Beyond the Soul ~魂の彼方へ~ ~第三話~ 呪われし二対の妖刀vs思い出のペンダント。

ぐれおねP

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子供の兄弟

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『…神具鳳龍(しんぐほうりゅう)…俺達を再び封印するため、こいつらを犠牲にするのか』

イフ(秦)の言葉に少し間をおいて老人は答える。

『…やむをえんよ…お前達兄弟をこのままにしてはおけん…その子らには悪いが多くの命を救うためじゃ』
『昔と何もかわらない…お前ら大人は勝手だ…その多くのために犠牲になる者のことはどうでもいいのかっ!!』

ずっと沈黙を保っていたジェネが口を開いた。激唱

『…鷹の言うとおりだ…大人が俺達にした仕打ちは忘れない…邪魔をするなら斬るっ!鷹行くぞ!!』
『ああっ』

ジェネ(鷹)は頷(うなづ)く。

チャッ、カチャッ

イフ(秦)とジェネ(鷹)は、ほぼ同時に鞘から刀を抜き素早く間を詰めると、老人に向かってイフ(秦)は上段の構えで振り下ろし、ジェネ(鷹)は足元を狙う。

カンッ、カツッ

老人はその同時攻撃を薙刀を上手く扱い防ぐと、薙刀を大きく払い間をとる。

『…な、なんとゆう太刀筋じゃ…まさに魔性の…なにっ?、くっ』

カカンッ

休む間もなく襲い来る兄弟の攻撃を何とかしのぐ。

カカンッ、カッカンキンッ

武術の達人同士の戦いは舞いのように見えるという。

武器を扱う能力は決して秦鷹の二人に劣っているわけではなかった。しかし歳の差か、やがて老人には疲れが見え始め、

逆にイフ・ジェネの若い体を乗っ取っている秦鷹の繰り出す攻撃は激しさ、速度を増す。

『ぬぉっ、なんて者達じゃ…ぐくっ、これ以上は受けきれん』
『…終わらせてもらうっ』

一度距離をとったイフ(秦)が畳を蹴って飛び上がる、勢いにのった一撃が老人に襲いかかる。

ガイィィィンッ

『ぐぐうっ』

老人は何とか薙刀で受け止めはしたが、あまりの威力に両腕が痺れる。

『はっ』

その隙を見逃さなかったジェネ(鷹)が居合いのように薙刀を下から跳ね上げる。

痺れてしまっている両手で薙刀を握っていられる筈もない。

神具鳳龍は老人の手から離れ宙に上がった後、畳に深々と突き刺さった。

『しまっ…』

ビュッ、ズバァ

『ぐおおっ』

プシャアァァッッ

老人の左上半身に激痛が走る。《間をとるべく後ろに飛びのく》という脳から指令を出す。

その短き合間に鷹のニ撃めによって、左の肩から先を切り落とされていたのだ。

そのか所から血が大量に噴き出し、年老いた老人の意識を奪ってゆく。

『…む…無念…かくなるうえは…』

老人は胸元に忍ばせていた短刀を取り出すと自分の喉笛を

ズブッ

一突きで貫いた。

バタンッ

前のめりに倒れる。

『…自害しただと?』
『……。』

秦と鷹の二人は、思いもよらない老人の最後を見届けることとなった。

『鷹いくぞ』
『…ああ』

そして二人は、刀を鞘に納めると社の出口へと向かう。

『うっ』

社の境内。長き間、暗闇の中に封じ込まれていたイフ(秦)は眩(まばゆ)い日の光にあてられ目を細める。

隣のジェネ(鷹)は右手で日を遮っている。

段差を降りてゆく二人。

少なからず、その途中で参拝者とすれ違った。

皆、決まって始めは、腰に帯びている刀に目がいくが、支配されているイフ・ジェネの愛らしい姿だ、常識から考えて本物だとは思わないのであろう、特に気にもせず素通りしてゆく。

秦、鷹とて修羅ではなかった。

仲良く神社に参拝きている親子や、他の者達を無慈悲に斬り捨てるような事はしない。

標的はあくまでも自分達を物のように扱い、用が済んだ後、命を奪った両親を含む大人達だ。

しかし、もうこの世にはいない。

自分達兄弟を封じ込めていた者の子孫を斬り、早くも復讐は終わってしまったのだ。

まだ、心が幼いまま成長しておらず、修羅にとらわれていない秦、鷹の二人は次に何を成すべきか答えを出す事ができず、

終始無言のまま段差を下る。

最後の段差を降りた二人の目前に見たことの無い景色が広がる。

子供の興味本位で辺りを見回した後、車が行き交う車道に足を踏み入れる。

キキィーッ!、ドンッ!!

鈍い音と共に先を歩いていたイフ(秦)の小さな体が車体にぶつかった衝撃で数メートルほど跳ね飛ばされ、アスファルトに転がる。

止まった車のドアが勢いよく開かれ、運転していた若い男が飛び出してくる。

跳ねたイフ(秦)の方に目をやり、泣きそうな顔で絶望に打ちひしがれている。

『…やっちまった…飛び出してくるんじゃねえ…よ』

ウゥ~ウゥ~ウウ~。

何かのサイレンがだんだんと近づいてくる。パトカー、まさにタイミングを見計らったかのようだ。

ガチャッ、ババン、バンッ

ドタタタタタッ

素早くドアを開け、五人の警官が駆け出してきた。

『ひぃッ!?』

運転手の男は、頭の中が真っ白になり、早くこの場から離れたい衝動にかられ車へと駆け出した。

バンッ

男は逃げるように車に乗り込むと、左右の安全を素早く確認。

キキーッ、キッ、ブウゥンッ

荒い運転でUターンし、走り去った。

しかし警官達は、首を傾げるだけで男を追おうとはしない。

それもその筈、神社にお参りにきた参拝者から、神主である老人の死体を発見したということで通報を受けたのだ。

付け加え、刀のような物を腰にぶら下げているだけで何の根拠も無い二人の女の子が怪しいという事も聞いていた。

…正直、今回はその通りなのだが

つまり、警官達が追っていたのは人を跳ねた運転手の男ではなく、イフ(秦)、ジェネ(鷹)の二人だったのだ。

『…質問したいことがある、署までご同行願おう』

ガシッ

警官の一人が亜依(鷹)の腕を強くつかむ。

『…まさかとは思うけど、その刀本物かい?…見せてもらうよ』

他の警官が、ジェネ(鷹)の腰元の刀に手を伸ばす。

ビュッ、ズバァッ

プシャアァァッ

赤い鮮血がほとぼしる。

『ぐわあぁぁぁぁっ!!』

刀を手に取り確認しようとした警官が悲痛の叫びをあげ、その場に蹲(うずくま)る。

『うぅぅ…ぐくう』

その警官の手首から先が切られ、アスファルトの上に転がっていた。赤いものが地面を広がる。

『なっ!?』
『…斬った』
『何てことだっ』
『うっ、うわあぁぁぁっ!!』

そんな光景を初めて目の当たりにし、若い新米警官が取り乱す。

震える腕で拳銃を構え、引き金に指をかける。

『馬鹿っ、撃つなっ!!』
『やめるんだっ!!』
『落ち着けっ!!』

それに気付いた他の警官達が注意する。

バンッ、ババンッ

何発かの銃声。

『ああっ!!』

キンッ、キキンッ

警官達の視線が一人の人間に集まる、無事かを確認する為だ。

視線の先には仲間の手首を斬りおとした少女…イフ(秦)がいた。

先ほど車に跳ねられたが無事であった。ぶつかる瞬間とっさの判断で自ら後方に飛びのき衝撃を和らげたのだ。

だがさすがに無傷ではなく、所々に擦り傷や切り傷があった。

『兄ちゃんっ』

ジェネ(鷹)が声をかける。

『何だ今のは…とっさに刀で弾いたから良かったものの…危なかったぞ』

イフ(秦)の顔がみるみる怒りにかわる。

『くそっ鷹っ!、こいつらは俺を、平気でこの女を殺そうとした。俺達の敵だっ、斬り捨てるぞっ!!』
『わかったっ!!』

ジェネ(鷹)は、目にもとまらぬ速さで刀を鞘から抜くと目の前の警官に斬りかかった。

場面は変わり、道路を挟んだ神社の向かいにあるコンビ二。

ガガーッ

自動ドアが開き、コウの友達である、アリス・ヨルコが姿を現した。

アリスは、一つ上の先輩であるソラに頼まれたものを買いにきていたのだ。ヨルコはその付き合い。

神社の前にとめられているパトカーの赤いサイレンがアリスの目に止まる。

『なんだ?』

アリスは独り言のようにそう言うと、興味本位からその付近を見回した。

刀を持った二人の女の子とその向かいの警官達。違和感のある光景に疑問を抱く。

『…番組の撮影かなんかかな…ねぇ、ヨルコはどう思う?』

アリスはヨルコの方へ振り向き、声をかける。

『ううっ…さむい』

ヨルコは答えのかわりにそう呟き、急に震えだした自分の体を両腕で抱きしめている。

そして顔色もだんだん悪くなる。

『ちょっ、ヨルコ大丈夫なの!?』

ヨルコの異常に気付いたアリスは声を荒げる。

『アリス…さむい』

ヨルコはすがるような目でアリスをみた。

今日の天気は晴れ。半袖でも良いくらいに暖かかった。

そっと、震えているヨルコの手に触れ、体温を測るアリス。

『つめたっ』

握った手はかじかんだように冷たかった。

トンッ、トンッ

『アリス何してんだよっ』

肩をたたかれ、聞き覚えのある声に、アリスはヨルコの手を握ったまま振り返る。

アリスに買い物を頼んだソラが何故かそこにいた。

『ソラさんっ、ヨルコの様子がおかしいのっ!!』

鬼気迫る表情のアリス。ソラの顔から笑みが消え、ヨルコの側まで歩み寄る。

『いやぁ…いやぁ…恐い』


カラン、カラン…。

『ばかなっ!!』

イフ(秦)の刀が警官の手にもつ対銃弾用の盾を真っ二つに斬りさく。

『ふんっ、そんなもん、俺の刀の前では役に立たない…死ねよっ』
『ぐわああぁぁぁぁっ!!』

警官の断末魔の声が道路を挟んで向かいにいる、ソラ、アリス、ヨルコの耳まで届く。

『いやあっ…恐いよお、いやああぁぁぁぁっ!!』

ダダダダッ

ヨルコは叫び声をあげながらその場から駆け出した…何かに怯え、逃げるように。

『ヨルコっ!!』

アリスが名前を呼ぶだけで、あまりにも急な出来事にソラも対処することができなかった。

『…ヨルコ、どうしたんだよ…』
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