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彼と僕の猫事情
1 プロローグ
しおりを挟む『神様、どうかどうか、お願いします。彼を、カナを死なせないで。カナに自殺なんてさせないで下さい。オレはユイと約束したんだ。カナを幸せにするって。でも、やっぱり猫には出来なかった。だから、せめて俺の全てをあげるから、唯一度の願いを叶えて下さい。カナを死なせないで。幸せにして』
『そなたは確か、今日が20年目の生誕日であったな。では、よろしい。願いを一つだけ叶えてやろう。そなたを人間にする。ただし、そのカナとか言う人間が死ぬまでだ。後のことは自分でどうにかするように』
この声が本当に神様だったのかは分からない。
けど、今はこの言葉を信じて、落ちていく意識に身を委ねるしかない。
どうか、カナがまだ生きていますように。
どうか、カナを助けられますように。
ゆっくり落ちていく意識がもどかしくて、はやくはやくと焦る気持ちが止められない。
カナ、カナ、カナ・・・・・・。
意識が戻るのを感じて、無理矢理目をこじ開ける。
真っ暗で、でも猫の特性を引き継いでいるのか、夜目が利くから良く見える。
ここはよく見慣れた自宅の和室。
「ごめんね。ありがとう。今から逝くからね、唯叶、叶」
オレが寝かされている真後ろから、聞き慣れた声が、涙に濡れたその声が聞こえてきた。
慣れない体を一生懸命動かして後ろを振り向くと、服毒自殺をしようとするカナの後ろ姿があった。
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