赤いりんごは虫食いりんご 〜りんごが堕ちるのは木のすぐ下〜

くびのほきょう

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15歳

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アラスターへの愚痴を一通り喋り終わると、フレイアは真面目な表情に戻り話し始めた。

「私はこの世界がゲームの世界だとは思ってないわ。現実の世界として考えてる。それでも、ゲームと同じことは起きてるから、知っていたのにって後悔しないように予測できて防げる事件や事故は防ぎたいって思ってる。第一王子の婚約者で公爵令嬢の私にはその力もあると信じてる」

オリーブも背筋を正し真剣に聞いている事を示す。

「ゲームではヒロインが騎士科、魔法科、官吏科のどれを選ぶかで攻略対象は変わるのだけど、魔法科に進むとフェリクスとカイル殿下とラルフの3人のルートに絞られるの。魔法科を選んだ時点でゲームのストーリー上では入学前に偶然出会っていたカイル殿下に憧れて魔法科を選択したことになるのよ。マールムが魔法科でどうすごしているか探ったんだけど、ゲームでカイル殿下を攻略する時と同じ出来事が起きてる。積極的にカイル殿下に話しかけて、手作りのお菓子を渡したり準備室の掃除をしに通っているの」

フレイアから話を聞いただけのオリーブも、この世界がゲームの中だとは思っていない。それでも、パレルモ伯爵家の嫡子にも関わらず魔法科を選択したマールムの不可解さが、ゲームの通りにマールムがカイルに憧れて魔法科を選択したかもしれないと思わせてしまう。

「王族が攻略対象の場合、来月の林間学習で魔獣が発生してヒロインが歌姫だと周知されるイベントが起こる。私の権力を使って林間学習で予定していた山を変えてもらったわ。変えた先の山も、来月に向けて十分に魔獣討伐をしている。それでもゲームでは兄やラルフ、フェリクスを攻略している時には魔獣は出てこないのに、王族が攻略対象の時だけは出てくるっていうゲーム上の現象が怖い。この対策で完全に防げるかはわからないから、魔獣が出てしまった時に向けて騎士を多く配置して警備の強化もしている」

フレイアは椅子から立ち上がり、オリーブの肩に手を置き話し出した。

「もしもの話だけど、マールムも同じ転生者で、ゲームの知識があって、尚且つゲームの通りに王族を攻略しようとした場合、このイベントが起こらないとカイル殿下とは婚約できないって気づいていることになる。そうなると、私がイベントを阻止すると、ゲーム上にはいないはずのオリーブが転生者でゲームのストーリーを変えてると思ってオリーブを恨みを持つ可能性が高い」

オリーブは頭を縦に振り頷く。オリーブ、フレイア、ゴム男爵とすでに3人も転生者がいる。ジョナのように私益のために殺人を選択できる人間がいることも知っている。しかもそのジョナはマールムの母親だ。

「それにマールムはカイル殿下に恋している。サイラス殿下からカイル殿下がオリーブの頭をポンポンしたって聞いて驚いたわ。カイル殿下はゲーム上では林間学習までヒロインへすごい塩対応なの。林間学習後はむしろカイル殿下からグイグイくる感じに変わるんだけど、ゲームの終盤に頭ポンポンがあるかないかでエンドが変わってくるの。頭ポンポンされたら婚約してハッピーエンド。もしも、マールムがゲーム知識がある転生者なら、その頭ポンポンをオリーブがカイル殿下にされたことを知れば、オリーブのことを恨むと思う」

オリーブはカイルから頭を撫でられた感触を思い出して、赤面してしまう。

「カイル先生も私を好きだって思っていいんですか?」

「ゲームと同じように考えるならそうかもしれない。でも、私はオリーブにカイル殿下はオススメしない。自分の身なりだけじゃなく他人にも無頓着で魔法の研究にしか興味がなくて、婚約も結婚もしないで研究を続けている変人だから。……あと、それだけじゃなくて、実はドミニク様からカイル殿下には後腐れない愛人が沢山いるって聞いてるの」

愛人が沢山いても、それでも、優しく笑いかけてくれて頭を撫でてくれるならそれでもいい。

「これを聞いて”他に愛人がいても自分と一緒にいてくれるならいい”って思ったなら、本当にカイル殿下のことはやめときなさい。私は前世で34まで生きたおばさんよ。それは愛じゃなくて依存だって知っているわ。……オリーブはとりあえず本当にカイル殿下を好きなのか、それとも自分に優しくしてくれる大人の男が欲しいのかちゃんと考えて。私はゲームのイベントとして起こるかもしれない事故や事件を防ごうとしている。そこにはオリーブの安全も含まれているし、オリーブのことは友達だと思っている。不安に思うことでも恋のことでも良いから何でも相談してね」

フレイアは最後にそう言い、オリーブの部屋の外で待機していた護衛と侍女を引き連れて帰っていった。

前世の記憶があったとしても、ただ知識があるだけでそれは今世での経験にならないし、ちゃんと理解ができない場合もあるとオリーブは知っている。前世では34歳だったとしても、フレイアはオリーブと同じ15歳だ。

ゴムの違和感に気づいてゴム男爵が転生者だと知り、ゲームの知識から今後起きるかもしれない事件や事故を防ごうと活動している。オリーブのことも転生者だと知り、もしもの予測までして守ってくれようとしている。

オリーブはフレイアからの話を聞くだけで、漠然とした不安を感じるだけで、解決策を考えることもしなかった。ジョナから逃げたせいで母を危険に晒し、ラルフに頼りっぱなしだった10歳から成長していない自分が情けない。あの晩、ラルフに頼むまでマレンゴに乗れなかった時、もう怖いことから逃げないと決めたではないか。

明日、ゲームのシナリオから外れて生き延びた自分にも何かできることがないか聞こう。前世がMAWATAだったことも実は歌姫だとも言えないが、それでもできることはあるはず。

オリーブはそう決意し、まずはフレイアに言われた通りカイルへの気持ちについてちゃんと考えることにした。
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