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第六章:『闇乃宮五ノ闘戯場/風獣カゼネコ』
【第41話】
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第五闘戯場、茶室内に置かれた箱庭異世界。
『ほほほ、流石は御鐵院の血筋……わしの十八番である空中戦でにここまでついて来れる者は初めてですぞ』
「それはありがとう、仙猫殿」
神紋弓を核として風マヨイガエレメントを物質化形成した野太刀を振り回し続け、汗だくになった茜は浮遊状態を維持したまま応じる。
『七天賦技『空』のみならず神紋武具を核として魔力そのものを武器化させる2つの高度技術を併用して用いれるとは……その大弓含め上級マヨイガ装備系統で補正ありだとしてもやはりわしの眼に狂いはなかったようですな』
満足気にほくそ笑みながら顎髭を満足気にそうになでつけるカゼネコ。
『貴女を主様の下へ行かせるわけにはいきませぬ、ここで死んでもらいましょうぞ!!』
「!!」
雲もろとも茜の眼前から消えたカゼネコ。
『ハイディフェン……』
敵を見失うと言う自身の置かれた危険な状況を理解し、とっさにサポートスキルで自身のダメージ減少を図ろうとした茜の腹に強烈な打撃が打ち込まれる。
「がっ……」
ノンゴールド社CEOとしての職務を果たす日々の中でも続けられていた筋トレと言う努力で維持されていた頑強な乙女腹筋にめり込むカゼネコの一撃。
杖を逆さに持ち替え、風エレメントプラス強化済みの硬い木コブをフルスイングで叩きこむと言う内部破壊衝撃をモロに食らった茜はそのまま頭を下にして尖った岩山に落ちて行く。
『まずは一人……ふぉふぉふぉ』
この高度で地面に叩きつけられれば即死……御鐵院の風神紋使いの始末に成功したカゼネコは雲に乗ったままほくそ笑む。
(くそっ、私もここまでか…… !!)
生身であれば内臓破裂レベルの大ダメージで『空』を強制解除された茜。
自身と同じ風マヨイガエレメント使いでありながら桁違いの強敵であるカゼネコと同じ土俵に立つべく自身も初めての高度戦闘技術を2つも用いて敵と一騎打ちに持ち込むことに成功した茜。
だがエレメント技を維持して切り結ぶのに必死のあまり落下すれば即死の高度まで誘い込まれていた事に気が付くも遅し……激痛のあまり声も出ない茜は頭を下にして箱庭の大地にフリーフォールしていく。
「カゼノモノ様!!」
「らっ、ライちゃん!?」
式神技で生成した黒雲に乗って、こちらに一直線に向かってくる虎チャイナドレスの式神ライ。
いつもは首に下げている専用武器である太鼓のバチを黒雲の先端に突き立て、その間に乗せた太鼓本体をグルグル回しながら黒雲をぶっ飛ばしてくる様はかの有名な蒸気船の白黒カートゥーンアニメをオーバーラップさせる。
「ぼふんっ!!」
「カゼノモノ様、つかまってください!!」
重症を負った茜を黒雲でキャッチした式神ライはすぐに方向転換し、雲の上に立ったまま頭上でにやつく敵から猛スピードで距離を取る。
『ふおふおふお、式神の分際でやりますな……だが無駄、『寄風』』
カゼネコが掌を向けて詠唱するや否や引き寄せるように渦巻く大気。
全速力を維持しているにも関わらずそれに掴まれたライの黒雲はずりずりとバックし始める。
『風神紋発動!! ウインドオーバードライブ!! ウインドブースター!!』
このままではライちゃんも自分も助からない。サポートスキル『自動回復・速』でエレメント技が使える程度に回復していた茜はすぐに風神紋を発動させ、吸い込み力の逆噴射に全力を注ぐものの後退が完全に止まる気配は無い。
『ふははは、無駄な足掻きを!! お二方とも主様の下へは行かせませぬ……ぞ?』
雷エレメント使いのドウシ様はとにかく、その他2匹の娘は袋の中のネズミ。
高所で魔力切れに追い込んで落下死させるもよし、十分に近づけてから頭を杖で叩き割ってもよし……そんな事を考えつつ風エレメント技を維持していたその時だった。
さくっ……背中から鈍い刃物を肉体に裂け入れられたような違和感にカゼネコは後ろを向く。
『ョぉ』
自身の背中に幻覚ではない刃を突き立てる真っ黒な眼に長い白髪で上半身裸の何かは鬼のような牙を見せつけながらニヤリと笑う。
『にやっ……』
『シね』
そのまま拳を顔面に叩きこまれたカゼネコ。
『ぎにゃあぁぁぁぁぁ!!』
その化け物じみた力で雲から叩き落とされるのみならず、ものすごい加速状態ですっ飛ばされたカゼネコは受け身を取る余裕もなく天然の岩柱に激突して大きなひび割れが入る。
『ぐっ、にゃっ……』
何者かはわからないが探知力とテクニカルな戦闘に特化した風エレメント熟達者である自身の感知網に全く引っかからずにゼロ距離で背後を取り、ヤミノミヤノミコト様の加護を受けたこの肉体に刃を突き立ててパワーのみでぶっ飛ばす事を可能とする時点で神の枠を超えたバケモノだ。
あの小娘2匹より先にこっちを……と戦略的思考するよりも前に眼前に迫っていた足。
『ゴァァぁぁぁぁァ!! あガァぁァぁ!!』
闇乃宮第五闘戯場に突如出現した白袴の鬼人はダイビングめりこみ膝蹴りをカゼネコの腹におみまい。
そのまま奇声を上げて髪を振り乱しながら敵の首を掴んで石柱に叩きつけ、黒雷拳で滅多打ちにし始める。
【第42話につづく】
『ほほほ、流石は御鐵院の血筋……わしの十八番である空中戦でにここまでついて来れる者は初めてですぞ』
「それはありがとう、仙猫殿」
神紋弓を核として風マヨイガエレメントを物質化形成した野太刀を振り回し続け、汗だくになった茜は浮遊状態を維持したまま応じる。
『七天賦技『空』のみならず神紋武具を核として魔力そのものを武器化させる2つの高度技術を併用して用いれるとは……その大弓含め上級マヨイガ装備系統で補正ありだとしてもやはりわしの眼に狂いはなかったようですな』
満足気にほくそ笑みながら顎髭を満足気にそうになでつけるカゼネコ。
『貴女を主様の下へ行かせるわけにはいきませぬ、ここで死んでもらいましょうぞ!!』
「!!」
雲もろとも茜の眼前から消えたカゼネコ。
『ハイディフェン……』
敵を見失うと言う自身の置かれた危険な状況を理解し、とっさにサポートスキルで自身のダメージ減少を図ろうとした茜の腹に強烈な打撃が打ち込まれる。
「がっ……」
ノンゴールド社CEOとしての職務を果たす日々の中でも続けられていた筋トレと言う努力で維持されていた頑強な乙女腹筋にめり込むカゼネコの一撃。
杖を逆さに持ち替え、風エレメントプラス強化済みの硬い木コブをフルスイングで叩きこむと言う内部破壊衝撃をモロに食らった茜はそのまま頭を下にして尖った岩山に落ちて行く。
『まずは一人……ふぉふぉふぉ』
この高度で地面に叩きつけられれば即死……御鐵院の風神紋使いの始末に成功したカゼネコは雲に乗ったままほくそ笑む。
(くそっ、私もここまでか…… !!)
生身であれば内臓破裂レベルの大ダメージで『空』を強制解除された茜。
自身と同じ風マヨイガエレメント使いでありながら桁違いの強敵であるカゼネコと同じ土俵に立つべく自身も初めての高度戦闘技術を2つも用いて敵と一騎打ちに持ち込むことに成功した茜。
だがエレメント技を維持して切り結ぶのに必死のあまり落下すれば即死の高度まで誘い込まれていた事に気が付くも遅し……激痛のあまり声も出ない茜は頭を下にして箱庭の大地にフリーフォールしていく。
「カゼノモノ様!!」
「らっ、ライちゃん!?」
式神技で生成した黒雲に乗って、こちらに一直線に向かってくる虎チャイナドレスの式神ライ。
いつもは首に下げている専用武器である太鼓のバチを黒雲の先端に突き立て、その間に乗せた太鼓本体をグルグル回しながら黒雲をぶっ飛ばしてくる様はかの有名な蒸気船の白黒カートゥーンアニメをオーバーラップさせる。
「ぼふんっ!!」
「カゼノモノ様、つかまってください!!」
重症を負った茜を黒雲でキャッチした式神ライはすぐに方向転換し、雲の上に立ったまま頭上でにやつく敵から猛スピードで距離を取る。
『ふおふおふお、式神の分際でやりますな……だが無駄、『寄風』』
カゼネコが掌を向けて詠唱するや否や引き寄せるように渦巻く大気。
全速力を維持しているにも関わらずそれに掴まれたライの黒雲はずりずりとバックし始める。
『風神紋発動!! ウインドオーバードライブ!! ウインドブースター!!』
このままではライちゃんも自分も助からない。サポートスキル『自動回復・速』でエレメント技が使える程度に回復していた茜はすぐに風神紋を発動させ、吸い込み力の逆噴射に全力を注ぐものの後退が完全に止まる気配は無い。
『ふははは、無駄な足掻きを!! お二方とも主様の下へは行かせませぬ……ぞ?』
雷エレメント使いのドウシ様はとにかく、その他2匹の娘は袋の中のネズミ。
高所で魔力切れに追い込んで落下死させるもよし、十分に近づけてから頭を杖で叩き割ってもよし……そんな事を考えつつ風エレメント技を維持していたその時だった。
さくっ……背中から鈍い刃物を肉体に裂け入れられたような違和感にカゼネコは後ろを向く。
『ョぉ』
自身の背中に幻覚ではない刃を突き立てる真っ黒な眼に長い白髪で上半身裸の何かは鬼のような牙を見せつけながらニヤリと笑う。
『にやっ……』
『シね』
そのまま拳を顔面に叩きこまれたカゼネコ。
『ぎにゃあぁぁぁぁぁ!!』
その化け物じみた力で雲から叩き落とされるのみならず、ものすごい加速状態ですっ飛ばされたカゼネコは受け身を取る余裕もなく天然の岩柱に激突して大きなひび割れが入る。
『ぐっ、にゃっ……』
何者かはわからないが探知力とテクニカルな戦闘に特化した風エレメント熟達者である自身の感知網に全く引っかからずにゼロ距離で背後を取り、ヤミノミヤノミコト様の加護を受けたこの肉体に刃を突き立ててパワーのみでぶっ飛ばす事を可能とする時点で神の枠を超えたバケモノだ。
あの小娘2匹より先にこっちを……と戦略的思考するよりも前に眼前に迫っていた足。
『ゴァァぁぁぁぁァ!! あガァぁァぁ!!』
闇乃宮第五闘戯場に突如出現した白袴の鬼人はダイビングめりこみ膝蹴りをカゼネコの腹におみまい。
そのまま奇声を上げて髪を振り乱しながら敵の首を掴んで石柱に叩きつけ、黒雷拳で滅多打ちにし始める。
【第42話につづく】
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