしゃと撫でた。
其の時、俺は勘付く。
この不安の正体が何なのか。
秀吉は、大きな賭けに、出る気なのかもしれない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
明くる日、秀吉たち一行は北近江に辿り着いた。
第一印象は、畑が充実していることである。
見る限り、武士は勿論、商人や百姓の顔色も良く見える。
「良い所じゃな」
秀吉の言葉に、稲葉は頷く。
(民は皆、食事に困っていないのだろうな……)
主君の長政には、それ程の器量があるのだろうか
城番に刀を預け、二人は城に入る。
其処で出迎えていたのは、一人の男。
「其方らが稲葉殿と木下殿か。よく参られた、歓迎しよう」
其の男こそ、浅井家当主、浅井長政。
まさか殿様直々に出迎えてくれるとは。
流石の二人もこれには驚いていた。
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浅井長政は、家老や郎党に思いやりのあることで有名な男。
民のことも普段から必死に考えているのだろうと、二人は思った。
「此方は、我が殿からの貢物(みつぎもの)にございまする」
そう言って差し出したのは、大量の甘柿。
「ほぉ、甘柿とは作るのが難しいと聞くが……」
長政は其れを嬉しそうに受け取る。
「お二人とも、よくいらっしゃいましたね」
「お市様、お元気そうで何よりです」
其処にやって来たのは、以前信長が浅井家に嫁がせた、お市の方。
長政はお市がやって来たことに気付くと、笑みを浮かべる。
見る限り、長政と上手くやっているようだ。
「そういえば、其方は龍興殿の家臣ではなかったか?」
「は、先の戦で、信長殿が私を引き入れて下さった次第にございます」
「成程……織田の功績、儂の耳にも届いておるぞ。
義龍殿の頃と比べ、幾ら斎藤家が力が劣っていたとしても、あの城を落とすのは至難の業。
其方の殿、いや、義兄上(あにうえ)はやはり、凄まじい御方なのだな」
皆が笑顔を浮かべている中、唯一人、稲葉だけが無反応だったことに、秀吉は気付いていた。
「直経(なおつね)、その者らを重治殿の許へ連れて行きなさい」
「は、」
威勢の良い返事と共に、立ち上がる一人の男。
名を、遠藤直経(えんどうなおつね)という。
直経は、浅井家の重鎮である。
知勇兼備として知られ、長政からも手厚く徴用されているという。
「此処じゃ」
直経によって案内されたのは、城下の端にある、古い屋敷。
(……こんな場所に居るのか?)
「幾年前、重治殿は我が殿を訪ねてきたのだ。
我等も重治殿の知力は知っておった故、ぼろ臭い屋敷では勿体無いと、良い屋敷を勧めたのだ。
しかし、重治殿は〈此処で良い〉と言って譲らなかったのでな。
此処に住ませておるのだ」
「やはり、変わらぬな……」
直経の説明に稲葉は呟き、屋敷の扉を開ける。
その瞬間、白い煙が目の前に現れる。
「うっ」
二人は思わず、手で鼻と口を覆う。
(思ったよりも酷いな……)
二人はゆっくりと玄関を上がる。
埃が凄く、床も腐っている。
人が居る気配もない。
秀吉はゆっくりと寝室の戸を開ける。
其処に広がった光景に、彼は目を丸くした。
そこには、一人の男が背を向けながら座っている。
(……あれか?)
其の男は二人の気配に気づいたのか、ゆっくりと振り向く。
男は顎まで髭を生やし、破れた着物を着ている。
「間違いない……重治殿じゃ……」
稲葉はそう呟く。
天下の戦上手の面影は、もはや何処にもない。
しかし、何十年も、傍にいたからこそわかる。
この男は紛れもなく、竹中重治その人である。
男は二人を見るや否や、ふと笑顔を浮かべた。
「久方振りじゃな、一徹殿」
その男、名を竹中重治は、後(のち)の世を生きる人々に、こう呼ばれることになる。
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