彼と僕の猫事情

薔 薇埜(みずたで らの)

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彼と僕の猫事情

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「ねぇ!! 唯叶は、唯叶は帰って来るんだよね!? 唯叶は・・・・・・、唯叶は・・・・・・。だって、すぐ帰って来るって、言って・・・・・・」

目の前で聞こえた救急隊員の声に、気づいたカナが発した声は、尻すぼみに消えていった。
そしてさっきまで虚ろだった瞳から大粒の涙を零して、声を上げて泣き続けた。

その間もカナの腕の中にいたオレは、一部始終を見ていた。

救急隊員に付き添われて病院に連れて行かれたカナ。
体調に異変はないか調べられた後、カウンセリング室に通された。
そこでカウンセラーと一緒に警察から聞かされた話はこうだ。

『信号無視をして突っ込んできた大型トラックに跳ねられて即死だった』

他にも負傷者はいたらしいが、唯叶以外死者はゼロ。
運転手も捕まって、今は怪我人の対応に追われているのだと言う。

他にも色々説明してくれたが、カナにはほとんど何も聞こえていなかっただろう。
説明をし終えた警察が帰った後、カナはおもむろに立ち上がってオレを抱えた腕に力を込めると一言、家に帰ると言った。

「折原さん、今のあなたを1人にすることは出来ません」

そうきっぱり言われて、しかしそれに対して今のカナにはありえないような、はっきりとした力強い言葉と瞳で言い返した。

「僕はこれから、こいつと一緒に生きて行きます」

その言葉と瞳に渋々、わかりました、と頷いたカウンセラー。

「では、定期検診には必ず顔を見せてくださいね」

それだけ言うと、オレ達を帰してくれた。

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