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10巻
10-2
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◇ ◇ ◇
オースティン様と和解(?)した後の道中はとても平和だった。
しかし、別れの時間は来るもので……。
「本当にここでいいのですか? ルイビアの街まで送りますよ?」
「いいえ、ここで大丈夫です」
オースティン様達はこのまま王都まで帰るのだが、僕達はルイビアの街で待つレベッカさんに会いに行く約束がある。
レベッカさんは、僕と子供達がとてもお世話になっているルーウェン家の当主の奥さんで、とても穏やかな淑女だ。子供達なんて、おばあ様として慕っているんだよね。
今は息子のグランヴェリオさんの奥さん、アルメリアさんのお産のために、二人と一緒に王都から領地であるルイビアの街に戻っているので、僕達はそこを訪れる約束をしているのだ。
そのことを知っているオースティン様はそこまで送ると言ってくれたのだが、僕はその申し出を断り、ガディア国に入ったところで降ろしてもらった。
「道中であった出来事もお土産話にすると約束していますので」
「そうですか、わかりました。では、会える日を楽しみにしていますので、また王都にも遊びに来てくださいね」
「はい、必ず。では、オースティン様、残りの道中もお気をつけてください」
「「ばいばーい」」
飛び立った飛竜達の姿が小さくなるまで見送ったところで、僕は契約獣のジュール達を呼び出した。
《 《わーい♪》 》
「うわっ!」
すると、呼び出した途端、大きいサイズのフェンリルのジュールと、小さいサイズのスカーレットキングレオのベクトルが飛びついてきたので、僕は後ろに転倒してしまう。
「アレンも!」
「エレナも!」
「うぉ!!」
しかも、アレンとエレナが続いて、僕の上にいるジュールに飛び乗ってくる。
《あらあら、兄様ったら大人気ね~》
《兄上、大丈夫ですか?》
《タクミ兄、潰れちゃってるの!》
飛天虎のフィート、サンダーホークのボルト、フォレストラットのマイルは、突然の出来事に目を丸くしている。
「ちょ、ちょっと、眺めてないで助けてくれ!」
《ふふっ、わかったわ。――ほらほら、アレンちゃん、エレナちゃん、兄様が苦しがっているから降りましょうね》
僕が助けを求めると、フィートがアレンとエレナの襟首を咥えて、僕の上から降ろしてくれる。
《ジュールとベクトルもさっさと降りるの!》
マイルがジュールとベクトルの頭の上に乗ってぴょんぴょんと跳ね、二匹を叱る。
《兄上、お怪我はありませんか?》
やっと上半身を起こせるようになると、ボルトが飛んできて僕のお腹の上に止まり、心配そうに見上げてきた。
「ああ、大丈夫だよ。あ~、びっくりした」
《すみません》
「ん? ボルトが謝る必要はないだろう? それに、ちょっと大袈裟なじゃれつきであって、悪さをしたわけじゃないんだしさ」
さも自分が悪いことをしてしまったような表情をするボルトを、気にするなと撫でる。ボルトは契約獣の中では一番気遣い屋だな。
「それにしても……今回は随分と激しい歓迎だったな~」
《何となく! オレはジュールに続いた!》
ベクトルはよく考えずに行動したらしい。ということで、みんなの視線がジュールに集まる。
《だって~、お兄ちゃんから飛竜とグリフォンの臭いがしたんだも~ん》
「……ああ」
ジュールの言い分は、もの凄く身に覚えがあった。
《そういえば、染みついているわね》
《そうなんですか?》
《全然わからないの!》
僕が立ち上がると、ジュールが臭いを上書きするみたいに身体を擦りつけて来て、フィートが確認するように臭いを嗅ぐ。
ここまで飛竜に乗って来たし、城を出発する時にグリフォンにもじゃれつかれたから、その時に臭いが移ったのだろう。
《お兄ちゃん、浮気?》
「……浮気ってなんだよ」
《だって、ボク達以外の魔物と戯れてきたんでしょう? ボク達というものがありながら……酷いよ!》
えっと……これは嫉妬の類だろうか?
ジュールは頭で僕のおなかをぐいぐい押してくる。
「「あのねー」」
どうフォローしようかと考えていると、アレンとエレナが口を開く。
「かぞくがねー」
「ふえるんだよー」
《《《《 《ん?》 》》》》
子供達の言葉に、ジュール達は揃って首を傾げる。
「あ~……ただそういう可能性があるって話だけだから、気にしないで」
「「ふえるもん!」」
「……」
《え? え? 家族? それって、もしかして飛竜とグリフォン!?》
「「うん!」」
僕の知らない間に、アレンとエレナの中では飛竜とグリフォンが家族になることが確定事項になってしまっていた。
「も~、だからまだ決まっていないって。それに、飛竜とグリフォンもまだ生まれていないだろう」
《お兄ちゃん、もうちょっと詳しく!》
《そうね。兄様、私も聞きたいわ》
ジュールとフィートがもっと説明して欲しいと言い、ボルト、ベクトル、マイルも気になるようで、同意するように頷いている。
「えっと……クレタ国の城でグリフォンに懐かれたんだが、そいつが自分の卵を持って行けと渡してきたんだよ」
《《《《 《うん、うん。それで?》 》》》》
とりあえず、簡単に説明し始めてみたが、ジュール達は余計に興味が湧いたようだ。
「さすがに腕に抱えるほどの大きさの卵を持ち歩くと狙われる心配があるから断ったんだ。そうしたら、今度は生まれたら連れて行けってさ」
《《《 《ほぉ~》 》》》
《じゃあ、アレンとエレナの言う通り、もう少ししたら家族が増えるんだね! ボク、弟がいい! あ、でも、妹でも可愛がる!》
僕の説明にジュールが目を輝かせる。いや、ジュールだけじゃなく、みんなだな。
「いや、だから、それはまだ決まっていないって。生まれる子供の意思に任せることにしたから、家族になるかどうかはまだ不明だよ」
《あら? 兄様、今の話だとグリフォンだけよね? 飛竜はどうなの?》
「飛竜もグリフォンと張り合って、子供を連れて行けって……言い出したんだよ」
《どんな子なのか楽しみなの!》
「だから……いや、もういいか」
ここまでくると「まだ決まっていない」と突っ込むのも無粋そうなので、止めておく。
「ほらほら、そろそろ出発するぞ。じゃないと、少しも移動しないうちに暗くなるからな」
だが、増えるかもしれない家族について楽しそうに語り合う子供達に早めにストップをかけておいた。
あまりこの話で盛り上がられても対応に困ってしまうし、本当にこのままでは日が暮れてしまいそうな気がしたからな。
まあ、ここで日が暮れても問題ないといえば問題ないが、せめてもっと野営に適した場所に移動はしたい。
《そうか、それもそうだよね。で、お兄ちゃん、どこに向かうの?》
「最終的にはルイビアの街。えっと、南東の方向だな」
《寄り道はしていいんだよね?》
「もちろん」
ジュールとフィートが本気を出せば、僕達を乗せていても、ルイビアの街には一日もかからずに到着するだろう。なので、寄り道は歓迎だ。
あ、でも、クレタ国に滞在した分、ルイビアの街に行くのが予定より遅れているので、あまり遅くならないようにはしたい。だいたい四、五日くらいを目安に向かいたいかな。
「とりあえず、あそこに見える森にでも行かないか?」
「「いくー!」」
《《《《 《賛成!》 》》》》
そこからの行動は早かった。
早く早くと子供達に急かされて、あっという間に森へとやって来た。
「「あっ! イーチ!」」
森に入ってすぐに、アレンとエレナがイーチの実……イチゴに似た果実を見つけた。
《お、いっぱい生っているね~》
《あら、こっちにはブルーベリーもあるわ》
《ブラックベリーも混ざっていますね。おや、レッドベリーもありますよ》
《本当だ! 美味しそうだね! 兄ちゃん、食べていい?》
《も~、ベクトル、食べるより集めるのが先なの!》
適当に入ってみた森だったけど、いろんな果実がたっぷりと生っているみたいだ。
ブルーベリーはこっちでは初めて見たな~。見た目は……地球のものとほとんど変わらないな。しかも、通常の青紫色以外にも黒と赤の実がある。甘みと風味が違うんだっけ。
「しかし、ここまで食べ頃なものが多いのも珍しいな。虫食いみたいなものもないし……」
《確かにそうね。自然に落ちたっぽいもの以外がないのよね?》
僕の言葉にフィートが頷く。
どこにだって果実を食べる動物や虫、魔物がいるのだから、ここまで被害がないのも珍しい。
「偶然かな?」
《じゃあ、果実を食べない肉食系の生きものが多いのかしら?》
《おお! じゃあ、オレ、倒してくる!》
僕とフィートが、果実が被害にあっていない理由を予想していると、ベクトルが尻尾をぶんぶん振り回しながら走って行ってしまった。
《行っちゃったの~》
マイルが呆れたような声を出す。
「ははは~。まあ、ベクトルは自由にさせておこう。で、僕達は果実を採っていようか」
《そうね。マイル、私達もベリーを摘みましょう》
《はいなの!》
とはいっても、アレンとエレナは既にジュールを伴ってイーチの実を夢中で摘んでいるし、ボルトも器用にブルーベリーを集めている。
そんなみんなを見ながら、僕も採取を始めるのだった。
しばらくの間、イーチの実、ブルーベリー、ブラックベリー、レッドベリーをたっぷりと収穫したので、僕達は休憩を取ることにした。
「「いっぱいとれたねー」」
《うん! これでイーチジャムとかイーチミルクをいっぱい作ってもらえるね》
ジュールの言葉に、アレンとエレナが目を輝かせる。
「アイスも!」
「プリンも!」
《こっちのベリーもいっぱい摘んだわよ》
《ブルーベリーを使ったミルクもいいんじゃないですかね?》
《美味しそうなの!》
フィート、ボルト、マイルも嬉しそうだ。
そうだな、休憩には飲みものも必須だ。
「今日はまだ飲んだことのないブルーベリーミルクにしてみるか?」
「「《《《 《うん!》 》》》」」
ブルーベリーミルクを作ってみんなに渡し、僕達はゆったりと寛ぐ。
「それにしても、ベクトルはどこまで行ったんだろな~」
《近くにはいないよね?》
《そうね。魔物の気配もないから、魔物を探して遠くまで行っちゃったのかしら?》
《ぼく、飲み終わったら捜してきましょうか?》
《前にフィートに叱られたばかりなのに、反省してないの!》
ジュール、フィート、ボルト、マイルが口々にそう言う。
結局、ミルクを飲み終わってもベクトルは全然帰って来る気配がなかった。
「うーん、とりあえず、この森は安全そうだから、野営はここにしようか。それなら、もう少しベクトルを自由にさせても問題ないしな」
《じゃあ、暗くなるまでもうちょっと時間がありそうだし、ボク達も少しだけ探検しても大丈夫?》
「そうだな。この森は果実が豊富だから、もう少し探してみるか」
「「さがすー!」」
というわけで、再び森を探検してみると、他にも果実がたっぷりと生っているのが見つかった。
「「いっぱい~」」
「本当にベリーが豊富な森だな~」
イーチの実、ブルーベリーの他にも、イエローベリーにラブベリー。それになんと、流星苺まであったのだ!
流星苺はイーチの実よりひと回り大きくて、色は黄色。うっすらと星の模様のある珍しい果実だ。もちろん、美味しい!
「「スターベリー!」」
アレンとエレナなんて流星苺を見つけた時、凄く目を輝かせていたよ。
というわけで、生っているものはしっかりと収穫させてもらった。
《兄ちゃん! 大変、大変!》
ベリー採りを終わらせて野営の準備を始めていると、ベクトルが慌てた様子で駆け込んできた。
「ベクトル、そんなに慌ててどうしたんだ?」
《た、大変だよ!》
いつもはどんなに走り回ってもけろっとしているベクトルが、珍しく息を切らしている。
「大変なのはわかったから。何が大変なんだ?」
《あのね! あっちに入れない場所があるの!》
「入れない場所?」
《うん! 奥に景色が見えるのに、行こうとしたら――ゴチンって! 透明な壁があるみたいなんだよ!》
ベクトルが言うことに間違いがないのであれば、大変であるかはどうかさておき、不思議なことなのは確かだな。
「気にはなるな~。けど、今から行くのは無理だな」
《何で!?》
《そうね~。だって、もうじき日が暮れるものね~》
すぐにでも確かめに行きたいが、これから暗くなるという時に不思議な場所に行くのは止めておきたい。
「ベクトル、そこは何か危険とか、悪い感じはしたか?」
《ん? えっと……ううん、悪い感じは全然しなかったかな?》
「それなら急がなくても大丈夫だな。明るくなってから行くことにしよう」
僕の言葉に、アレンとエレナが首を傾げる。
「「いかないのー?」」
「行くよ。明日の楽しみに取っておこう」
「「わかったー」」
そのまま放置してこの森を去ることもできるが、気になるので確認には行こうと思う。
「というわけで、晩ご飯の準備をするか。みんな、何が食べたい?」
「「おにくー!」」
お、珍しくパンや甘味のリクエストじゃない。
「肉料理な。じゃあ、すき焼き……って言ってもわからないか。牛肉じゃなくて、アーマーバッファローの肉を野菜と一緒に甘じょっぱく煮たものなんてどうだ?」
「「たべたい!」」
《《《《 《食べたい!》 》》》》
みんなの同意も得られたので、早速作り始める。
材料はアーマーバッファローの肉の薄切り、シロ葱という名の長葱っぽいものに、シロ菜という名の白菜っぽいもの。あとはルーク茸、シィ茸などのキノコ類。白滝や豆腐がないのは残念だが、仕方がない。
シロ葱と肉を焼いたら、砂糖とショーユで作った割下を入れ、さらにシロ菜とキノコを入れてコトコトと煮込む。
そういえば、牛肉っぽいものって、今のところアーマーバッファローしか持っていないんだよな~。今度、別の牛魔物を狙って探してみるかな?
「「いいにおーい!」」
《うん、うん》
《早く、早く》
煮えてきたところでアレンとエレナ、ジュールとベクトルが、そわそわしだす。
「もうちょっとだよ。あとは……」
卵に【光魔法】の《ピュリフィケーション》をかけて浄化する。採りたての状態で保管していたとはいえ、生卵をそのまま食べるのは少し不安があるしな。
器に卵を割り入れて軽くほぐし、そこに肉や野菜を取り分けていく。
「よし、できたぞ~」
「「《《《《 《わーい》 》》》》」」
全員に配り終わった途端、一斉に食べ始める。
「「んん~~~」」
《お兄ちゃん、これ美味しい!》
《甘じょっぱいタレがしみ込んだお肉と野菜が美味しいわ~》
《兄上、ぼく、これ好きです》
《オレも好き! これ、美味しい!》
《とっても美味しいの!》
大好評である。アレンとエレナに至っては、感想すら言う時間が惜しいとばかりに黙々と食べ進めている。
ん~、でも、僕としては是非ともうどんが欲しいところだ。そういえば、まだ作ったことがなかったな。えっと……うどんは、小麦粉と塩と水だけだよな? 今からでは無理だが、今度作ろう。
◇ ◇ ◇
食事も終わり、寝る支度をしていると前方から何かが近づいてくる気配があった。
「……魔物ではないよな?」
《うん、これは人かな?》
――ガサリ、ガサリと、音が少しずつ近づいて来るので、僕達は少し警戒する。
「こんばんは」
「……こんばんは?」
やって来たのは年配の男性であった。
灰色のフードつきのローブを着ているため、見た目だけ言えば怪しさ満点だが、何故か警戒心は働かない。しかも、相手から普通に挨拶された。
「寝る支度をしているようだが、我が家へ来ないかい? そんなに広くないので快適とは言えないが、少なくとも屋根の下で眠れるよ?」
「家?」
「すぐそこの結界の中さ。昼間、そこの赤い子が来ていたね」
ベクトルが見つけた透明な壁は、この人が張った結界だったらしい。そして、その中にはこの人の家があるようだ。
「えっと……何故、お招きしてくれるんですか?」
「少し観察していたが、なかなか興味深いことが多くてな。それに、少々聞きたいことができたのだよ」
「……」
どうやら僕達は観察されていたらしい。
しかし……どこが興味深かったのだろうか? 子供達と果実を採取して、普通にご飯を食べていただけだよな?
「……グルッ」
「何だ? クローディアも来たのかい?」
返事をしかねていると、お爺さんがきた方向から黒い豹――ブラックパンサーがゆったりと歩いてきた。そして、お爺さんにすり寄っていく。
「その子はあなたの従魔ですか?」
「ああ、そうだよ。そういえば、自己紹介がまだだったね。私は、オズワルド。この森に住む隠居の爺さ。で、この子はクローディアだよ」
お爺さんが名乗りながらフードを取ると、白髪と長い耳が現れる。
……オズワルドさん? えっと…………ああ、聞き覚えがあると思ったが、ガディアの騎士に同じ名前の人がいたな~。
「「あっ、おみみがながーい!」」
失礼して【鑑定】させてもらうと、お爺さん――オズワルドさんはエルフということがわかった。
なんと四百二十一歳! 僕が出会った中で最年長だ! あ、リヴァイアサンのカイザーは別でね!
そして、ブラックパンサーのクローディアだが、オズワルドさんは【闇魔法】スキルを持っていないので、契約獣ではないようだな。
魔物を使役にするには二通りあって、一つは僕のように【闇魔法】の契約術を用いて従わせる方法。これは主従としての強制力が備わる契約なので、魔物のほうに従属する意思が必要だ。そして、契約すると必要に応じて影に控えさせたり召喚したりできるようになる。
もう一つは懐かせたり調教したりして従わせる方法。所謂、テイムというやつだな。極端な話、従属させる魔道具の首輪を嵌めて強制的に従わせることも可能だ。
オズワルドさんはテイマーで、見た感じからしてクローディアは懐いて従っている従魔なのだろう。
オースティン様と和解(?)した後の道中はとても平和だった。
しかし、別れの時間は来るもので……。
「本当にここでいいのですか? ルイビアの街まで送りますよ?」
「いいえ、ここで大丈夫です」
オースティン様達はこのまま王都まで帰るのだが、僕達はルイビアの街で待つレベッカさんに会いに行く約束がある。
レベッカさんは、僕と子供達がとてもお世話になっているルーウェン家の当主の奥さんで、とても穏やかな淑女だ。子供達なんて、おばあ様として慕っているんだよね。
今は息子のグランヴェリオさんの奥さん、アルメリアさんのお産のために、二人と一緒に王都から領地であるルイビアの街に戻っているので、僕達はそこを訪れる約束をしているのだ。
そのことを知っているオースティン様はそこまで送ると言ってくれたのだが、僕はその申し出を断り、ガディア国に入ったところで降ろしてもらった。
「道中であった出来事もお土産話にすると約束していますので」
「そうですか、わかりました。では、会える日を楽しみにしていますので、また王都にも遊びに来てくださいね」
「はい、必ず。では、オースティン様、残りの道中もお気をつけてください」
「「ばいばーい」」
飛び立った飛竜達の姿が小さくなるまで見送ったところで、僕は契約獣のジュール達を呼び出した。
《 《わーい♪》 》
「うわっ!」
すると、呼び出した途端、大きいサイズのフェンリルのジュールと、小さいサイズのスカーレットキングレオのベクトルが飛びついてきたので、僕は後ろに転倒してしまう。
「アレンも!」
「エレナも!」
「うぉ!!」
しかも、アレンとエレナが続いて、僕の上にいるジュールに飛び乗ってくる。
《あらあら、兄様ったら大人気ね~》
《兄上、大丈夫ですか?》
《タクミ兄、潰れちゃってるの!》
飛天虎のフィート、サンダーホークのボルト、フォレストラットのマイルは、突然の出来事に目を丸くしている。
「ちょ、ちょっと、眺めてないで助けてくれ!」
《ふふっ、わかったわ。――ほらほら、アレンちゃん、エレナちゃん、兄様が苦しがっているから降りましょうね》
僕が助けを求めると、フィートがアレンとエレナの襟首を咥えて、僕の上から降ろしてくれる。
《ジュールとベクトルもさっさと降りるの!》
マイルがジュールとベクトルの頭の上に乗ってぴょんぴょんと跳ね、二匹を叱る。
《兄上、お怪我はありませんか?》
やっと上半身を起こせるようになると、ボルトが飛んできて僕のお腹の上に止まり、心配そうに見上げてきた。
「ああ、大丈夫だよ。あ~、びっくりした」
《すみません》
「ん? ボルトが謝る必要はないだろう? それに、ちょっと大袈裟なじゃれつきであって、悪さをしたわけじゃないんだしさ」
さも自分が悪いことをしてしまったような表情をするボルトを、気にするなと撫でる。ボルトは契約獣の中では一番気遣い屋だな。
「それにしても……今回は随分と激しい歓迎だったな~」
《何となく! オレはジュールに続いた!》
ベクトルはよく考えずに行動したらしい。ということで、みんなの視線がジュールに集まる。
《だって~、お兄ちゃんから飛竜とグリフォンの臭いがしたんだも~ん》
「……ああ」
ジュールの言い分は、もの凄く身に覚えがあった。
《そういえば、染みついているわね》
《そうなんですか?》
《全然わからないの!》
僕が立ち上がると、ジュールが臭いを上書きするみたいに身体を擦りつけて来て、フィートが確認するように臭いを嗅ぐ。
ここまで飛竜に乗って来たし、城を出発する時にグリフォンにもじゃれつかれたから、その時に臭いが移ったのだろう。
《お兄ちゃん、浮気?》
「……浮気ってなんだよ」
《だって、ボク達以外の魔物と戯れてきたんでしょう? ボク達というものがありながら……酷いよ!》
えっと……これは嫉妬の類だろうか?
ジュールは頭で僕のおなかをぐいぐい押してくる。
「「あのねー」」
どうフォローしようかと考えていると、アレンとエレナが口を開く。
「かぞくがねー」
「ふえるんだよー」
《《《《 《ん?》 》》》》
子供達の言葉に、ジュール達は揃って首を傾げる。
「あ~……ただそういう可能性があるって話だけだから、気にしないで」
「「ふえるもん!」」
「……」
《え? え? 家族? それって、もしかして飛竜とグリフォン!?》
「「うん!」」
僕の知らない間に、アレンとエレナの中では飛竜とグリフォンが家族になることが確定事項になってしまっていた。
「も~、だからまだ決まっていないって。それに、飛竜とグリフォンもまだ生まれていないだろう」
《お兄ちゃん、もうちょっと詳しく!》
《そうね。兄様、私も聞きたいわ》
ジュールとフィートがもっと説明して欲しいと言い、ボルト、ベクトル、マイルも気になるようで、同意するように頷いている。
「えっと……クレタ国の城でグリフォンに懐かれたんだが、そいつが自分の卵を持って行けと渡してきたんだよ」
《《《《 《うん、うん。それで?》 》》》》
とりあえず、簡単に説明し始めてみたが、ジュール達は余計に興味が湧いたようだ。
「さすがに腕に抱えるほどの大きさの卵を持ち歩くと狙われる心配があるから断ったんだ。そうしたら、今度は生まれたら連れて行けってさ」
《《《 《ほぉ~》 》》》
《じゃあ、アレンとエレナの言う通り、もう少ししたら家族が増えるんだね! ボク、弟がいい! あ、でも、妹でも可愛がる!》
僕の説明にジュールが目を輝かせる。いや、ジュールだけじゃなく、みんなだな。
「いや、だから、それはまだ決まっていないって。生まれる子供の意思に任せることにしたから、家族になるかどうかはまだ不明だよ」
《あら? 兄様、今の話だとグリフォンだけよね? 飛竜はどうなの?》
「飛竜もグリフォンと張り合って、子供を連れて行けって……言い出したんだよ」
《どんな子なのか楽しみなの!》
「だから……いや、もういいか」
ここまでくると「まだ決まっていない」と突っ込むのも無粋そうなので、止めておく。
「ほらほら、そろそろ出発するぞ。じゃないと、少しも移動しないうちに暗くなるからな」
だが、増えるかもしれない家族について楽しそうに語り合う子供達に早めにストップをかけておいた。
あまりこの話で盛り上がられても対応に困ってしまうし、本当にこのままでは日が暮れてしまいそうな気がしたからな。
まあ、ここで日が暮れても問題ないといえば問題ないが、せめてもっと野営に適した場所に移動はしたい。
《そうか、それもそうだよね。で、お兄ちゃん、どこに向かうの?》
「最終的にはルイビアの街。えっと、南東の方向だな」
《寄り道はしていいんだよね?》
「もちろん」
ジュールとフィートが本気を出せば、僕達を乗せていても、ルイビアの街には一日もかからずに到着するだろう。なので、寄り道は歓迎だ。
あ、でも、クレタ国に滞在した分、ルイビアの街に行くのが予定より遅れているので、あまり遅くならないようにはしたい。だいたい四、五日くらいを目安に向かいたいかな。
「とりあえず、あそこに見える森にでも行かないか?」
「「いくー!」」
《《《《 《賛成!》 》》》》
そこからの行動は早かった。
早く早くと子供達に急かされて、あっという間に森へとやって来た。
「「あっ! イーチ!」」
森に入ってすぐに、アレンとエレナがイーチの実……イチゴに似た果実を見つけた。
《お、いっぱい生っているね~》
《あら、こっちにはブルーベリーもあるわ》
《ブラックベリーも混ざっていますね。おや、レッドベリーもありますよ》
《本当だ! 美味しそうだね! 兄ちゃん、食べていい?》
《も~、ベクトル、食べるより集めるのが先なの!》
適当に入ってみた森だったけど、いろんな果実がたっぷりと生っているみたいだ。
ブルーベリーはこっちでは初めて見たな~。見た目は……地球のものとほとんど変わらないな。しかも、通常の青紫色以外にも黒と赤の実がある。甘みと風味が違うんだっけ。
「しかし、ここまで食べ頃なものが多いのも珍しいな。虫食いみたいなものもないし……」
《確かにそうね。自然に落ちたっぽいもの以外がないのよね?》
僕の言葉にフィートが頷く。
どこにだって果実を食べる動物や虫、魔物がいるのだから、ここまで被害がないのも珍しい。
「偶然かな?」
《じゃあ、果実を食べない肉食系の生きものが多いのかしら?》
《おお! じゃあ、オレ、倒してくる!》
僕とフィートが、果実が被害にあっていない理由を予想していると、ベクトルが尻尾をぶんぶん振り回しながら走って行ってしまった。
《行っちゃったの~》
マイルが呆れたような声を出す。
「ははは~。まあ、ベクトルは自由にさせておこう。で、僕達は果実を採っていようか」
《そうね。マイル、私達もベリーを摘みましょう》
《はいなの!》
とはいっても、アレンとエレナは既にジュールを伴ってイーチの実を夢中で摘んでいるし、ボルトも器用にブルーベリーを集めている。
そんなみんなを見ながら、僕も採取を始めるのだった。
しばらくの間、イーチの実、ブルーベリー、ブラックベリー、レッドベリーをたっぷりと収穫したので、僕達は休憩を取ることにした。
「「いっぱいとれたねー」」
《うん! これでイーチジャムとかイーチミルクをいっぱい作ってもらえるね》
ジュールの言葉に、アレンとエレナが目を輝かせる。
「アイスも!」
「プリンも!」
《こっちのベリーもいっぱい摘んだわよ》
《ブルーベリーを使ったミルクもいいんじゃないですかね?》
《美味しそうなの!》
フィート、ボルト、マイルも嬉しそうだ。
そうだな、休憩には飲みものも必須だ。
「今日はまだ飲んだことのないブルーベリーミルクにしてみるか?」
「「《《《 《うん!》 》》》」」
ブルーベリーミルクを作ってみんなに渡し、僕達はゆったりと寛ぐ。
「それにしても、ベクトルはどこまで行ったんだろな~」
《近くにはいないよね?》
《そうね。魔物の気配もないから、魔物を探して遠くまで行っちゃったのかしら?》
《ぼく、飲み終わったら捜してきましょうか?》
《前にフィートに叱られたばかりなのに、反省してないの!》
ジュール、フィート、ボルト、マイルが口々にそう言う。
結局、ミルクを飲み終わってもベクトルは全然帰って来る気配がなかった。
「うーん、とりあえず、この森は安全そうだから、野営はここにしようか。それなら、もう少しベクトルを自由にさせても問題ないしな」
《じゃあ、暗くなるまでもうちょっと時間がありそうだし、ボク達も少しだけ探検しても大丈夫?》
「そうだな。この森は果実が豊富だから、もう少し探してみるか」
「「さがすー!」」
というわけで、再び森を探検してみると、他にも果実がたっぷりと生っているのが見つかった。
「「いっぱい~」」
「本当にベリーが豊富な森だな~」
イーチの実、ブルーベリーの他にも、イエローベリーにラブベリー。それになんと、流星苺まであったのだ!
流星苺はイーチの実よりひと回り大きくて、色は黄色。うっすらと星の模様のある珍しい果実だ。もちろん、美味しい!
「「スターベリー!」」
アレンとエレナなんて流星苺を見つけた時、凄く目を輝かせていたよ。
というわけで、生っているものはしっかりと収穫させてもらった。
《兄ちゃん! 大変、大変!》
ベリー採りを終わらせて野営の準備を始めていると、ベクトルが慌てた様子で駆け込んできた。
「ベクトル、そんなに慌ててどうしたんだ?」
《た、大変だよ!》
いつもはどんなに走り回ってもけろっとしているベクトルが、珍しく息を切らしている。
「大変なのはわかったから。何が大変なんだ?」
《あのね! あっちに入れない場所があるの!》
「入れない場所?」
《うん! 奥に景色が見えるのに、行こうとしたら――ゴチンって! 透明な壁があるみたいなんだよ!》
ベクトルが言うことに間違いがないのであれば、大変であるかはどうかさておき、不思議なことなのは確かだな。
「気にはなるな~。けど、今から行くのは無理だな」
《何で!?》
《そうね~。だって、もうじき日が暮れるものね~》
すぐにでも確かめに行きたいが、これから暗くなるという時に不思議な場所に行くのは止めておきたい。
「ベクトル、そこは何か危険とか、悪い感じはしたか?」
《ん? えっと……ううん、悪い感じは全然しなかったかな?》
「それなら急がなくても大丈夫だな。明るくなってから行くことにしよう」
僕の言葉に、アレンとエレナが首を傾げる。
「「いかないのー?」」
「行くよ。明日の楽しみに取っておこう」
「「わかったー」」
そのまま放置してこの森を去ることもできるが、気になるので確認には行こうと思う。
「というわけで、晩ご飯の準備をするか。みんな、何が食べたい?」
「「おにくー!」」
お、珍しくパンや甘味のリクエストじゃない。
「肉料理な。じゃあ、すき焼き……って言ってもわからないか。牛肉じゃなくて、アーマーバッファローの肉を野菜と一緒に甘じょっぱく煮たものなんてどうだ?」
「「たべたい!」」
《《《《 《食べたい!》 》》》》
みんなの同意も得られたので、早速作り始める。
材料はアーマーバッファローの肉の薄切り、シロ葱という名の長葱っぽいものに、シロ菜という名の白菜っぽいもの。あとはルーク茸、シィ茸などのキノコ類。白滝や豆腐がないのは残念だが、仕方がない。
シロ葱と肉を焼いたら、砂糖とショーユで作った割下を入れ、さらにシロ菜とキノコを入れてコトコトと煮込む。
そういえば、牛肉っぽいものって、今のところアーマーバッファローしか持っていないんだよな~。今度、別の牛魔物を狙って探してみるかな?
「「いいにおーい!」」
《うん、うん》
《早く、早く》
煮えてきたところでアレンとエレナ、ジュールとベクトルが、そわそわしだす。
「もうちょっとだよ。あとは……」
卵に【光魔法】の《ピュリフィケーション》をかけて浄化する。採りたての状態で保管していたとはいえ、生卵をそのまま食べるのは少し不安があるしな。
器に卵を割り入れて軽くほぐし、そこに肉や野菜を取り分けていく。
「よし、できたぞ~」
「「《《《《 《わーい》 》》》》」」
全員に配り終わった途端、一斉に食べ始める。
「「んん~~~」」
《お兄ちゃん、これ美味しい!》
《甘じょっぱいタレがしみ込んだお肉と野菜が美味しいわ~》
《兄上、ぼく、これ好きです》
《オレも好き! これ、美味しい!》
《とっても美味しいの!》
大好評である。アレンとエレナに至っては、感想すら言う時間が惜しいとばかりに黙々と食べ進めている。
ん~、でも、僕としては是非ともうどんが欲しいところだ。そういえば、まだ作ったことがなかったな。えっと……うどんは、小麦粉と塩と水だけだよな? 今からでは無理だが、今度作ろう。
◇ ◇ ◇
食事も終わり、寝る支度をしていると前方から何かが近づいてくる気配があった。
「……魔物ではないよな?」
《うん、これは人かな?》
――ガサリ、ガサリと、音が少しずつ近づいて来るので、僕達は少し警戒する。
「こんばんは」
「……こんばんは?」
やって来たのは年配の男性であった。
灰色のフードつきのローブを着ているため、見た目だけ言えば怪しさ満点だが、何故か警戒心は働かない。しかも、相手から普通に挨拶された。
「寝る支度をしているようだが、我が家へ来ないかい? そんなに広くないので快適とは言えないが、少なくとも屋根の下で眠れるよ?」
「家?」
「すぐそこの結界の中さ。昼間、そこの赤い子が来ていたね」
ベクトルが見つけた透明な壁は、この人が張った結界だったらしい。そして、その中にはこの人の家があるようだ。
「えっと……何故、お招きしてくれるんですか?」
「少し観察していたが、なかなか興味深いことが多くてな。それに、少々聞きたいことができたのだよ」
「……」
どうやら僕達は観察されていたらしい。
しかし……どこが興味深かったのだろうか? 子供達と果実を採取して、普通にご飯を食べていただけだよな?
「……グルッ」
「何だ? クローディアも来たのかい?」
返事をしかねていると、お爺さんがきた方向から黒い豹――ブラックパンサーがゆったりと歩いてきた。そして、お爺さんにすり寄っていく。
「その子はあなたの従魔ですか?」
「ああ、そうだよ。そういえば、自己紹介がまだだったね。私は、オズワルド。この森に住む隠居の爺さ。で、この子はクローディアだよ」
お爺さんが名乗りながらフードを取ると、白髪と長い耳が現れる。
……オズワルドさん? えっと…………ああ、聞き覚えがあると思ったが、ガディアの騎士に同じ名前の人がいたな~。
「「あっ、おみみがながーい!」」
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なんと四百二十一歳! 僕が出会った中で最年長だ! あ、リヴァイアサンのカイザーは別でね!
そして、ブラックパンサーのクローディアだが、オズワルドさんは【闇魔法】スキルを持っていないので、契約獣ではないようだな。
魔物を使役にするには二通りあって、一つは僕のように【闇魔法】の契約術を用いて従わせる方法。これは主従としての強制力が備わる契約なので、魔物のほうに従属する意思が必要だ。そして、契約すると必要に応じて影に控えさせたり召喚したりできるようになる。
もう一つは懐かせたり調教したりして従わせる方法。所謂、テイムというやつだな。極端な話、従属させる魔道具の首輪を嵌めて強制的に従わせることも可能だ。
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