Beyond the Soul ~魂の彼方へ~ ~第三話~ 呪われし二対の妖刀vs思い出のペンダント。

ぐれおねP

文字の大きさ
3 / 10

アイドル

しおりを挟む

アリスは親友の異常ともとれる行動の意味がわからない自分にはがゆさを感じていた。


『ねぇ、アリス…ヨルコって確か、降霊師とかいう家系の生まれじゃなかった?』

降霊師とは…自分の身体にこの世を去った者達の霊を降ろし、会話や未練を訴えさせたりする者のこと。

『えっ?…はい…でもヨルコにはそんな力はないって…わたしにはよくわかんないんですけど、悲しい思いをさせなくてすむっておばさんよろこんでた』
『そうなんだ…でもさ、ヨルコの奴何かに怯えてたよな…その力に目覚め始めたのかもっ、それで霊を感じた~みたいな』

ソラがこんなことを言うには訳があった。自分も何者かの声に誘われ、気付いたらここにいたのだから。

『…そうなんですかね…ヨルコ大丈夫かな』

アリスは先ほどまでのヨルコの姿を思い出すと胸が詰まる思いだった。

『ところで、さっきから気になってるんだけどあれ何?』

ソラが神社の方を指差す。

『多分、ドラマの撮影かなんかだと思いますけど』
『へぇ…そうなんだ』

面白く無さそうなソラの口調。ソラの夢…それはアイドルになることだった。
しかし両親の反対で叶わなくなった。羨ましさから嫉妬心が生まれたのだ。

ソラはその中で見知った顔を見つけ目を丸くした。

『…って、イフジェネじゃんっ!!』

嫉妬心を大きな驚きが消し去る。

『えっ、ソラさんあの二人しっとるんですか?』
『うん、知ってる。なにやってんだよあいつら』

少し興奮気味のソラは神社の前に向かって歩み出した。アリスもその後をついてゆく。

銃を構えた警官達を前にして、イフ(秦)・ジェネ(鷹)の二人もそれに気付き、血のりのついた刀を手に持ったままソラの方へと歩み寄る。

そして初めて顔を合わす四人。

『…待っていた』

ひと時の沈黙の中、始めに口を開いたのはイフ(秦)だった。

『えっ!?』

予想を裏切る男のような声色に驚きを隠せないソラ。そして自分をここまで導いた謎の声と一致したことに更なる驚きを覚えた。

シュンッ

イフ(秦)が刀を振り上げ、顔前にその斬り先を持ってくる。刀にこびり付いていたま新しい血液が顔に飛び散る。

『うっ』
『…お前も俺達と同じく親を憎んでいる』

鼻腔を刺激する生臭い血の匂い。

(…この血、本物だ…)

ある理由から家を飛び出したソラは、道を外れ不良のようにになってしまっていた。

喧嘩も日常茶飯事の為、血の匂いもよく知っているのである。

『アリス下がってっ、あの刀本物だ!!』

ソラはアリスに向かって叫んだ。

『えっ!?』

その声の勢いに押され、後ろに下がるアリス。震えた声で尋ねる。

『ソラさん、刀がほんものって』
『刀にこびり付いた赤いものが見えるだろ、あれ本物の血っ…多分警官の』

話を聞いたアリス。顔からみるみる血の気が引いていき吐き気をもよおす。ソラの方も強がって見せてはいるが両膝が震えていた。

『…ぐっ…なに』

急に美貴の頭の中に思い出したくも無い、でも、忘れる事の出来ない過去の忌まわしい映像が鮮明にうかびあがる。

―父がリストラされた日―

―父に殴られる母―

―父の浮気―

―母の隣の知らない男―

そして、父・母の二人に虐待される幼き頃の自分…ソラの姿。

(…憎い…私の夢を打ち砕き、私に暴力を振るった親が憎いっ…あいつ等はその報いを受けるべきなんだっ)

自分自身でも心の中が憎悪で満たされていくのがわかる。

(…私がこうなったのもあいつ等のせいだっ…許せない…あいつら許せないっ)

『…殺すっ、殺してやる!!』

人の子供として一番してはならない事…親殺し。それに手を染めてしまいそうな感情に駆られるソラ。

『ソラさん!?』

アリスが心配になり声をかける。

パアアァァァァッ

そんな感情を打ち消すかのようにソラの胸元のペンダントが強い輝きを放つ。

ソラの手が無意識のうちに伸びてそれを掴む。

心に侵食していた親に対しての殺意が徐々に和らいでいく。

『…何て暖かい光なんだ』

ジェネ(鷹)は幸悦な表情でその光に魅入っている。

『鷹っ、騙されるんじゃない、こんな物はまやかしだっ!!』

イフ(秦)はそう叫ぶと、魅入られているジェネ(鷹)の手を引き、その光の何かを拒絶するかのように足早でその場から離れた。

『…お父さん…お母さん…』

ペンダントを握った瞬間、頭の中に流れ込んできた先ほどとはまた違う過去の記憶。

自分を優く包み込むような笑みを浮かべ、可愛がってくれた両親の姿。家族団らんだった頃の幸せな思い出。

次々と流れ込んでくる懐かしくも、切ない思い出に、ソラの頬を一筋の涙が伝って下に落ちる。

『…ソラさん…泣いてるんですか』

ソラに言われ後ろに下がっていたアリスが、今まで一度も見たことの無い、尊敬する先輩の寂しそうな背中に耐えかねて声をかける。

ソラの体がびくっと震え、ソラは涙を流したのを隠すように声のトーンを上げる。

『なっ、何言ってんだよ、私が泣くわけないじゃんっ、ゴミが目に入っただけっ!』

震えの混じる声でお決まりの台詞を吐くと、ソラは右腕で急ぎ涙を拭う。

『ソラさ…』
『ごめんアリス、私帰るね』

涙を流した情けない自分の姿を見せたくないのだろう、アリスの言葉を遮るとソラは一度も後ろに振り返らず歩き出した。

だんだんと、少しずつ小さくなってゆく哀愁感漂う後姿。アリスは声をかけずにいられなくなり走り出す。

『ソラさんっ!!』

声を聞き取ったソラがその場で足を止める。

『…なに?』

いつもと違って元気の無い声。後姿からでも迷惑だということが感じ取られた。

『あのっ…』

アリスが遠慮がちに口を開くと、ソラがゆっくりと振り返る。

『アリスさ…私帰るっていったはずだけど…なんか大事な用なわけ?』

輝きを失い疲れきったソラのつり上がり気味の目が《一人にして欲しい》とアリスに訴えかける。

『…家族の人達、心配してると思う…ソラさんが家に帰ったらきっと喜ぶんじゃ…』
『えっ?』

ソラの目が驚きから大きく見開き、アリスを見据える。

『うっ…』

(おこられるっ)

アリスは喧嘩をしている時のソラの荒れている姿を思い出し、肩をすくめる。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。 その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。 「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」 次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。 彼女は知っている。 このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。 未来を変えるため、アメリアは 冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。 これは、かつて守れなかった主人のための転生。 そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。 王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 挿絵はA I画像を使用 10/20 第一章完結 12/20 第二章完結 2/16 第三章完結 他サイト掲載 (小説家になろう、Caita)

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

処理中です...