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第5章 落穽下石

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静先輩も結永先輩も元々知ってた?

だって静先輩たちと出会ってからは一度もあんなことはしてない。
写真だってあの一枚以外、出回ってる様子もなかった。
静先輩だって、何も知らないみたいで・・・・・・。

でも、そんなことより。
「なんで・・・・・・」
「それは、その・・・」
「なんで‼︎ こんな汚いって、わかってて、なんでさわれるの・・・・・・」

わかんない‼︎
わかんないよ‼︎

静先輩に触れてるこの状況についに耐えられなくなって、精一杯の力で押し退けて離れる。
「弥桜、それは」
「だめっ、もう触んないで‼︎」
それでも静先輩は手を伸ばしてくるから、思い切り跳ね除けて後ずさる。
「な、ちょっと落ち着け」

「わかってたのに・・・、静先輩が汚れちゃうって、でも、我慢出来なかった」
嫌だった、ずっと、ずっと、心の奥で引っかかってたんだ。
でも、いろんなことがあって、一人で外に出れなくて、怖くて、静先輩から離れられなくなっちゃって。
わかってたのに、触れることを、触ってもらうことを、我慢出来なかった。

恐怖と罪悪感で一杯で、がくがく震える体を抱きしめてその場に蹲る。
「そんなこと誰も思ってないから」

「ごめんなさい・・・、ごめんなさい・・・・・・」
もう静先輩の声も聞こえてなかった。

何よりもこれだけは知られたくなかった。
絶対に絶対に嫌だったのに。

「弥桜」
「いやっ、もうこんな体なんて、なくなってしまえばいいのに」
「ダメだっ、弥桜くん‼︎ 静、押さえて」

抱きしめている腕に爪を立てて、思い切り力を込める。

でもすぐに二人に手を取られて、それ以上何も出来なくなった。
血が滲んでるし痛いけど、今はそんなことどうでもよかった。
こんなことして何にもならないのはわかってるけど、何をしても気が治まらない。
「結永、洗面所の上の棚に救急箱あるから持ってきてくれ」

「離して・・・、離してよ・・・、触んないで」
ずっと嫌だって言ってるのに全然離してくれない。
どうしても触られたくなくて全力で暴れるけどびくともしないし、腕の傷より握られてる手首の方が痛いくらいだった。

「弥桜、大丈夫だから。俺も結永も弥桜が汚れてるだなんて思ってないから」
静先輩が何を言ってくれても、僕自身がそうは思えなかった。

もう何も信じられなかった。

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