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しおりを挟む目覚めたのはベッドの上だった。
アレンとセニが心配そうにアウルの顔をのぞき込んでいた。
「姉さま」
二人は同時に叫んだ。
「よかった。気がつかれましたね」
「私・・・」
「執務室に倒れていたんですよ。驚きました」
「大丈夫? 姉さま」
「ええ、少し疲れただけ」
アウルは身を起こした。
「心配かけたわね。もう起きられるわ」
「無理なさってはいけませんよ。力のつく薬湯を持ってまいりましょう」
セニがぱたぱたと部屋を出て行くと、アウルはアレンに言った。
「ローは?」
「ゆうべから会ってないよ」
「さっき、来たのよ」
アウルは、倒れてもずっと握りしめていたものをアレンに見せた。
ジャビが書いた王への手紙。
これを手に入れるためにローは自分の身をかえりみず、森を離れて鳩を追ってくれたのだ。
ローは、あのまま消えてしまったのだろうか。
だが、最後にアウルを抱きしめたローの腕の感触が残っていた。その力は次第に強くなっていき、なぜかアウルは気を失ったのだ。
「探してみるよ」
「森に帰ったのかもしれない。あなたはあまり動かないで。夕べのようなことがあったら・・・」
「ぼく、ちっとも怖くなかったよ」
「私は心配したわ。もうあんな思いはしたくない」
アレンはちょっと黙り込み、こくりとうなずいた。
「さあさあ、これを飲んで」
セニが薬湯を持ってきてアウルに押しつけた。
「今日は一日休んでいた方がいいとライが申しておりましたよ。なにも考えないで」
「ありがとう」
苦い薬湯を飲んでアウルは顔をしかめた。
もう少し寝ているようにと言い残し、セニはアレンを連れて部屋から出て行った。
一人残されたアウルはため息をついた。
さて、これからどうしよう。
ローのことばかりが心をよぎった。
精霊は、森を離れては生きられない。伝書鳩を追って、ローはどれほどの危険をおかしてしまったのか。
ひやりとした風が吹き、アウルはふと窓辺に目を向けた。
シャアクが長々と足を伸ばし、窓枠に座っていた。
アウルは息をのんだが、すぐに言葉が口をついた。
「シャアク。ローはどこ?」
「わたしの城だ」
「無事なのね」
シャアクは、むっつりと答えた。
「馬鹿なやつだ。森を離れればどういうことになるかわかっていたろうに」
「ローを責めないで」
アウルはほっとした。
「お礼を言いたいわ。顔を見せてと伝えて」
「私は、おまえの伝言を受け取りに来たわけではない」
「ああ」
言われてみればそうだった。王と名のる者、使い走りなどしないだろう。
「なぜ、ここに?」
「ソーンに会いたい」
アウルは眉を上げた。
「話し合う気になったの」
「会ってみる」
「行けばいいじゃない。神官の部屋は別々だから、ソーンが一人でいる機会はいくらでもあるわ」
シャアクはつぶやいた。
「どう声をかければいい」
「知らないわよ、そんなこと」
アウルはあきれて言った。
「私に聞いてどうするの」
シャアクはアウルから目をそらし、空を見上げた。
「いっしょに来てくれないか」
「わたしが?」
「どうもあの男は苦手だ」
「何を言っているのよ。自分の息子でしょ」
「だからこそだ」
シャアクは髪の毛をかきあげ、大きくため息をついた。本当に困っているように見える。
「まったく」
アウルは寝台から下り、シャアクに歩み寄った。
「人間の何十倍も生きているくせに」
「子供を持った精霊など、そうめったにはいないのでな」
ソーンの母をそれだけ愛していたということか。
こんなシャアクを見ていると、力を貸してやりたい気にはなってくる。
ソーンがシャアクと和解し、ダイから去ってくれれば一番いいのだが。
「どんな人だったの。ソーンの母親って」
「美しく、やさしい女だった。ユーリアと言う名だ。森の木漏れ日がよく似合う、明るい赤毛をしていた。ダイの血を引いていたからな」
シャアクはつけたした。
「おまえとは、だいぶ感じが違うが」
「そうでしょうとも」
アウルは肩をすくめた。
「じゃあ、行きましょう」
シャアクはアウルを見上げた。
「ついていってあげる」
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