36 / 79
第六章:『闇乃宮五ノ闘戯場/風獣カゼネコ』
【第36話】
しおりを挟む
『ふむ、実に懐かしいモノを見せてもらえた……のう、 ミズノモノ殿』
闇乃宮のどこか、黒い和ろうそくが灯る板張りの間。畳上の御簾内から響く声。
「ええ、そうね。 あの時はハラクイナマコだったけど……今思うと若気の至りだったわ」
かつて夫と一緒に探索した水乃宮で水神紋(仮)の力を与えられ、その特性を生かした激闘を思い出したミズノモノ美香は銅鏡の向こうで第五闘戯場に向かう仲間達を見守りつつ答える。
「いまさらだけど、貴女と初めて会ったのはあの幻影の壇条学院だったわよね? それより前も知っていると言う事は……まさか最初から見ていたとでも言うの?」
『……』
瘴気帯で水神紋を封じられた右手に力を入れ、激痛に耐える態勢に入った美香。
だが御簾の中の人物は先刻のおしおき詠唱をせず沈黙するばかりだ。
『うむ、それは答えられぬ。だが安心せよ、そなたの仲間がわらわの下までたどり着くことは無い……なぜならあの者らは第五闘戯場で全滅する運命にあるからだ』
「あらまぁ……ずいぶんな物言いね、黒巫女さん。私達5人がかつて何度もそんな危機を乗り越えて来た事をご存知ないのかしら? 探さんは必ずここまで来るのよ、必ずね」
かつてマヨイガの儀を達成したもののふとしての強い決意表明に御簾の中の人物は黙らせられる。
(※ あらすじネタ ◎個人的名言:無理を通して道理を引っ込ませる、それが俺達のやり方だ!!)
「へえ、ここが第五闘戯場……」
ミラーボールにロックンロールなライブハウスを離れ、小さな花差しと猫の人形が置かれた右回転N字型の違い棚に猫をモチーフにしたであろう風流な水墨画の掛け軸が飾られたわびさびな茶室内に出た12人。
「そもそも俺は具足だが……靴とか脱がなくていいのか?」
「気を抜くな、須田丸!!」
「ミズノモノよ、神紋弓はやめるのじや!!」
本来ならばこの空間は刀を持たず身分に関係なく対等で平等な茶を楽しむ場所……だがここは何が起こるかわからない未知のマヨイガダンジョンたる闇乃宮内で敵が待ち構えている第五闘戯場である。
大小様々な闇乃宮討伐隊メンバーが座ればもう満員なこの狭い空間でありながら茜は愛用の神紋弓を構える。
『ふぉふぉふぉ、血の気がおおい娘さんですな……』
「どこだ!!」
「パパ、刀は危ないわ!!」
『雲隠総大将殿、こちらじゃ。こちらをご覧くだされ』
違い棚の猫人形下に置かれた水墨画などで見る中国山奥の岩柱が立ち並ぶ仙境を三次元立体モデルで再現したジオラマ箱庭。
ひょうひょうとした声が聞こえるのがその中からである事に気が付いた全員は目を皿にしてじっと観察する。
「パパ、この辺りで何か小っちやいのが動いているわ!!」
箱庭の中央辺りの岩上を指さすエミ。
大人達はそこに立つ2センチ程度の自髪白髭でゆったりとした着物姿、木のこぶ付き杖を持った二足歩行猫の存在を指摘されてようやく気づく。
「本当だ…… しかもこの箱庭そのものもただの模型じゃないぞ。ものすごい魔力を帯びている上にアイテムスキャナーでも解析不能な代物のようだ。この小さいヤツの何かなのか……?」
謎の箱庭を『ヒートセンス』で目視観察していたタケルは、ERRORの5文字が表示されるばかりのアイテムスキャナー結果画面を見つつ驚きの声を上げる。
『ふおふおふお、雲隠の御子息殿ありがとうございますぞ……初めてですな、ワシは第五闘戯場の主のカゼネコ。またの名を猫仙人(ねこせんにん)とも言いますのじゃ、以後よろしく』
気づけてもらえたのが嬉しかったのか、満足気に自髭をなでるカゼネコ。
『さて、これより第五闘戯場の主として皆様方とお手合わせいたしますが……このサイズ差では何かと不便ですのでワシのお相手をなさる方をこちらにお招きいたしましょう。 御鐵院殿、こちらに来なされ』
「えっ?」
一陣の風と共に茶室から一瞬で消滅した茜。
『風の眷族たる式神殿、こちらに来なされ』
「きゃあっ!!」
一陣の風と共に茶室から一瞬で消滅した式神ライ。
『雷の五武神殿、こちらに来なされ』
「んっ!?」
一陣の風と共に茶室から一瞬で消滅したナルカミノミヤ。
「おいおいおいおい、御鐵院にライちゃん……どこだ?」
あまりにも一瞬の出来事で何が起こったのか分からず、冷や汗をかきながら周囲を見回してしまう須田丸。
「ナルカミ!! どこにおるのじや!?」
この場にいる五武神としてラスト1人になってしまったミズノミヤ様。
「みんな見て!! 小人な茜おばさん達が……箱庭内にいるわ!!」
「マジかよ。『のらえもん』の不思議アイテムじゃあるまいし、一体どうやって…… ?」
驚きと恐怖の表情を浮かべるエミとタケルの眼下で箱庭内に小っちゃくなって閉じ込められた3人はカゼネコに対峙する。
【第37話につづく】
闇乃宮のどこか、黒い和ろうそくが灯る板張りの間。畳上の御簾内から響く声。
「ええ、そうね。 あの時はハラクイナマコだったけど……今思うと若気の至りだったわ」
かつて夫と一緒に探索した水乃宮で水神紋(仮)の力を与えられ、その特性を生かした激闘を思い出したミズノモノ美香は銅鏡の向こうで第五闘戯場に向かう仲間達を見守りつつ答える。
「いまさらだけど、貴女と初めて会ったのはあの幻影の壇条学院だったわよね? それより前も知っていると言う事は……まさか最初から見ていたとでも言うの?」
『……』
瘴気帯で水神紋を封じられた右手に力を入れ、激痛に耐える態勢に入った美香。
だが御簾の中の人物は先刻のおしおき詠唱をせず沈黙するばかりだ。
『うむ、それは答えられぬ。だが安心せよ、そなたの仲間がわらわの下までたどり着くことは無い……なぜならあの者らは第五闘戯場で全滅する運命にあるからだ』
「あらまぁ……ずいぶんな物言いね、黒巫女さん。私達5人がかつて何度もそんな危機を乗り越えて来た事をご存知ないのかしら? 探さんは必ずここまで来るのよ、必ずね」
かつてマヨイガの儀を達成したもののふとしての強い決意表明に御簾の中の人物は黙らせられる。
(※ あらすじネタ ◎個人的名言:無理を通して道理を引っ込ませる、それが俺達のやり方だ!!)
「へえ、ここが第五闘戯場……」
ミラーボールにロックンロールなライブハウスを離れ、小さな花差しと猫の人形が置かれた右回転N字型の違い棚に猫をモチーフにしたであろう風流な水墨画の掛け軸が飾られたわびさびな茶室内に出た12人。
「そもそも俺は具足だが……靴とか脱がなくていいのか?」
「気を抜くな、須田丸!!」
「ミズノモノよ、神紋弓はやめるのじや!!」
本来ならばこの空間は刀を持たず身分に関係なく対等で平等な茶を楽しむ場所……だがここは何が起こるかわからない未知のマヨイガダンジョンたる闇乃宮内で敵が待ち構えている第五闘戯場である。
大小様々な闇乃宮討伐隊メンバーが座ればもう満員なこの狭い空間でありながら茜は愛用の神紋弓を構える。
『ふぉふぉふぉ、血の気がおおい娘さんですな……』
「どこだ!!」
「パパ、刀は危ないわ!!」
『雲隠総大将殿、こちらじゃ。こちらをご覧くだされ』
違い棚の猫人形下に置かれた水墨画などで見る中国山奥の岩柱が立ち並ぶ仙境を三次元立体モデルで再現したジオラマ箱庭。
ひょうひょうとした声が聞こえるのがその中からである事に気が付いた全員は目を皿にしてじっと観察する。
「パパ、この辺りで何か小っちやいのが動いているわ!!」
箱庭の中央辺りの岩上を指さすエミ。
大人達はそこに立つ2センチ程度の自髪白髭でゆったりとした着物姿、木のこぶ付き杖を持った二足歩行猫の存在を指摘されてようやく気づく。
「本当だ…… しかもこの箱庭そのものもただの模型じゃないぞ。ものすごい魔力を帯びている上にアイテムスキャナーでも解析不能な代物のようだ。この小さいヤツの何かなのか……?」
謎の箱庭を『ヒートセンス』で目視観察していたタケルは、ERRORの5文字が表示されるばかりのアイテムスキャナー結果画面を見つつ驚きの声を上げる。
『ふおふおふお、雲隠の御子息殿ありがとうございますぞ……初めてですな、ワシは第五闘戯場の主のカゼネコ。またの名を猫仙人(ねこせんにん)とも言いますのじゃ、以後よろしく』
気づけてもらえたのが嬉しかったのか、満足気に自髭をなでるカゼネコ。
『さて、これより第五闘戯場の主として皆様方とお手合わせいたしますが……このサイズ差では何かと不便ですのでワシのお相手をなさる方をこちらにお招きいたしましょう。 御鐵院殿、こちらに来なされ』
「えっ?」
一陣の風と共に茶室から一瞬で消滅した茜。
『風の眷族たる式神殿、こちらに来なされ』
「きゃあっ!!」
一陣の風と共に茶室から一瞬で消滅した式神ライ。
『雷の五武神殿、こちらに来なされ』
「んっ!?」
一陣の風と共に茶室から一瞬で消滅したナルカミノミヤ。
「おいおいおいおい、御鐵院にライちゃん……どこだ?」
あまりにも一瞬の出来事で何が起こったのか分からず、冷や汗をかきながら周囲を見回してしまう須田丸。
「ナルカミ!! どこにおるのじや!?」
この場にいる五武神としてラスト1人になってしまったミズノミヤ様。
「みんな見て!! 小人な茜おばさん達が……箱庭内にいるわ!!」
「マジかよ。『のらえもん』の不思議アイテムじゃあるまいし、一体どうやって…… ?」
驚きと恐怖の表情を浮かべるエミとタケルの眼下で箱庭内に小っちゃくなって閉じ込められた3人はカゼネコに対峙する。
【第37話につづく】
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる