異世界転移したのにテレパスしか使えない僕は、誰を信じればいいんだろう

ぐりとぐる

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偽りの安息

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「ユージ様!ユージ様!」

エリナの声で、僕は目を覚ました。
……何だろう、何か頭が重たい。
自分が自分じゃないみたいだ。

「……エリナ?」

すごく心配そうな顔で僕を揺すっているエリナに、声をかける。

「ユージ様……良かったあ!」

エリナは、僕を抱き締めて涙ぐむ。

「僕は、どうしたの?」

「わかりませんわ。道端で倒れていたんですの。何が起こったのか、私の方が知りたいですわ」

その時、リィナが向こうから走ってきた。カイウス様を連れて。

「あっ、ユージ!目を覚ましたの!?」

「ユージ君、大丈夫か?」

リィナが心配してくれていたらしいことは嬉しく思う。
でも、なぜかカイウス様に対しては素直な感謝の気持ちが持てない。

「うん、何か頭がボーっとする」

出来るだけカイウス様を見ないようにしながら、僕は言葉を発した。
それを意に介せず、カイウス様は僕に手をかざす。

「ふーむ、身体には異常はなさそうだが」

「エリナが滅茶苦茶に治癒魔法をかけようとしてたのよ」
「だって、もし手遅れになったらと思うと……」
「治癒魔法を健康な人にかけ過ぎるとかえって体に悪くなることもあるんだぞ」
「……はい、すみません」
「でも、治癒魔法をかけずにカイウス様の到着を待ってたんだよね?」
「ええ、ユージ様の害になりたくはありませんわ」

そんな会話を聞きながら、僕は心を鎮めようと一生懸命だった。
カイウス様は優秀な領主であるからこそ、とても忙しい。
そんな多忙の中で、僕のためにわざわざ来てくださったのだ。

ここで不機嫌な態度を取るわけにはいかない。
なぜか湧いてくる不快感を、表に出してはいけないのだ。

「カイウス様、お忙しいのに申し訳ありません」

「いや、君にはとても助けられている。それに、リィナやエリナも世話になっている。君には感謝しているんだ。異世界からの転移者だからじゃない、ユージ君個人にだ」

以前、僕個人は必要じゃないんだろうなどと言ってしまったことを、カイウス様は気にしてくれていたんだ。
僕が未熟なのに、カイウス様は……。
それなのに、僕の胸の中には黒いものが渦巻いている。

その時、僕の頭の中の記憶が蘇った。

「黒ずくめの男と、話していたような気がします」

「それは誰ですの?」

「わからない。名前も名乗らなかった。でも、僕が異世界から来たことを知っていた」

「それで、他に何か話したのかい?」

それ以上のことを思い出そうとすると、頭が割れるように痛くなる。
それでも、とても大事なことだった気がする。

「うぅ……!」

「ユージ様!?」

「頭が……痛い」

「カイウス様、身体には異常はないんでしょう?」

「うむ、そのはずだ。それなのに頭が痛いとは……」

僕は、どうしていいのかわからなかった。
カイウス様の近くにいてはいけない、という気持ちがあった。
でも、この状態で一人になるのも怖かった。

その気持ちを読み取ったかのように、リィナが言った。

「エリナ、ユージと一緒にいてあげなよ。カイウス様、行きましょう。エリナの仕事も私がやっちゃいます」

「う、うむ。エリナ、体に異常はないのだから、治癒魔法は効かんと思うぞ」

「はい、カイウス様」

そうして、リィナとカイウス様は去って行った。
二人が去ったあと、ようやく自分を取り戻せた気がした。

黒ずくめの男のことを思い出そうとすると、頭が割れそうなほど痛くなる。
だが、それ以外は何の異常もない。

カイウス様のことを考えても、不快感はない。
わざわざ僕のために忙しい中を来てくれたんだと思うと、素直に感謝の気持ちを抱くことができる。

だけど——直接会うと不快感が湧いてくる。
こんなにお世話になって、いろいろと気を使ってもらって……。
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

「ユージ様、ご気分はいかがですの?」

エリナが、僕を心配してくれている。
あっちの世界にも親友はいるけれど、こっちの世界でも僕は出会いに恵まれている。

「うん、大分良くなってきたよ」

僕は、エリナに心配をかけないように努めて明るく振る舞った。
エリナは、ほっとした顔で笑顔を向けてくる。

大事にしたいんだ。エリナもリィナも、カイウス様も。
なのに、嫌な予感を拭い去ることができない。

この日々を、大事な人を守りたいのに……。

***

雄二がエリナに介抱され、リィナとカイウスがやって来て去っていくまでの様子を、黒ずくめの男は見ていた。
いや、別にいつまでも黒ずくめでいる必要はない。
今は普通の町人の格好で、三人の様子を窺っていたのだ。

「私のことを覚えているのか……!」

それは、その男にとって想定外のことだった。
自分の術を強固なものにするために姿を見せたが、その記憶は消えるはずだった。

「……もっと慎重に行動しないといかんな」

その男は、カイウスの背中を見ながらそう考えた。
自分が呼び出した相手が思ったよりも精神力が強いのか、それとも自分が未熟なのか。
どっちにしても、復讐のために突き進むしかないと男は思った。
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