今日も、元勇者が来るんだが!?

SIYO

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3話「ご近所さん」

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部屋の窓から朝日が差し込んできた。
勇者に倒されてから約50年が経ち。
復活を遂げた私の朝の楽しみ方といえば、魔王城で栽培した茶葉で紅茶を作り、窓から景色を眺めながら紅茶を飲むこ…ピンポーン!

「ピンポーン?」
50年という月日は様々な便利な物が生まれたらしい
今のはインターホンで、執事兼部下のシャルディーが王都で買い付けた代物だとか。

尋ねてきた相手の顔を見ることもでき、会話も出来る。なんと扉の開錠まで出来るのだ!

「元勇者のカルレインが来てますよ」とシャルディーが開錠のボタンを押そうとするのを阻止する。
「いやいやいや!ここ魔王城だよ?しかも、カルレインに倒されたんだよ?ワ、タ、シ!」
「魔王である、あなたがビビってるんですか?」
「いや、ビビるだろうがッ!」
元勇者カルレインは持っていたお菓子を、インターホンに映るように持ち上げた。
「町内会でお菓子たくさんもらったから、一緒にお茶でもどうですかな?どら焼きとかありますけども」
どら焼きと聞いたシャルディーは、長い耳をピクッと動かし、「どら焼きですか?お入りください」と開錠ボタンを魔王グラールが止めるより早く押した。
シャルディーがどら焼きに目が無いのを忘れていた。
シャルディーの案内で魔王城を周る。
「外観だけでも凄いのに玉座以外の内装も素晴らしいですな!」
内装の修復を行った、シャルディーは腰に手を当て
照れくさそうに「玉座の高硬度のザレンス石を修復に使いましたので、当然です!」
「ほぉ!高級石材を!これは珍しい!」
二人の会話の後ろでグラールは呆れながら言った。
「あれは私の玉座なん…ですけども…」
カルレインは首にぶら下げた物体を天井に向けて閃光を発した。
「そ、それは一体なんだ!?」とグラールが前のめりになりながら食いつく。
カルレインは首を傾げた。
「カメラを見るのは初めてですかな?」とカメラをグラールに向けて撮影する。
眩しいフラッシュで目を閉じた間抜けな顔がシャルディーの笑いのツボを押した。
「こ、こんな修学旅行に一人は居る男の子みたいなw」

恥ずかしいことなのか?とグラールは困惑しながらも頬を赤らめた。
カルレインはカメラの説明書を開いてみせた。
「これは王都で買ったカメラと呼ばれる機械なんですよ」

景色、人、見た物を写真と呼ばれるもので保存出来る代物らしい。しかも!動画という映像にも残せるというのだ!!

「それより!勇者カルレインよ!何用で魔王城に来た?」
「そのことだが、隣に引っ越してきたから挨拶にとな」
「え?」
シャルディーは知っていたかのような表情で、どら焼きを頬張っていた。
「お隣さんですね♪」
「ですね♪じゃないぞ!本当に?!そんな空き地あったか?」
グラールが景色を一望できるカーテンを開くと、質素な一軒家が建っていた。

「!?」

1-2 「決着」

元勇者カルレインが魔王城に訪れてから数時間が経過し、二人はチェスをしていた。
「ほれ、チェックメイト」
「何!?そんな馬鹿な!」
魔王グラールは戦闘ではなく得意なチェスならと、元勇者カルレインに戦いを挑んだが…。

130戦中130敗
「ほい、チェックメイト」
「ぐぅ!!シャルディー!紅茶を頼む!」
呆れて返事さえ返さなくなったシャルディーに、密かに「勇者にはバジリスクの毒を混ぜた紅茶を」と伝えた。
「ハイハイ」と呆れた母親のようなリアクションをするシャルディー。

131戦中…
「ほお、さすが魔王。見事な作戦チェックメイト」
「ほあッ!!勝てないだと?」
そこへシャルディーが二人に紅茶を運んできた。
毒が混ぜられた紅茶を渡されたカルレイン。
角砂糖を一つ入れ、ミルクをほんの少しだけ入れて混ぜた。
胸の高鳴りに、グラールは紅茶を飲みがら窓の外を見て冷静を装う。
カルレインがカップを持ち口に運ぶのを、グラールは見逃さなかった。
「うッッ!」とカルレインが言葉を発した。
勝ちを確信したグラールは立ち上がり決め台詞を吐いた。
「チェックメイトーー!」
「美味い!これはなんという種類の茶葉ですか?」
「へ?自家栽培した「ウルグス」だ…」と言いながら、ゆっくりと腰を降ろす。
嘘だろ?バジリスクの毒が効かない?
毒を入れ忘れたのか!?とシャルディーを見るが長い髪を揺らしながら頭を横に振った。
それとも効果が出るまで時間が掛かるのか?
ならば、待とう。待とうじゃないか!

4時間後…
「さてと、そろそろ夕飯の時間じゃから帰りますね」
「いや、もう来なくていい」
「ん?なんか言いましたか?」
シャルディーがグラールの前に出て笑顔で見送った。
「またどら焼きをお持ちになって、遊びにいらして下さいね」
「次は王都で限定のどら焼きを持ってくるねぇ」
シャルディーは親指を立ててニヤッと笑った。
「もちろん待ってます!」
カルレインは二人にお辞儀すると普通に家に帰る。
結果、グラールは一度もチェスで勝つことは叶わなかった。

元勇者カルレインが帰った後、二人は飲み干されたカップを眺めていた。予備で毒が入れられた紅茶を手に取り、グラールは唾を飲んだ。
「消費期限が切れてたのか?」
シャルディーは毒の瓶を眺めながら呟く。
「毒に消費期限なんてありますか?」
グラールは念の為にカルレインと同じく、角砂糖を一つ、ミルクをほんの少しいれ混ぜる。
「解毒薬を用意しといてくれ」

恐る恐る口に運び飲み干した。

「ん?やっぱり消費期限…グボァ!!」
真っ青な顔をして地面に崩れ足をバタバタしながら、お腹を抑えて泣き叫ぶ。
「えぇぇ!彼奴はこれを平然とぉぉぉぉ!!」
ジタバタする魔王。シャルディーの目には殺虫剤を撒かれ苦しむゴキブリにしか見えていなかった。
「シャ、シャルディー…解毒薬を…」
「ハイハイ」
粉状の解毒薬を口に入れた途端にグラールは涙目になった。
「うわぁ!めちゃくちゃ苦いじゃん、これ!」
「良薬は口に苦しって言いますよ」

その頃、カルレインの自宅では…。
日課の体調管理で体内温度を測っていた。
ピピピッ!
「どれどれ。36.5°平熱じゃな」
本人は気付いていないが、カルレインには毒無効化の加護があった。

続くッ!
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