今日も、元勇者が来るんだが!?

SIYO

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第4話  300年前の戦い

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300年前の歪み

グラールは玉座から立ち上がり、懐からオーブを取り出した。そのオーブは、記憶を投影する魔具である。

「お主、最強の勇者カルレインに出会う300年前の話だ。当時、人間の勢力が他の種族を圧倒し始め、世界は大きく変わろうとしていた時代だった。」

オーブから淡い光が放たれ、部屋中に映像が広がる。そこには、荒れ果てた大地と巨大なゴーレムが映し出されていた。

「我々魔神族は自然や野生動物を保護し、人間と敵対することもあった。しかし、女神カーンと共に人間同士の争いを抑えるため、“悪役”として振る舞ったのだ。」

「悪役?」

「そうだ。人間同士の争いを減らすため、女神カーンは選ばれし者を勇者とし、我々魔神族を倒す存在として与えた。だが、それは表向きの話だ。」

映像には、ゴーレムが草原を進む様子が映る。それは土壌浄化を目的とした行動だったが、人間には恐怖に映ったのだ。

「してもいない災害や疫病、魔物の襲撃を我々のせいにし、人類を結束させる材料にした。だが、それが均衡を保つならば受け入れるしかなかったのだ。」

カルレインは腕を組んで黙って聞いている。グラールは深い溜息をつき、続けた。

「しかし、ある時から異変が始まった。」

映像が変わり、火に包まれた魔王城が映し出される。そこには、不気味な軍勢が押し寄せていた。

「それが……300年前、魔王城を襲った異形の軍勢だ。」

グラールは険しい表情で語る。

「奴らは人間でも魔物でもない。“歪んだ存在”だった。」

映像には、両手に鈍く光る剣を持つ者、地を這う者、さらには背後から魔法を放つ者たちが映る。その中で一際異様なオーラを放つリーダーが握っていたのは、聖剣だった。

「その聖剣……グルーシルグ。」

カルレインが驚愕の声を上げる。

「そうだ。本来、人間を導くために女神カーンが与えたはずの聖剣だ。それがなぜ、奴らの手に渡ったのか……。」

「その後どうなった?」

カルレインが静かに問うと、グラールは映像を指差した。

「そこに現れたのが、魔神クレインだ。」

映像には、冷気を纏ったクレインが現れ、軍勢を迎え撃つ姿が映し出されていた。

魔神クレインの奮闘

映像は冷気を纏った魔神クレインが戦場に降り立つ場面へと移った。
灰色の空、燃え盛る魔王城、不気味な軍勢が次々と押し寄せる中、クレインが静かに佇んでいる。

「こいつぁ……何事だ?」

彼の低い声が響くと、配下の魔物たちが慌てて駆け寄る。

「クレイン様!襲撃です!魔王城が完全に包囲され──ぐっ!」

魔物の腹部を何かが突き破った。尾のように伸びる剣。それを握っていたのは、ボロボロの衣服を纏った異形の者だった。
剣の刀身は液体のように滑らかに形を変えている。

「……その剣、聖剣グルーシルグ……か。」

クレインの目が鋭く細められる。周囲の空気が一瞬で冷え込み、氷の結晶がゆっくりと舞い始めた。
その異形が反応したかのように、狂ったような笑い声を上げ、軍勢が一斉に動き出す。

「ケケケケケッ!」

瞬く間に、火の玉がクレインへと向かって飛ぶ。

「火の粉如きで俺を殺せると思ったか。」

その声と共に、クレインの放った冷気が火の玉を飲み込み、凍りつかせた。
彼の周囲には霧のような冷気が漂い始める。

「さあ、冷たく踊り死ね」



ナイトメア・スノープリズン Level 30***×99

クレインが杖を振り上げると、辺りは真っ白な濃霧に包まれた。異形たちは一寸先も見えぬ闇に包まれ、動きを止める。

異形たちは錯乱しながら防御魔法を張り巡らせる。しかし、その刹那──四方八方から巨大な氷柱が突き刺さった。
防御魔法の層を突破する冷気。逃げ惑う異形たち。

「逃げ惑うのは馬鹿でもできる」

クレインが静かに言いながら杖を槍へと変える。頭上には白く輝く魔法陣が浮かび、その中で氷の槍が無数に形成されていた。

「無慈悲な葬撃 Level 1300+389×30」

槍が宇宙の闇のような冷たい輝きを放ち、防御を張る異形たちへと降り注ぐ。防御魔法の層が破壊され、異形たちは次々と砕け散った。

しかし、聖剣グルーシルグを握る異形のリーダーだけは、なおも立ち上がり、虚ろな眼差しのまま剣を構える。

聖剣グルーシルグ 奥義・千手首斬り搦め

刀身が蜘蛛の糸のように無数に枝分かれし、霧の中を鋭く走り始める。
「面倒な技を……。」

クレインが低く呟き、全身に冷気を纏った瞬間、無数の刃が彼の足元を捕らえた。糸状の刃が絡みつき、逃げ場をなくす。

「あらま…!」

クレインは槍を振り、刃を砕こうとするが、聖剣の力は想像以上に強力だった。絡みつく刃は引き裂かんとする代わりに、クレインを宙に持ち上げ、地面に叩きつける。

ガン! ガン! ガン!

何度も地面に叩きつけられ、氷の鎧に亀裂が入る。だが、クレインは笑みを浮かべていた。

「……やるじゃん…本気出しちゃおっかな」

クレインの鎧が砕け散る瞬間、彼の姿が氷と共に崩れた。

「ケケケケケッ!」

異形が勝利を確信したかのように笑い声を上げるが、その声はすぐに凍りついた。

「それはただの氷の分身だけどな」

虚空に響くクレインの声。次の瞬間、異形の背後に黒紫の光が走る。

無慈悲な葬撃 最終式──Level 1300+∞

氷の槍が異形のリーダーを正確に貫く。
一瞬の静寂の後、聖剣グルーシルグは呪いを解かれたかのように力を失い、異形の身体は崩れ落ちた。

「これで……静かになる。」

クレインは大きく息を吐きながら、聖剣を見下ろした。

「だが、どうして聖剣があの者共に渡ったのか……。」

クレインはその場に結界を張り、聖剣を封印した。

映像が途切れ、再び静寂が部屋を支配する。
グラールは重く深いため息をつきながら呟いた。

「これが300年前に起きた“歪み”だ。人間を導くはずの聖剣が、何者かの手によって異形の軍勢に渡った。それが何を意味するか……。」

カルレインが腕を組み、考え込む。

「なるほど……その“歪み”が今のラゼルダに繋がっているわけじゃな。」

シャルディが眉をひそめる。

「でも、女神がどうして……?」

カルレインがカメラの写真をもう一度見せる。そこには、光と闇が混ざり合うようなラゼルダの姿が写っていた。

「女神ラゼルダが無差別に祝福をばら撒くのは、おそらく世界のバランスそのものを破壊しようとしているのだろう。」

グラールは玉座に深く腰掛け、低く呟いた。

「その歪みが続く限り、我が復活は早まる。勇者も増え、やがてこの世界は崩壊するだろう。」

その時、扉が勢いよく開いた。

「おい、グラール!どうやら面倒な話になりそうだな!」

立っていたのは、氷結の魔神クレイン。

「まったく……また厄介事か。」

カルレインが微笑みながら立ち上がる。

「愉快愉快」

こうして、新たな戦いの幕が上がろうとしていた──。
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