ダンジョンマスター先輩!!(冒険に)付き合ってあげるからオカルト研究会の存続に協力してください 2!! ~闇乃宮と涙怨の巫女~

千両文士

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第五章:『闇乃宮肆ノ闘戯場/雷獣シネコ』

【第32話】

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「なっ、なんなのあれは!?」
「知らぬ!! しかしながらあれは当事者たる私が子や孫に語り継がねばならぬ代物なのは確かだ!!」
「オマエラウルセエ!! シタカムゾ!!」
 エミとゼド村長を脇に抱えて障壁解除された第四闘戯場ステージを降り、デストロイトランスフォーム・ローラースケート状態で高速移動避難するシルバーデストロイメン。
『シネコ、今すぐアレを解除しろ!!』
 ライブステージ上空に渦巻いて膨張していく黒瘴気塊、それを注視しつつ観客席の闇乃宮討伐隊メンバーを後方に避難させたヤミネコはシルバーデストロイメン達と共にこちらに逃げて来るシネコに叫ぶ。
『そんな事言われたって……オイラにゃ無理だ!! アニキ、何とかしてくれ!!』
 鉄くずと化した魔力制御兵器エレキギターを抱えてこちらに逃げて来るシネコはそれに叫び返す。
『くそっ……かくなる上は雲隠殿!! 今だけお力添えを!!』
 黒太刀を闇渦から抜き取り出したヤミネコはすぐさま鎧の腰に下げ、居合の構えを取る。
『ヒートオーバードライブ!! 神紋刀&麒麟!!』
 一度刃を交えた敵とは言え、仲間を守るためにはやむを得ない。
 総大将としてそう判断した探は阿咋の呼吸で神紋刀を抜き、ヒートオーバードライブを発動。
 その右手甲に刻まれた火神紋が蒼炎に包まれると同時に二刀身も蒼炎に包まれた火炎刀と化す。
『衝刃撃の心得はあるでしょうな!?』
「ああ、もちろんだ!!」
 ヤミネコの指示を受けて上段&中段の構えから上段交差に切り替える探。
『そいつは重畳!! はぁぁぁぁぁぁ……』
 腰に力を入れ、全身から浴れ出さんばかりの闘気を腰の太刀に注入し始めるヤミネコ。
『火神紋、魔力注入!!』
 その力に合わせるべく火神紋経由で魔力を二刀に注ぎ込む探。
 (龍虎……)
 (……共闘?)
 人のもののふ・武神・魔物と言う枠組みを超えた強大な力を前に言葉を失うミズノミヤノミコト様と茜。
 あの膨大な魔力を蓄えた闇渦が何なのかは分からないがいざとなれば雲隠の子供達だけでも守る覚悟を決めていた2人の脳裏にそんなフレーズが浮かぶ。

『雷炎翔刃戟(らいえんしょうじんげき)!!』
 マヨイガエレメント・速度・パワー共に最大出力状態で一気にクロスソードを振り抜き、衝撃刃として射出する探。
 かつてカゼノミヤノミコト戦で用いられた後に改良を加えられ『飛距離』と言う大きなアドバンテージを得たそれは蒼雷炎の十字架となってぶくぶくと拡大を続ける闇渦に突撃していく。
『涙(るい)』
 探に続きヤミネコが居合で抜き放った黒球。
 蒼炎と放電と言う豪快なエフェクトを伴うクロスドブルーファイアボルトとは全く違う小さく華奢な涙滴型の魔力塊は俊速で追いつき、闇渦に同時アタックする。
「きゃあああ!!」
『ひえええええ!!』
 物理的衝突により相互干渉崩壊しはじめる3つの強大な魔力塊がエネルギー変化で放出する音、熱、振動。
 暗くて狭いライブハウス型の第四闘戯場を襲った地揺れに耐え切れずエミとシネコは地面に突っ伏して耳を塞ぐ。
「エミちゃん、大丈夫だ!! 千人力の須田丸おじさんがいるからな!!」
「オメエハナニヤッテンダ!! テメエノケツハテメェデフケヤ!!」
 前衛として正面に立つ茜とミズノミヤノミコト様に代わってエミとその他闇乃宮討伐隊メンバー全員を守る須田丸とシルバーデストロイメン。
 雲隠の子供達と同サイズの小柄さなのをいいことにしれっと守られようとしている第四闘戯場の主・シネコをシルバーデストロイメンはひっばたく。
『そんなこと言われたってぇ……ボクじゃ無理っすよ!! ヤミネコ兄さんの力での破壊に任せるしか無いっす!! 靴紙めますからお見逃しくだせえ、この通りです!!』
「オレサマキカイ、クツハカネエゾ!!」
 ひしゃげ潰れた鉄塊にされた専用魔力制御兵器を没収されたシネコはシルバーデストロイメンに土下座して泣きつく。
「すっ、すごい……これが父さんの本気なのか!! いつか俺もあんなマヨイガ技を……」
 後ろの漫才コントに構うことなく最前線に立つ茜おばさんの後ろに隠れて様子を見るタケル。
 火神紋を与えられし偉大なるもののふである父の本気を見せつけられたタケルは愛槍を握りしめたまま感動に打ち震える。
「ええ、そうねタケル……」
 (あのダースベイダーはとにかく……あれが今の探の全力なのか?)
 元オカルト研究会メンバーとして雲隠二刀流奥義をシン・カゼノミヤノミコト戦以来で見た茜。
 マヨイガの儀を達成して10年以上の歳月が経っており、タケルとエミに後を任せる形で第一線を退いているとは言え、自分も探もマヨイガ管理者として研鑽を積んでいるはずだ。
 それ故に雲隠の血を継ぐあの男がこの程度なわけがない、何かおかしい……この何とも言えない何かが敵の目を欺くための策である可能性である事を願う茜は目を輝かせるタケルの横で平静を装う。

【第33話につづく】
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