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参の巻~平安美女と平成美男の恋話~
53 断罪の行方(四)
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結局、あっけなく扶久子の崇拝者と成り果てた是安に園近も安堵し、翌日、またもや芙蓉の御方の住まう東の宮に集ったところで園近は、是安に「謹慎を解く」と申し渡した。
しかし、姫君を誤解し、あろうことか凛麗の君に攫われそうになった事を海より深く反省し他是安は、心から詫びを入れ自ら髷をおとし、つるっつるの丸坊主になっていた。
「そ、そこまでしなくても私は全く気にしておりませんでしたのにっ」と、焦ってそう告げる扶久子に是安はちぎれんばかりに首を左右に振った。
「いやいや、とんでもございませぬ。姫さまのお優しきお言葉に某、穴があったら入りたいほどの申し訳なさでございます。普通なら恨まれてもしょうがない程の間違いを犯したというのに…」
「ほっ…本当にもういいですから気にしないでくださいね?ね?」と涙目でいう扶久子は両手を前に組み上目遣いにそう言うと、側にいる義鷹や園近、芙蓉の方まで扶久子の愛らしさにぷるぷると何やら悶えているようだった。
「何という…真に御仏のようなお優しさ…」と紅い顔で、さらに泣きそうになる是安に扶久子はさらに困惑するのだった。
そんなこんなで、右大臣家の断罪はあってなく幕を閉じたのだが、凛麗の君こそ謝ってほしいものだ!と扶久子は内心、ひどく怒っていた。
あのナルシストの白カバ!絶対許さないんだから!
あのカバこそ断罪されるべきなのに!
…とそう思っていた。
そして婚儀が中断してから五日目の朝の事だった。
何と清涼殿におわす帝から噂のかぐや姫を宮中に招くとの宣旨があったのだった。
その知らせに一同は真っ青になった。
「なっなんで?どうして?どうして帝が私なんかを呼ぶの?何で私の存在なんて知ってるの~?」と扶久子は叫んだ。
「くっ!凛麗の君に違いない!未だ、婚姻が成立しない事をどこやらか聞き知ったのだろう。婚儀の邪魔をしようと帝に扶久姫の事を伝えたに違いない!」園近が苦々しそうにそう呟いた。
「取りあえず、宮中に上がるのであればそれが終わるまでに婚姻の儀は中止にせざるおえないし、もし帝の目に留まり出仕(宮仕え)する等と言うことになれば…」
「えっ!まさかっ!そんな事をしてもし帝が姫を女御(帝の妻)にと望んだら!」と、思わず芙蓉が叫んだ。
「い、いや、それはあるまい。帝は賢き御方だ。何とて私よりも年上だし女御たちの争いに辟易していらっしゃったし…今更、争いの種を増やそうとはなさらないだろう」と、園近が周りをなだめる様に言うとそれに間髪入れずに芙蓉が突っ込んだ。
「そんなの分かりませんわよ!姫を一目見たら!見てしまったならっ!」
そんな芙蓉の御方様が縁起でもない恐ろしい事を言うので扶久子の顔からは血の気が引いた。
隣にいた義鷹も後ろに控えていた亜里沙も真っ青だ。
「いや、多分、凛麗の君はご自分の伴侶としたくて帝を巻き込んだのだろう。きっとこれまでの行いも正すからとか何とか言って…凛麗の君は姫を間近で見てしまった。本気で扶久姫の事を望んで…」と義鷹が苦しそうに表情を歪ませながらそう吐いた。
「や~め~てぇぇぇぇx~」と扶久子は叫んで頭を抱えた。
義鷹が姫をなだめる様に肩を抱くと扶久子は振り返り義鷹に抱きついた。
「絶対に嫌~!」抱き合う二人を皆が見守った。
そして扶久子は、そっと心の中で呟いた。
『ぐぬぅっ!白カバめ!地獄に落ちろ』
しかし、姫君を誤解し、あろうことか凛麗の君に攫われそうになった事を海より深く反省し他是安は、心から詫びを入れ自ら髷をおとし、つるっつるの丸坊主になっていた。
「そ、そこまでしなくても私は全く気にしておりませんでしたのにっ」と、焦ってそう告げる扶久子に是安はちぎれんばかりに首を左右に振った。
「いやいや、とんでもございませぬ。姫さまのお優しきお言葉に某、穴があったら入りたいほどの申し訳なさでございます。普通なら恨まれてもしょうがない程の間違いを犯したというのに…」
「ほっ…本当にもういいですから気にしないでくださいね?ね?」と涙目でいう扶久子は両手を前に組み上目遣いにそう言うと、側にいる義鷹や園近、芙蓉の方まで扶久子の愛らしさにぷるぷると何やら悶えているようだった。
「何という…真に御仏のようなお優しさ…」と紅い顔で、さらに泣きそうになる是安に扶久子はさらに困惑するのだった。
そんなこんなで、右大臣家の断罪はあってなく幕を閉じたのだが、凛麗の君こそ謝ってほしいものだ!と扶久子は内心、ひどく怒っていた。
あのナルシストの白カバ!絶対許さないんだから!
あのカバこそ断罪されるべきなのに!
…とそう思っていた。
そして婚儀が中断してから五日目の朝の事だった。
何と清涼殿におわす帝から噂のかぐや姫を宮中に招くとの宣旨があったのだった。
その知らせに一同は真っ青になった。
「なっなんで?どうして?どうして帝が私なんかを呼ぶの?何で私の存在なんて知ってるの~?」と扶久子は叫んだ。
「くっ!凛麗の君に違いない!未だ、婚姻が成立しない事をどこやらか聞き知ったのだろう。婚儀の邪魔をしようと帝に扶久姫の事を伝えたに違いない!」園近が苦々しそうにそう呟いた。
「取りあえず、宮中に上がるのであればそれが終わるまでに婚姻の儀は中止にせざるおえないし、もし帝の目に留まり出仕(宮仕え)する等と言うことになれば…」
「えっ!まさかっ!そんな事をしてもし帝が姫を女御(帝の妻)にと望んだら!」と、思わず芙蓉が叫んだ。
「い、いや、それはあるまい。帝は賢き御方だ。何とて私よりも年上だし女御たちの争いに辟易していらっしゃったし…今更、争いの種を増やそうとはなさらないだろう」と、園近が周りをなだめる様に言うとそれに間髪入れずに芙蓉が突っ込んだ。
「そんなの分かりませんわよ!姫を一目見たら!見てしまったならっ!」
そんな芙蓉の御方様が縁起でもない恐ろしい事を言うので扶久子の顔からは血の気が引いた。
隣にいた義鷹も後ろに控えていた亜里沙も真っ青だ。
「いや、多分、凛麗の君はご自分の伴侶としたくて帝を巻き込んだのだろう。きっとこれまでの行いも正すからとか何とか言って…凛麗の君は姫を間近で見てしまった。本気で扶久姫の事を望んで…」と義鷹が苦しそうに表情を歪ませながらそう吐いた。
「や~め~てぇぇぇぇx~」と扶久子は叫んで頭を抱えた。
義鷹が姫をなだめる様に肩を抱くと扶久子は振り返り義鷹に抱きついた。
「絶対に嫌~!」抱き合う二人を皆が見守った。
そして扶久子は、そっと心の中で呟いた。
『ぐぬぅっ!白カバめ!地獄に落ちろ』
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