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第十章
『秘事』#4
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シエンは車を降りるとサングラスを外し、胸ポケットに入れる。助手席に周ると、ドアを開けた。
「なんか…パスタの店って感じじゃないな」
差し出されたシエンの手を取りながら、ロイスは店を見上げる。
店は古き良き時代の海辺の家のような、ロッジ風の外観をしていた。
無垢の木の入口の壁には、白と水色に塗られた木製の浮き輪が掛けられている。くるりと巻かれた白い綱がアクセントになっている。
目の高さに小さなステンドグラスが嵌め込まれたドアの横には、大きな金属製の錨《いかり》が置かれている。
ロイスには馴染みの無い店だった。勿論、学校帰りにレイモンドに誘われて、ファミリーレストランに行ったこともある。しかし、高校生同士──特に男子高校生が気軽に入るには気恥ずかしいような、女性人気の高い『オシャレなカフェ』といった店に入るのは初めてだった。
「そうでしょう。それが良いんですよ」
ロイスはシエンの後ろに、恐る恐るついて行く。
「──さぁ、どうぞ」
シエンが店の扉を開けると、チリンチリンと涼やかな鈴の音がなる。
ロイスを先に入店させる。
「ありがと」
ロイスが店に入ると、店内は程よく空調が効いていて、外国語で伝統的な曲調のBGMがゆったりと流れている。内装も海辺の店らしく、古いランプや縄網に入れられたガラス製の浮き玉が幾つも飾られている。
一番目立つ壁には、実際に使われていたような、大きく古びた船の舵が飾られている。
時刻は十一時四十分。店内はまだ空席もあった。
「いらっしゃいませ~。何名様ですか?」
丸い盆を持って、腰にエプロンを巻いた女性店員が、シエンに声をかける。
「二人です」
シエンは店員に向かって、二本の指を立てる。
(レイ達とファミレスには行ったことあるけど…こういう店は初めてだな)
自然とシエンのジャケットの裾を握っていた。
ロイスは物珍しそうに、店内を見渡す。いつも行くのは、両親や祖父母達と行く高級ホテル内のレストランや高級ショッピング街に建つ一流レストランばかりだった。
「席へご案内します」
店員が空いている席へ案内しようと、店の奥へ手を向ける。
しかしシエンは、窓際にカウンター席を指差す。
「あの、窓際のカウンター、よろしいですか?」
店員はニッコリと笑顔を作る。
「はい、どうぞ」
そう言って、カウンター席に向かって手を挙げて、二人を案内した。
「ロイス様、カウンター席へ参りましょう」
シエンはそっとロイスの腰に手を当てて、窓際へと誘《いざな》う。
「うん…」
ロイスは初めてのカウンター席に戸惑う。
(──テーブル席じゃないんだ…)
いつも行く店にはカウンター席は無い。祖父が上座《かみざ》に座り、一番年下の自分は末席だ。
空いているテーブル席もあるのに、何故シエンがカウンター席を指定したのか判らない。
テーブルの上には何も置いてない為、予約席でもなさそうなのに。
「どうぞ」
テーブル席を見ているロイスに、シエンがカウンター席の中央に置かれた椅子を引いて待っていた。
シエンに誘われるままに、ロイスはカウンター席に座る。
そして、きちんと座り、顔を窓の外に向けると、眼前に広がる景色に目を見張る。
「…わぁ、海が綺麗だ」
目の前には屋根の付いたテラス席、その奥の小さな庭には二本の大きな木が見える。右側の木はオリーブ。左側はブラシに似た赤い花みたいなものが沢山付いている。そして道路があり、一番奥にヨットハーバーと青い海が広がっていた。
オリーブの木の裏から延びた桟橋で、ヨットの出航準備をしている男達が四~五人いる。
窓枠で切り取られたアートのように、店内の一部となっていた。
「そうでしょう。カウンター席から眺める、この景色が良いんですよ」
シエンがロイスの左側に座ると、店員がレモンの入った水とおしぼりをテーブルに置いて行った。
「──さて、何を召し上がりますか?」
シエンはメニュー表をロイスの前に広げる。
写真付きで、美味しそうなパスタが何種類も並んでいる。
「うーん…」
あまりの種類の多さに、ロイスは迷う。
メニュー表のページを捲《めく》ると、次のページにはピッツァが並んでいた。更にページをめくると、リゾットとサンドウィッチが並んでいる。
サンドウィッチも良いが、やはりシエンがお勧めだと言うパスタにすることにして、ページを元に戻した。
トマトは食べれないから、オイル系かクリーム系かスープ系か…。クリーム系やスープ系は、もしかしたらソースやスープで服を汚すかもしれない。
と、なるとオイル系一択になる。
「──ボンゴレ、かな」
ロイスはアサリが沢山盛られたボンゴレ・ビアンコを指差す。
「──アサリが食べたい」
シエンが海鮮が美味しいって言っていたから。
「承知しました」
シエンは振り返り、厨房入口から店内を見渡している女性店員に合図を送る。
「──すみません」
女性店員は、エプロンから注文用紙を取り出しながら、足早に二人の間に立った。
「ご注文伺います」
「ボンゴレ・ビアンコと…」
ふと、メニュー表に「ランチにはドリンクが付きます」の文字を見て、ロイスにドリンクを聞くのを忘れていた事に気付く。
「──あ、セットのドリンクはどうしますか?」
ロイスもそれに気付いたのか、セットドリンクの一覧を見ていた。
「なんか…パスタの店って感じじゃないな」
差し出されたシエンの手を取りながら、ロイスは店を見上げる。
店は古き良き時代の海辺の家のような、ロッジ風の外観をしていた。
無垢の木の入口の壁には、白と水色に塗られた木製の浮き輪が掛けられている。くるりと巻かれた白い綱がアクセントになっている。
目の高さに小さなステンドグラスが嵌め込まれたドアの横には、大きな金属製の錨《いかり》が置かれている。
ロイスには馴染みの無い店だった。勿論、学校帰りにレイモンドに誘われて、ファミリーレストランに行ったこともある。しかし、高校生同士──特に男子高校生が気軽に入るには気恥ずかしいような、女性人気の高い『オシャレなカフェ』といった店に入るのは初めてだった。
「そうでしょう。それが良いんですよ」
ロイスはシエンの後ろに、恐る恐るついて行く。
「──さぁ、どうぞ」
シエンが店の扉を開けると、チリンチリンと涼やかな鈴の音がなる。
ロイスを先に入店させる。
「ありがと」
ロイスが店に入ると、店内は程よく空調が効いていて、外国語で伝統的な曲調のBGMがゆったりと流れている。内装も海辺の店らしく、古いランプや縄網に入れられたガラス製の浮き玉が幾つも飾られている。
一番目立つ壁には、実際に使われていたような、大きく古びた船の舵が飾られている。
時刻は十一時四十分。店内はまだ空席もあった。
「いらっしゃいませ~。何名様ですか?」
丸い盆を持って、腰にエプロンを巻いた女性店員が、シエンに声をかける。
「二人です」
シエンは店員に向かって、二本の指を立てる。
(レイ達とファミレスには行ったことあるけど…こういう店は初めてだな)
自然とシエンのジャケットの裾を握っていた。
ロイスは物珍しそうに、店内を見渡す。いつも行くのは、両親や祖父母達と行く高級ホテル内のレストランや高級ショッピング街に建つ一流レストランばかりだった。
「席へご案内します」
店員が空いている席へ案内しようと、店の奥へ手を向ける。
しかしシエンは、窓際にカウンター席を指差す。
「あの、窓際のカウンター、よろしいですか?」
店員はニッコリと笑顔を作る。
「はい、どうぞ」
そう言って、カウンター席に向かって手を挙げて、二人を案内した。
「ロイス様、カウンター席へ参りましょう」
シエンはそっとロイスの腰に手を当てて、窓際へと誘《いざな》う。
「うん…」
ロイスは初めてのカウンター席に戸惑う。
(──テーブル席じゃないんだ…)
いつも行く店にはカウンター席は無い。祖父が上座《かみざ》に座り、一番年下の自分は末席だ。
空いているテーブル席もあるのに、何故シエンがカウンター席を指定したのか判らない。
テーブルの上には何も置いてない為、予約席でもなさそうなのに。
「どうぞ」
テーブル席を見ているロイスに、シエンがカウンター席の中央に置かれた椅子を引いて待っていた。
シエンに誘われるままに、ロイスはカウンター席に座る。
そして、きちんと座り、顔を窓の外に向けると、眼前に広がる景色に目を見張る。
「…わぁ、海が綺麗だ」
目の前には屋根の付いたテラス席、その奥の小さな庭には二本の大きな木が見える。右側の木はオリーブ。左側はブラシに似た赤い花みたいなものが沢山付いている。そして道路があり、一番奥にヨットハーバーと青い海が広がっていた。
オリーブの木の裏から延びた桟橋で、ヨットの出航準備をしている男達が四~五人いる。
窓枠で切り取られたアートのように、店内の一部となっていた。
「そうでしょう。カウンター席から眺める、この景色が良いんですよ」
シエンがロイスの左側に座ると、店員がレモンの入った水とおしぼりをテーブルに置いて行った。
「──さて、何を召し上がりますか?」
シエンはメニュー表をロイスの前に広げる。
写真付きで、美味しそうなパスタが何種類も並んでいる。
「うーん…」
あまりの種類の多さに、ロイスは迷う。
メニュー表のページを捲《めく》ると、次のページにはピッツァが並んでいた。更にページをめくると、リゾットとサンドウィッチが並んでいる。
サンドウィッチも良いが、やはりシエンがお勧めだと言うパスタにすることにして、ページを元に戻した。
トマトは食べれないから、オイル系かクリーム系かスープ系か…。クリーム系やスープ系は、もしかしたらソースやスープで服を汚すかもしれない。
と、なるとオイル系一択になる。
「──ボンゴレ、かな」
ロイスはアサリが沢山盛られたボンゴレ・ビアンコを指差す。
「──アサリが食べたい」
シエンが海鮮が美味しいって言っていたから。
「承知しました」
シエンは振り返り、厨房入口から店内を見渡している女性店員に合図を送る。
「──すみません」
女性店員は、エプロンから注文用紙を取り出しながら、足早に二人の間に立った。
「ご注文伺います」
「ボンゴレ・ビアンコと…」
ふと、メニュー表に「ランチにはドリンクが付きます」の文字を見て、ロイスにドリンクを聞くのを忘れていた事に気付く。
「──あ、セットのドリンクはどうしますか?」
ロイスもそれに気付いたのか、セットドリンクの一覧を見ていた。
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