116 / 151
第5章 落穽下石
113
しおりを挟む静先輩も結永先輩も元々知ってた?
だって静先輩たちと出会ってからは一度もあんなことはしてない。
写真だってあの一枚以外、出回ってる様子もなかった。
静先輩だって、何も知らないみたいで・・・・・・。
でも、そんなことより。
「なんで・・・・・・」
「それは、その・・・」
「なんで‼︎ こんな汚いって、わかってて、なんで触れるの・・・・・・」
わかんない‼︎
わかんないよ‼︎
静先輩に触れてるこの状況についに耐えられなくなって、精一杯の力で押し退けて離れる。
「弥桜、それは」
「だめっ、もう触んないで‼︎」
それでも静先輩は手を伸ばしてくるから、思い切り跳ね除けて後ずさる。
「な、ちょっと落ち着け」
「わかってたのに・・・、静先輩が汚れちゃうって、でも、我慢出来なかった」
嫌だった、ずっと、ずっと、心の奥で引っかかってたんだ。
でも、いろんなことがあって、一人で外に出れなくて、怖くて、静先輩から離れられなくなっちゃって。
わかってたのに、触れることを、触ってもらうことを、我慢出来なかった。
恐怖と罪悪感で一杯で、がくがく震える体を抱きしめてその場に蹲る。
「そんなこと誰も思ってないから」
「ごめんなさい・・・、ごめんなさい・・・・・・」
もう静先輩の声も聞こえてなかった。
何よりもこれだけは知られたくなかった。
絶対に絶対に嫌だったのに。
「弥桜」
「いやっ、もうこんな体なんて、なくなってしまえばいいのに」
「ダメだっ、弥桜くん‼︎ 静、押さえて」
抱きしめている腕に爪を立てて、思い切り力を込める。
でもすぐに二人に手を取られて、それ以上何も出来なくなった。
血が滲んでるし痛いけど、今はそんなことどうでもよかった。
こんなことして何にもならないのはわかってるけど、何をしても気が治まらない。
「結永、洗面所の上の棚に救急箱あるから持ってきてくれ」
「離して・・・、離してよ・・・、触んないで」
ずっと嫌だって言ってるのに全然離してくれない。
どうしても触られたくなくて全力で暴れるけどびくともしないし、腕の傷より握られてる手首の方が痛いくらいだった。
「弥桜、大丈夫だから。俺も結永も弥桜が汚れてるだなんて思ってないから」
静先輩が何を言ってくれても、僕自身がそうは思えなかった。
もう何も信じられなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
250
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる