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第3話 歪み
しおりを挟む吾輩は猫である。名はキュキュト。
勇者に挑み敗北した後、普通の猫として余生を過ごしていた。しかし、魔王様の復活を感じ取り、魔王城に来てみたのだが……。
「勇ニャカルレイン!?ニャンでココに!?」
「おや、お前さんは猫魔神キュキュトかい?」
キュキュトは冷汗を流しながら後ずさる。
「ニャんで勇ニャが魔王城に?!」
毛を逆立て、シャー!と威嚇するキュキュト。その目の前に茶色い球体が転がってきた。
「!?」
恐る恐る匂いを嗅いだ瞬間、キュキュトは酔ったかのように喉を鳴らしながら球体と戯れ始めた。
「こ、この匂いだけには逆らえニャイ……!」
マタタビボール Level 1 (新品)
カルレインは微笑みながら、キュキュトの様子を眺めていた。そこへ魔王グラールとシャルディがやってきた。
グラールがアラレもない姿のキュキュトを見て笑う。
「猫魔神キュキュトも普通の猫と変わらんか。」
グラールの声を聞いて我に返ったキュキュトは、涎を拭きながら頭を下げた。
「目を覚まされたのですニャ、魔王グラール様。」
「ああ、お前も元気そうだな。」
キュキュトは頭を下げたまま、片手でマタタビボールを転がしていた。
「ニャゼ、勇ニャがこの城に?」
シャルディが串団子を頬張りながら答えた。
「隣に引っ越してきたんです。」
「へ?」
キュキュトは頷く魔王グラールを見て手が止まった。
「毎日毎日、訪ねてくるのだ。」
「勇ニャカルレインの目的は?」
「本人に聞け。」
気付けばキュキュトはカルレインの膝の上にいた。
「よしよし、今度はカツオの缶詰を持ってくるかね。」
「キャツオ!?」
カツオという猫にとってはパワーワードだったのか、キュキュトの喉が鳴りまくる。
「ハニャ!?マズイ!魔王さま!用事を思い出したので帰りますニャ!」
魔神キュキュトは慌てて魔王城を後にした。
キュキュトが去った後、グラールは玉座に腰を掛け、気怠そうにカルレインに質問を投げた。
「今日は何の用だ?」
「最近の事件は耳に入っているかね?」
カルレインが新聞の記事を見せる。
シャルディが新聞を受け取り、頷いた。
「もちろんです。周辺の村や町から若者が突如消えて、勇者になる者、消息を絶つ者がいるという…」
魔王グラールが目覚める三年前から起こり始めた行方不明事件は、王都でも把握されており、新たな勇者の増加も確認されている。
新聞の記事には大きくこう書かれていた。
「魔王の復活の予兆?」
「おいおい、新たな勇者が増えているだと?」
「犯罪者も、女神の祝福を授かる者も現れ、それが今問題となっている。」
「王都は何をしている?」
「勇者討伐隊を結成して、犯罪組織『アルカナム』と戦っている。」
「まさか、勇者が犯罪組織に?」
「うむ。」
グラールは苦虫を潰したような表情をしながら、深いため息をついた。予想通りの反応にカルレインはキュキュトの抜け毛を払いながら微笑む。
「今や、魔神族よりも勇者が危険視されているのじゃ。」
「それが行方不明事件となんの関係が?」
グラールの問いにカルレインの表情が険しくなる。
「女神ラゼルダが動き出したのじゃ。」
シャルディが首を傾げた。
「それが何か問題でも?」
グラールは玉座に深く座り直しながら語り始めた。
「女神カーンは地上には決して関与しない立場を保っているが、彼女の取り巻き連中の“自称女神”たちは別だ。」
「取り巻き連中?」
「女神と名乗ってはいるが、そもそも種族が違う。あれらは天使族だ。」
カルレインは首にぶら下げたカメラを起動させ、数枚の写真を見せた。
「狂った女神と呼ばれる女神ラゼルダが、勇者としての資格の有無を測らず、祝福を無差別に与える瞬間を捉えたのじゃ。」
その数枚の写真から、グラールは神聖な力とは真逆の、禍々しい力を感じ取った。
「やはり……あの時の違和感の正体がコレだったわけだ。」
カルレインが首を傾げた。
「あの時とは?」
グラールは徐に透明なオーブを掲げた。
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