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第四章
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城の外には三人の男が居ます。真ん中に立つ男はとてもいかつく、見るからに自信に満ちた表情をしています。美形と言えば美形なのですがゴリゴリ、ムキムキのマッチョタイプ。小夜子の好みではありません。
それから大きな鷲鼻をした陰気くさい男とチビで小太りの男。いずれにせよ小夜子のタイプではありません。まあタイプなどどうでもいいのですが、一体こいつら何をしに此処まで来たのでしょう?
そんな疑問をぶつける前に口を開いたのは、真ん中のマッチョでした。
「おいお前!そこで何をしている!」
まあなんと失礼なお言葉。無礼ですわ、初対面の女性に向かって。
「聞いているのか?何をしているかと聞いているんだ!お前チャイニーズか?言葉が通じないのか?」
益々無礼な態度です。こんな男、普段なら無視してさし上げるのですが、状況が状況だけに仕方なく言葉を返します。
「私チャイニーズでは御座いません。日本人です。それと言葉も通じます。随分と失礼な物言いですけど、私に何か?」
小夜子の挑発的な対応に、マッチョはさっきよりイラついた口振りで言い返します。
「チャイニーズだろうが日本人だろうがどうでもいい!ここで何をしているのかと聞いているんだ!」
「観光ですけど?」
「観光……?珍しいな。こんな薄汚いチッポケな城なんか」
「そんなの私の勝手です」
「いちいち生意気な女だな。まあいいや。おいお前、俺達はこれからちょっと調べものをする。観光はいいけど邪魔するなよ」
きた!と小夜子は思いました。やはりこの三人の男、観光客ではなかったようです。調べものって一体なあに?小夜子は問いただしました。
「こんなところで調べものなんて何をする気です?此処はただの古いお城。わざわざ調べるようなものなんてないと思いますけど」
マッチョはいい加減小夜子との会話を終わらせたそうでしたが、しぶしぶ答えました。
「何だ、お前知らないのか。昨夜麓の街で女が襲われる事件があったんだ」
ギクリ。嫌な予感がします。
「それがどうも妙な事件でな。人間の仕業とは思えない。まるで魔法か何かを使えるような、妙な人物がやったとしか思えないんだ」
ますますギクリ。ここまで来たらもう嫌な予感しかしません。
「まるで……バンパイアでも出たかのような」
ガガーン!ゲームオーバー!ここまでばれてしまっては返す言葉もありません。それでも小夜子は、なんとかこの男たちに帰って貰おうと必死に対応します。
「バ、バンパイアって、そんな馬鹿な話あります?そんなのただのお伽話じゃない。信じる方が馬鹿げているわ」
マッチョはムッとして応えます。
「お前は知らないだろうけどな、この城にはバンパイアが眠るという伝説があるんだ!な、いかにも居そうな雰囲気だろ?それだけじゃない、おれのじいちゃんのじいちゃんの……まあいいや、とにかくご先祖様はバンパイアハンターだったんだぜ!」
バンパイアハンター。それぞまさに、ヨーロッパ中のバンパイアを追いつめた犯人です。
「ま、まさか貴方、バンパイアを捕まえに来たとでも言うの?」
男は威張ってこう答えます。
「もちろん!」
コイツ……街の不審な事件をバンパイアのせいだと思い、更には先祖がバンパイアハンターだと言うだけで仲間を引き連れこの城に乗り込んでくるとは……。まったく見上げた大馬鹿野郎です。
と、ごく常識的な感覚を持った人なら思うでしょう。しかしそうとも言い切れないのです。何故なら本当にこの城にはバンパイアが居て、昨日の事件もそのバンパイアの仕業なのですから!
「もし本物のバンパイアが居たら俺がとっ捕まえてやるぜー!そうすりゃ俺は英雄、女子にもモテモテってもんよ!」
どこまで浅はかなのかこのバカマッチョ。
いくら間抜けな伯爵でも、ここまで馬鹿な男には流石に捕まらないでしょう。と、思いたいのですが、何しろ今の伯爵は随分弱っています。寝込みを襲われたらいくら相手が馬鹿でも抵抗できないかもしれません。でもあれ程姿を現さないようにと念押ししたので、大丈夫かな?小夜子の心に不安がぐるぐると渦巻きます。
なんて考えているうちに、バカマッチョとその子分は悠々とした足取りで城の中へと入って行きました。さて、困ったものです。一体彼らをどうすればいいのでしょう?
とりあえず小夜子はバカマッチョ達の後ろをついて行きました。なるべく距離を置いて、尾行していると気付かれないように。
流石は馬鹿だけあって、いきなり伯爵の居る部屋へ突入する程の勘は発揮しませんでした。一部屋一部屋、虱潰しに確認していくという気が遠くなるガサ入れです。
それにしても、いちいち乱暴にドアを開け閉めしたりベタベタ装飾品を触ったり……。もう少しお上品に出来ないものでしょうか?この場に伯爵が居たら余りの粗悪な行動に卒倒してしまうでしょうね。
こんな調子で一時間程でしょうか。三バカトリオが確認していない部屋もいよいよ限られてきました。恐らくそこに伯爵は隠れているでしょう。姿を消しているので見付かる筈はないのですが、小夜子は一つ心配なのです。
ここ数日の伯爵を見ると、確実に弱っているのが判ります。あの状態で魔力を使えば、きっとますます消耗してしまうでしょう。無理に力を使い過ぎて伯爵に限界が来てしまったら……。いいえ、それよりも……。
もしもまた先日のようにバンパイアの本能が目覚めてしまったらどうしましょう。ああなってしまったら伯爵はもう理性では動けません。動物のように本能だけで動く筈です。そうなると小夜子の忠告も聞き入れる事無く、また人前に姿を現し本能的に襲ってしまうかもしれないのです。
もしもそんな恐ろしい事態になってしまったら、恐らく伯爵はあっという間に捕まり以前のように封印されるか、或いは無慈悲にも心臓に杭を打ち込まれ二度と復活できぬ屍になるかもしれません。
小夜子の頭から恐ろしい妄想が消えません。確かにあいつら馬鹿そうだったけど、見た感じパワーはありそうです。その上本当か嘘か判りませんが、バンパイアハンターの血まで引いていると言うのですから。
その時、三バカ達の足がある場所で止まりました。かつて伯爵が封印されていた場所。あの棺が置かれた地下室への階段です。
「見ろよ、地下室だぜ。こういうところに秘密があったりするんだよなあ」
バカマッチョが言います。
「行ってみようぜ」「懐中電灯点けるか?」
子分の二人もついて行きます。小夜子はなるべく平静を装って声を掛けました。
「あの、そちらは立ち入り禁止だった筈ですわよ。勝手に入ってはけないと思います」
「何だお前。まだ俺達にくっついてんのか?まさか……」
まさか……彼らを尾行しているとばれてしまったのでしょうか?
「お前俺様に惚れたな?」
どこをどうすりゃそんな思考になるんでいバカヤロー!小夜子は頭の悪いマッチョが一番嫌いなのです。オエーッ!
人の忠告など聞く筈もなく、三人は地下室へと降りて行きました。あ~あ、いよいよ伯爵の身バレが濃厚になってきます。お願いだから気付かないで……。
小夜子は地下室への階段の上でじっと待っていました。万が一彼らが伯爵の存在に気付いたらどう誤魔化そうかと考えていたのです。しかし、それから暫くして三人の騒がしい声と足音が近付いてきました。明らかに興奮している様子です。
小夜子は恐る恐るバカマッチョに訊きました。
「な、何かあったのでしょうか?」
バカマッチョは得意げに答えます。
「ふふ、地下室でな、スッゲー物を見付けたんだ!なんだと思う?」
きっとそれは伯爵の棺です。
「なんと!バンパイアのカンオケを見付けたんだー!」
ああ、やっぱり……。彼らは世紀の大発見とでも言いたげな様子で得意げに続けます。
「やっぱり俺様の睨んだ通りだ!ここには昔からバンパイア伝説がある。あのカンオケが何よりの証拠だ!となると、この前の事件はやっぱりバンパイアの仕業に違いない……」
「ここまで来たんだ。バンパイアも見付けてとっ捕まえてやろーぜ!」
「捕まえる為の道具だってあるぜ!ほら、大蒜、杭、十字架……」
ああ、こいつら本当に馬鹿だ。馬鹿の癖に行動力があると厄介です。活動的な馬鹿より恐ろしいものはない。と、ゲーテも言っていましたわね。思い込みだけで止めてくれればいいのですが、ここまで準備万端で行動されると手の施しようがありません。
もしもマトモな人が彼らを見たら、いい年してバンパイアの存在を本気で信じ、その上道具までバッチリ持って人気のない古城にバンパイア退治へとやってきた愚鈍な若者達と嘲笑うでしょう。しかし、今の小夜子と伯爵にとっては違うのです。だって、もし彼らに伯爵の存在が知られたら、どうなるか判らないのですもの!
「おい!上に上がる階段もあるぜ!行ってみよう!」
バカマッチョが叫びます。二人の子分も勇ましくついて行きます。
「ちょ、ちょっとちょっと!上は本当に立ち入り禁止ですわよ!勝手に入ったらいけないですってば!ねえ!」
小夜子にはこれが精一杯ですが、当然三人が聞くはずもありません。とうとう三人の男は、伯爵が隠れているであろう伯爵の部屋へと行ってしまったのでした。
それから大きな鷲鼻をした陰気くさい男とチビで小太りの男。いずれにせよ小夜子のタイプではありません。まあタイプなどどうでもいいのですが、一体こいつら何をしに此処まで来たのでしょう?
そんな疑問をぶつける前に口を開いたのは、真ん中のマッチョでした。
「おいお前!そこで何をしている!」
まあなんと失礼なお言葉。無礼ですわ、初対面の女性に向かって。
「聞いているのか?何をしているかと聞いているんだ!お前チャイニーズか?言葉が通じないのか?」
益々無礼な態度です。こんな男、普段なら無視してさし上げるのですが、状況が状況だけに仕方なく言葉を返します。
「私チャイニーズでは御座いません。日本人です。それと言葉も通じます。随分と失礼な物言いですけど、私に何か?」
小夜子の挑発的な対応に、マッチョはさっきよりイラついた口振りで言い返します。
「チャイニーズだろうが日本人だろうがどうでもいい!ここで何をしているのかと聞いているんだ!」
「観光ですけど?」
「観光……?珍しいな。こんな薄汚いチッポケな城なんか」
「そんなの私の勝手です」
「いちいち生意気な女だな。まあいいや。おいお前、俺達はこれからちょっと調べものをする。観光はいいけど邪魔するなよ」
きた!と小夜子は思いました。やはりこの三人の男、観光客ではなかったようです。調べものって一体なあに?小夜子は問いただしました。
「こんなところで調べものなんて何をする気です?此処はただの古いお城。わざわざ調べるようなものなんてないと思いますけど」
マッチョはいい加減小夜子との会話を終わらせたそうでしたが、しぶしぶ答えました。
「何だ、お前知らないのか。昨夜麓の街で女が襲われる事件があったんだ」
ギクリ。嫌な予感がします。
「それがどうも妙な事件でな。人間の仕業とは思えない。まるで魔法か何かを使えるような、妙な人物がやったとしか思えないんだ」
ますますギクリ。ここまで来たらもう嫌な予感しかしません。
「まるで……バンパイアでも出たかのような」
ガガーン!ゲームオーバー!ここまでばれてしまっては返す言葉もありません。それでも小夜子は、なんとかこの男たちに帰って貰おうと必死に対応します。
「バ、バンパイアって、そんな馬鹿な話あります?そんなのただのお伽話じゃない。信じる方が馬鹿げているわ」
マッチョはムッとして応えます。
「お前は知らないだろうけどな、この城にはバンパイアが眠るという伝説があるんだ!な、いかにも居そうな雰囲気だろ?それだけじゃない、おれのじいちゃんのじいちゃんの……まあいいや、とにかくご先祖様はバンパイアハンターだったんだぜ!」
バンパイアハンター。それぞまさに、ヨーロッパ中のバンパイアを追いつめた犯人です。
「ま、まさか貴方、バンパイアを捕まえに来たとでも言うの?」
男は威張ってこう答えます。
「もちろん!」
コイツ……街の不審な事件をバンパイアのせいだと思い、更には先祖がバンパイアハンターだと言うだけで仲間を引き連れこの城に乗り込んでくるとは……。まったく見上げた大馬鹿野郎です。
と、ごく常識的な感覚を持った人なら思うでしょう。しかしそうとも言い切れないのです。何故なら本当にこの城にはバンパイアが居て、昨日の事件もそのバンパイアの仕業なのですから!
「もし本物のバンパイアが居たら俺がとっ捕まえてやるぜー!そうすりゃ俺は英雄、女子にもモテモテってもんよ!」
どこまで浅はかなのかこのバカマッチョ。
いくら間抜けな伯爵でも、ここまで馬鹿な男には流石に捕まらないでしょう。と、思いたいのですが、何しろ今の伯爵は随分弱っています。寝込みを襲われたらいくら相手が馬鹿でも抵抗できないかもしれません。でもあれ程姿を現さないようにと念押ししたので、大丈夫かな?小夜子の心に不安がぐるぐると渦巻きます。
なんて考えているうちに、バカマッチョとその子分は悠々とした足取りで城の中へと入って行きました。さて、困ったものです。一体彼らをどうすればいいのでしょう?
とりあえず小夜子はバカマッチョ達の後ろをついて行きました。なるべく距離を置いて、尾行していると気付かれないように。
流石は馬鹿だけあって、いきなり伯爵の居る部屋へ突入する程の勘は発揮しませんでした。一部屋一部屋、虱潰しに確認していくという気が遠くなるガサ入れです。
それにしても、いちいち乱暴にドアを開け閉めしたりベタベタ装飾品を触ったり……。もう少しお上品に出来ないものでしょうか?この場に伯爵が居たら余りの粗悪な行動に卒倒してしまうでしょうね。
こんな調子で一時間程でしょうか。三バカトリオが確認していない部屋もいよいよ限られてきました。恐らくそこに伯爵は隠れているでしょう。姿を消しているので見付かる筈はないのですが、小夜子は一つ心配なのです。
ここ数日の伯爵を見ると、確実に弱っているのが判ります。あの状態で魔力を使えば、きっとますます消耗してしまうでしょう。無理に力を使い過ぎて伯爵に限界が来てしまったら……。いいえ、それよりも……。
もしもまた先日のようにバンパイアの本能が目覚めてしまったらどうしましょう。ああなってしまったら伯爵はもう理性では動けません。動物のように本能だけで動く筈です。そうなると小夜子の忠告も聞き入れる事無く、また人前に姿を現し本能的に襲ってしまうかもしれないのです。
もしもそんな恐ろしい事態になってしまったら、恐らく伯爵はあっという間に捕まり以前のように封印されるか、或いは無慈悲にも心臓に杭を打ち込まれ二度と復活できぬ屍になるかもしれません。
小夜子の頭から恐ろしい妄想が消えません。確かにあいつら馬鹿そうだったけど、見た感じパワーはありそうです。その上本当か嘘か判りませんが、バンパイアハンターの血まで引いていると言うのですから。
その時、三バカ達の足がある場所で止まりました。かつて伯爵が封印されていた場所。あの棺が置かれた地下室への階段です。
「見ろよ、地下室だぜ。こういうところに秘密があったりするんだよなあ」
バカマッチョが言います。
「行ってみようぜ」「懐中電灯点けるか?」
子分の二人もついて行きます。小夜子はなるべく平静を装って声を掛けました。
「あの、そちらは立ち入り禁止だった筈ですわよ。勝手に入ってはけないと思います」
「何だお前。まだ俺達にくっついてんのか?まさか……」
まさか……彼らを尾行しているとばれてしまったのでしょうか?
「お前俺様に惚れたな?」
どこをどうすりゃそんな思考になるんでいバカヤロー!小夜子は頭の悪いマッチョが一番嫌いなのです。オエーッ!
人の忠告など聞く筈もなく、三人は地下室へと降りて行きました。あ~あ、いよいよ伯爵の身バレが濃厚になってきます。お願いだから気付かないで……。
小夜子は地下室への階段の上でじっと待っていました。万が一彼らが伯爵の存在に気付いたらどう誤魔化そうかと考えていたのです。しかし、それから暫くして三人の騒がしい声と足音が近付いてきました。明らかに興奮している様子です。
小夜子は恐る恐るバカマッチョに訊きました。
「な、何かあったのでしょうか?」
バカマッチョは得意げに答えます。
「ふふ、地下室でな、スッゲー物を見付けたんだ!なんだと思う?」
きっとそれは伯爵の棺です。
「なんと!バンパイアのカンオケを見付けたんだー!」
ああ、やっぱり……。彼らは世紀の大発見とでも言いたげな様子で得意げに続けます。
「やっぱり俺様の睨んだ通りだ!ここには昔からバンパイア伝説がある。あのカンオケが何よりの証拠だ!となると、この前の事件はやっぱりバンパイアの仕業に違いない……」
「ここまで来たんだ。バンパイアも見付けてとっ捕まえてやろーぜ!」
「捕まえる為の道具だってあるぜ!ほら、大蒜、杭、十字架……」
ああ、こいつら本当に馬鹿だ。馬鹿の癖に行動力があると厄介です。活動的な馬鹿より恐ろしいものはない。と、ゲーテも言っていましたわね。思い込みだけで止めてくれればいいのですが、ここまで準備万端で行動されると手の施しようがありません。
もしもマトモな人が彼らを見たら、いい年してバンパイアの存在を本気で信じ、その上道具までバッチリ持って人気のない古城にバンパイア退治へとやってきた愚鈍な若者達と嘲笑うでしょう。しかし、今の小夜子と伯爵にとっては違うのです。だって、もし彼らに伯爵の存在が知られたら、どうなるか判らないのですもの!
「おい!上に上がる階段もあるぜ!行ってみよう!」
バカマッチョが叫びます。二人の子分も勇ましくついて行きます。
「ちょ、ちょっとちょっと!上は本当に立ち入り禁止ですわよ!勝手に入ったらいけないですってば!ねえ!」
小夜子にはこれが精一杯ですが、当然三人が聞くはずもありません。とうとう三人の男は、伯爵が隠れているであろう伯爵の部屋へと行ってしまったのでした。
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