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第六章:『闇乃宮五ノ闘戯場/風獣カゼネコ』
【第42話】
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「ちよっと、ライちゃん!! アレは何なの?」
敵の攻撃から逃れて地表まで無事に到達した黒雲上に寝かされたまま式神ライの治療を受ける茜。
その遥か頭上で荒々しい声を上げながら第五闘戯場の主たるカゼネコの頭を掴んだまま何発も力任せに石柱に叩きつけ、禍々しい黒雷を帯びた拳で滅茶苦茶に殴りまくるモノの正体がわからない茜はライに問う。
「あれはナルカミノミヤ様でございます」
「あれが!? どう見てもアレは人間じゃないじゃないのよ!!……まあそもそも武神なんだけど。あいつまさか『ば―さ―化』みたいな技を使えたの!?」
北欧神話界隈で有名(?)だと言う理性を失い超パワーのままに敵味方関係なく大暴れする『狂戦士』なる存在について英里子から聞いていた茜はイメージそのままのそれと化したナルカミノミヤに驚きの声を上げる。
「私もわからないのですが、ナルカミノミヤ様は銅剣のような物をお持ちでして……その封をお解きになったのです。それであのような事におなりに……」
「銅剣?」
震える声で解説するライと困惑するばかりの茜。
そんな状況下で勝手に開く茜のマヨイガ探索ステータスモニター。
『新着通知あり:1件』
「新着通知だと!?」
10数年ぶりだが、これはかつてオカルト研究会マヨイガ探索隊として五武神に挑んだ際に何度もお世話になったアレだと察した茜は新着メッセージを開く。
『ゴブガミ先生のマヨイガ探索tip vol.12
かつて良い子だった諸君、10数年ぶりだね!!
妖刀って知ってるかい? 瘴封刃・サカサはまさにそれであり、我らが宿敵・死巫女ルイの膨大な力を取り込んで宿した恐ろしい武器だ!!
一度封を解かれれば、使い手の魂力を増幅させて『ば―さ―化あ』し、最終的には全ての魔力と生命力を吸い上げて消滅に至らせる……。
だから道端で見つけても絶対に触っちゃだめだぞ、ゴブガミ先生とのお約束だ!!
P.S 代筆ありがとう、 ミズノミヤ君』
「……ははっ」
呉井が大好きなヒャッハーモヒカンだらけの劇画コミック世紀末世界じゃあるまいしそんなのが道端に落ちててたまるか。
こんな状況下で見た久方ぶりのゴブガミ節に茜は思わず吹き出す。
「カゼノモノ様、私達はどうすれば……いいのでしょうか?」
良くも悪くも空気を読まない主からのメッセージに眷族式神として戸惑うばかりのライ。
『ゴァァァァァ、ォァァァァ!!』
ナルカミノミヤだったモノの咆嘩が第五闘戯場に響く。
闇乃宮最深部・死巫女ルイの間。
「なんて酷い……」
自身の水神紋を封じている帯と同じ力で暴走したナルカミノミヤが第五闘戯場を破壊していく様を銅鏡で見せられている美香。
『まさかあの子がまだアレを持っておったとは……どこを探しても見つからなかったわけだわねぇ』
「ねえ、ルイ……」
『しかし数百年に及ぶ封のせいでかなりの力を失っているようじや……あの状態でわらわの下に還って来たところで使い物にならぬ』
「ねぇ、ルイってば……」
(美香ちゃん、ストップや!! もう話しかけちゃアカン!!)
(華咲殿、おやめくだ……ぎゃあああああ!!)
ヒトダマ英里子もろとも華咲式無手勝流ボックスシェイカーで処される神魂五武神長チノミヤノミコト様。
『さすれば……』
「こらぁ、いつまでも無視すんな!! 私の話を聞けえ!!」
座敷牢の格子を掴んで大声で叫ぶ美香に思わず耳を抑える死巫女ルイ。
『わらわにこのような無礼をはたらくとは……ゆるふわたおやかな見た目に反してサンの試練を達成しただけはある『ばあばりあん』な女傑ぞよ』
「あら、最近のナウいヤングのお言葉をご存知なのねルイさん!!
コレさえ封じられていなければ貴女にとっておきのあのお仕置きを味わわせてあげていたのに……ねえ、英里子ちゃん?」
(うわぁ、あんた人でなしだわあ……神をも恐れぬとはよう言うたものやねぇ……。
ウチ、今この瞬間よりも生身の人間じゃのうて良かったと思う事は一生起こらへんやろうな)
自身を閉じ込めた虫かごを見下ろしつつにたぁとサディスティックに笑う美香が言わんとする事を察して背筋が寒くなる英里子。
『うむ、わらわも人の子じゃ。血を分けた弟たるドウシを見殺しにする気は無い……』
『七魂(セブンソウル):肆乃魂』
「それは!!」
詠唱と共にヤミノミヤノミコトの右手内に出現し、ろうそくの炎のように揺らめく4個の小黒塊。
「ふむ、これだけあれば十分であろう……」
そう言いつつ左手の指先で足下をそろりとなぞり、闇渦を作り出したヤミノミヤノミコトは小黒塊の1つをつまんでその中にぽとりと落とし入れた。
【第43話に続く】
敵の攻撃から逃れて地表まで無事に到達した黒雲上に寝かされたまま式神ライの治療を受ける茜。
その遥か頭上で荒々しい声を上げながら第五闘戯場の主たるカゼネコの頭を掴んだまま何発も力任せに石柱に叩きつけ、禍々しい黒雷を帯びた拳で滅茶苦茶に殴りまくるモノの正体がわからない茜はライに問う。
「あれはナルカミノミヤ様でございます」
「あれが!? どう見てもアレは人間じゃないじゃないのよ!!……まあそもそも武神なんだけど。あいつまさか『ば―さ―化』みたいな技を使えたの!?」
北欧神話界隈で有名(?)だと言う理性を失い超パワーのままに敵味方関係なく大暴れする『狂戦士』なる存在について英里子から聞いていた茜はイメージそのままのそれと化したナルカミノミヤに驚きの声を上げる。
「私もわからないのですが、ナルカミノミヤ様は銅剣のような物をお持ちでして……その封をお解きになったのです。それであのような事におなりに……」
「銅剣?」
震える声で解説するライと困惑するばかりの茜。
そんな状況下で勝手に開く茜のマヨイガ探索ステータスモニター。
『新着通知あり:1件』
「新着通知だと!?」
10数年ぶりだが、これはかつてオカルト研究会マヨイガ探索隊として五武神に挑んだ際に何度もお世話になったアレだと察した茜は新着メッセージを開く。
『ゴブガミ先生のマヨイガ探索tip vol.12
かつて良い子だった諸君、10数年ぶりだね!!
妖刀って知ってるかい? 瘴封刃・サカサはまさにそれであり、我らが宿敵・死巫女ルイの膨大な力を取り込んで宿した恐ろしい武器だ!!
一度封を解かれれば、使い手の魂力を増幅させて『ば―さ―化あ』し、最終的には全ての魔力と生命力を吸い上げて消滅に至らせる……。
だから道端で見つけても絶対に触っちゃだめだぞ、ゴブガミ先生とのお約束だ!!
P.S 代筆ありがとう、 ミズノミヤ君』
「……ははっ」
呉井が大好きなヒャッハーモヒカンだらけの劇画コミック世紀末世界じゃあるまいしそんなのが道端に落ちててたまるか。
こんな状況下で見た久方ぶりのゴブガミ節に茜は思わず吹き出す。
「カゼノモノ様、私達はどうすれば……いいのでしょうか?」
良くも悪くも空気を読まない主からのメッセージに眷族式神として戸惑うばかりのライ。
『ゴァァァァァ、ォァァァァ!!』
ナルカミノミヤだったモノの咆嘩が第五闘戯場に響く。
闇乃宮最深部・死巫女ルイの間。
「なんて酷い……」
自身の水神紋を封じている帯と同じ力で暴走したナルカミノミヤが第五闘戯場を破壊していく様を銅鏡で見せられている美香。
『まさかあの子がまだアレを持っておったとは……どこを探しても見つからなかったわけだわねぇ』
「ねえ、ルイ……」
『しかし数百年に及ぶ封のせいでかなりの力を失っているようじや……あの状態でわらわの下に還って来たところで使い物にならぬ』
「ねぇ、ルイってば……」
(美香ちゃん、ストップや!! もう話しかけちゃアカン!!)
(華咲殿、おやめくだ……ぎゃあああああ!!)
ヒトダマ英里子もろとも華咲式無手勝流ボックスシェイカーで処される神魂五武神長チノミヤノミコト様。
『さすれば……』
「こらぁ、いつまでも無視すんな!! 私の話を聞けえ!!」
座敷牢の格子を掴んで大声で叫ぶ美香に思わず耳を抑える死巫女ルイ。
『わらわにこのような無礼をはたらくとは……ゆるふわたおやかな見た目に反してサンの試練を達成しただけはある『ばあばりあん』な女傑ぞよ』
「あら、最近のナウいヤングのお言葉をご存知なのねルイさん!!
コレさえ封じられていなければ貴女にとっておきのあのお仕置きを味わわせてあげていたのに……ねえ、英里子ちゃん?」
(うわぁ、あんた人でなしだわあ……神をも恐れぬとはよう言うたものやねぇ……。
ウチ、今この瞬間よりも生身の人間じゃのうて良かったと思う事は一生起こらへんやろうな)
自身を閉じ込めた虫かごを見下ろしつつにたぁとサディスティックに笑う美香が言わんとする事を察して背筋が寒くなる英里子。
『うむ、わらわも人の子じゃ。血を分けた弟たるドウシを見殺しにする気は無い……』
『七魂(セブンソウル):肆乃魂』
「それは!!」
詠唱と共にヤミノミヤノミコトの右手内に出現し、ろうそくの炎のように揺らめく4個の小黒塊。
「ふむ、これだけあれば十分であろう……」
そう言いつつ左手の指先で足下をそろりとなぞり、闇渦を作り出したヤミノミヤノミコトは小黒塊の1つをつまんでその中にぽとりと落とし入れた。
【第43話に続く】
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追記:2025/09/20
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