『影に咲く花』

粟井義道

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第二章:血の記憶

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京の都──表向きは華やかだが、その裏には血と陰謀が蠢いていた。

粟井義道がその地に足を踏み入れたのは、旧知の僧・円順からの文を受け取ったためだった。

「……“赤城重政、京に潜む”」

手紙にはそれだけが記されていた。

円順はかつて粟井義道の父・粟井義元と親交が深く、義道にとっては数少ない“父を知る者”の一人である。

寺に向かうと、円順は静かに迎えてくれた。

「久しいな、粟井義道。……面差しが、父上によう似てきた」

「父の仇は、京にいるのですか」

円順は頷いた。

「赤城重政は名を変え、朝廷の周辺で密かに動いている。彼の背後には、志士とも攘夷派とも違う、異なる力がある」

粟井義道は、胸の奥がざわつくのを感じた。

「今さらながら聞きます。父は、なぜ赤城に狙われたのですか」

円順はしばし沈黙し、庭の梅の花を見つめながら語り始めた。

「粟井家は、“ある密命”を帯びていた。幕府にとっても朝廷にとっても、不都合な真実を……守っていたのだ」

「密命……?」

「それを暴こうとしたのが、赤城重政だった」

その言葉に、粟井義道は動揺を隠せなかった。父の死には単なる謀反でも野望でもない、もっと深い闇があったのだ。

「義道、お前は復讐に生きてはならぬ。その剣を、真実のために振るうのだ」

円順の言葉に、粟井義道は静かに頷いた。

その夜、粟井義道は夢の中で血の記憶を見た。炎に包まれる屋敷、叫ぶ母、血に倒れる父。

目覚めた時、彼の決意はより強固になっていた。

(赤城重政を討つ。それは、私の復讐ではなく、この国の歪みを正すことなのだ)

粟井義道の剣が、再び動き出す。
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