【完結】死に戻り伯爵の妻への懺悔

日比木 陽

文字の大きさ
58 / 66
番外編ーside セレスティアー

揺蕩う①

しおりを挟む

―――私の身体は一体どうしてしまったの…。



あの胸を暖かさで満たした幸せな一夜から、本当に自分の身体なのかという程の変化に戸惑う。


今日も、寝室でウィリアム様の手が少し私の肩を撫でただけなのに、すっかりと身体は触れてもらえる、と期待を寄せてしまっている。


「…セレス…?もっとこちらへおいで?」
「あの…ウィル様…」


自分の変化に私自身がとても戸惑っているのに、ウィリアム様に変に思われるのが怖くて、俯いてしまう。


「ん?」
「私…」
「…そういう気分ではない時はきちんと言ってくれていいんだよ。君と眠れるだけでもとても嬉しいんだ。」


はっきり言葉にできない私を抱き寄せて、ウィル様はなんて優しい声で諭してくださるんだろう…。


(ああ、本当は…貴方の声を近くで聞くだけでも…)


思わず、熱い息が隠しきれずに漏れてしまう。


「…セレス…?僕には…そういう気分じゃない、という風には見えないんだんだが…本当に思っていることを教えて…?」
「…私、変なのです。あの日から。とんでもなく…、はしたない女になってしまったのです…」
「…っ…、どうしてそう思うんだい?」


私の決死の告白にも、ウィル様は嫌悪感をあらわにするでもなく、優しく問うてくれる。


「…ウィル様が少し触れてくださるだけで…、いいえ、貴方の声をこんな風な距離で聞くだけでも…、だめなんです…、私…」


途端に私は貴方に強く抱き締められた。
かかる息が少し熱い。



「はぁ…可愛すぎないか…」


ぼそりと独り言のように仰ったけれど、流石にこの距離だと聞こえて、顔が熱くなる。
その頬にウィル様の手がかかって、お顔の方を向かされる。


ウィル様を見つめると、瞳の中に閨の時にチラリと見え隠れする炎が灯っていた。


「セレス…、どうしても、君が欲しい…堪え性がなくて、すまないが…」
「いいえ、…ウィル様になら…、いつでも…。どうか、お好きになさって…」
「っそ、んな可愛い事を言うと、明日起き上がれなくなってしまうよ…?」
「…?」


ウィル様の言葉の意味は分からなかったけれど、その手が抱きたいと意志を持って触れにくると私はもう考えていられなくなる。


しゅるり、と夜着が除かれて全てを晒すことは、何度もあったのに未だに慣れない。
それどころか、あの日から余計に…期待と自分がどうなるか分からない不安とで戸惑いが強くなっている。
…でも決して、いやではない。


貴方が私の後頭部へと掌を当てて、キスをくださる。
最近は最初からお互い唇を少し開いて口づけている。そうして、貴方の熱い舌が咥内に入ってくることにうっとりしてしまう。


「う、フ…ッ、ぅン…」


舌の動きに合わせて、ウィル様の唾液が流れてくることがある。それを…舌で味わう。


(…ずっと啜っていたいと思っている、なんて、絶対に貴方に知られる訳にはいかないけれど…)


吸っている間ちゅう、ちゅる、と音が鳴る事にも慣れた。
ウィル様はそんなことで、はしたないと怒ったりしない。それどころか、少しだけ嬉しそうにキスを深くしてくださる。


唾液を私に取り込むごとに、身体の奥がじんじんと熱くなる。
貴方を受け入れる準備を始めてしまっている。


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。 最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。 ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。 もう限界です。 探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

優しすぎる王太子に妃は現れない

七宮叶歌
恋愛
『優しすぎる王太子』リュシアンは国民から慕われる一方、貴族からは優柔不断と見られていた。 没落しかけた伯爵家の令嬢エレナは、家を救うため王太子妃選定会に挑み、彼の心を射止めようと決意する。 だが、選定会の裏には思わぬ陰謀が渦巻いていた。翻弄されながらも、エレナは自分の想いを貫けるのか。 国が繁栄する時、青い鳥が現れる――そんな伝承のあるフェラデル国で、優しすぎる王太子と没落令嬢の行く末を、青い鳥は見守っている。

処理中です...