サルバトの遺産

ginsui

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エピローグ

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 アロウィンは砂丘を見渡した。
 十数年ぶりの砂漠だった。
 キアル族の村の入り口までは、ライランが出迎えに来ていた。
 彼は肩幅広いたくましい男に変わっており、どこから見ても砂漠の民で通用しそうだった。
 ライランは、ひょろりとした思慮深げな王に目を向けた。
 年月が過ぎた互いの姿を無言で確かめ合った後、ライランはややぎこちなく口を開いた。
「あんたには感謝しているよ、王。親父のことだ。よく面倒を見てくれていると聞いている」
「わたしの叔父だ。あたりまえのことだろう。それに、彼は悪い人間じゃない」
「そういってもらえると、ありがたいよ」
「ジュダインの死を、彼はずいぶん悲しんでいた」
 アロウィンは目を伏せ、静かに言った。
「今でも思う。砂漠にさえいなければ、ジュダインはもっと生きられたのではないかと」
「あれでよかった」
 ライランはきっぱりと言った。
「レヴァイアに連れて帰ってみろ。いい見世物になっていたぜ」
「ああ」
 二人は、村に向かって歩き出した。
 アロウィンは、風にほつれた髪をかき上げた。
「わたしがここに来た理由はわかるだろう」
「クラウトの力は無くなっちまったが、そのくらいの見当はつくさ」
 ライランは答え、しかめっつらしい表情をつくった。
「メラはなにも言わないと思う。あとは、あいつ次第だな」
「わたしには子供がいない。レヴァイアには、〈王を継ぐ者〉が必要だ」
「むろんさ」
 二人は口をつぐんだ。その時、明るい少年の声が聞こえてきた。
「ライラン!」
 アロウィンは二人に向かって駆けてくる少年を見、瞳をゆるがせた。
 波打つ見事な赤毛、負けん気の強そうな灰色の目の、ジュダインとエメル・メラの息子。
 ライランは、愛情こもったまなざしを少年に向けた。
「客人だよ、ケイン」
 少年ははじめてアロウィンを見、驚いたように目を見開いた。
「ぼくは、あなたを見たことがありますよ」
 なおもまじまじとアロウインを見つめたまま。
「夢の中で、何度も何度も。いったい、あなたは──」
「ケイン」
 アロウィンは彼の名を呼び、微笑した。
「わたしは、きみの道標さ」

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