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ところ変われば女子高生!
101.美羽は神崎家のお姫様
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その日の夜、神崎家では、本当に久しぶりに楽しそうな笑い声が聞こえた。
「いやー、ほんとに良かった良かった!」
「ほんとねっ!今日はお祝いよっ!」
「ほら、美羽!いっぱい食べて、もっともっと元気になれ!」
父も母も兄も姉も皆ぐちゃぐちゃに、泣き笑いしながら私が喋れるようになったことを喜んでくれている。
胸が熱くなった。
幸せだ。
ルミアーナの時にはなかった幸せをひしひしと感じる。
「ところで、美羽?階段から落ちたのは自分のせいだと言ってたけど本当なの?まさか、拓也なんかのこと庇ってるんじゃ、ないでしょうね?」
静が、問い詰めるように美羽に言った。
「はい…うん。ほんと…です」
「あの日は体調が悪いのを隠して大会に出てて…気分が悪くて…熱くて涙もでてきて…吐きそうになったから皆から慌てて離れようとしたんだけど…階段の所でいよいよ我慢出来そうになくなってうずくまろうとしたらふらついて落っこちちゃった…のです」と、美羽は慎重に記憶にある事実を語った。
静は怪しむように再確認しよう話しかける。
「ええと、私が美羽の親衛隊の子達から聞いた話だと、決勝に敗れて落ちこんでる美羽に男子達が無神経な事を言った挙げ句、拓也が美羽の事をあんな男女なんか相手にする訳ないとか何とか酷い事を言って、それを聞いた美羽が真っ青になって泣きながら階段をかけ降りようとした所、美羽を追いかけてきた拓也の手を振り払おうとして、美羽はバランスを崩して落っこちたって聞いたわよ?嘘をついてるような感じじゃなかったわ」
静は腑におちない顔で言った。
「いいえ、顔色が悪かったのは、さっきも言ったように気持ち悪かっただけで、拓也君や、まわりの男子が何か言ってたのなんて何にも全く聞こえてなどいませんでした」
美羽はきっぱりと言いきった!それが真実である。
「でも、大事な妹の事を男女とか許せん!」と北海道から本当にすっとんで帰ってきた兄が口を挟んだ。
「いえ、それも別に気にする程の事ではないので…」と美羽が言うと今度は母が口を挟んだ。
「本当に?美羽。じつは気にしてたりしないの?」娘が実は傷ついていないか心配げである。
「?何を?」と美羽がきょとんとして言うとさっきからじっと黙って聞いていた父が「ぶはっ」と笑いを堪えきらずに吹き出した。
「あはは、こりゃあ気にしてた拓也の方が気の毒だったか?」
父の言葉に兄も「確かに…」と頷いてにやにやしている。
美羽には全く意味がわからないが、なんだか男二人が急に上機嫌である。
美羽は、気づいてなかったが、あの状況だけ見た周りの人間達は美羽が拓也に好意を寄せていてそんな彼から「男女」などと言われ乙女心を傷つけられたと感じていたようなのである。
そう、拓也自身も…である。(カッコ悪っ!)
てっきり美羽が拓也に好意を寄せていたのかと思い拓也を絞めてやろうかと言うほどにヤキモキしていた父と兄の仁は、美羽が拓也の事をまったく何とも思って無かったと知った途端に拓也に寛大で同情的になる。
全くもってゲンキンなものである。
父と兄はひーひー笑いながら言葉を続ける。
「いや、まあ、その…そりゃあ何だ」
「拓也もいらん濡れ衣でこの一年罪悪感に責められ悩んだこったろう。美羽も、今度あったら何とも思ってないから気にしなくていいと、言ってやるといい」
兄もうんうんと頷きながら
「俺もそれがいいと思う」とにやけている。
妹が拓也の事を本当に全く何とも欠片も思って無いとわかりご機嫌である。
「?そうですね?私が階段から落っこちたのは全く拓也君は関係ないと伝えて安心してもらいます」と美羽が言うと父と兄はお互いに何やら目配せをしながらとても良い笑顔で頷き合った。
「「おしっ」」と、男二人は鼻息を荒くしながら満足そうに拳を握り合った。
母と姉はやれやれといった顔で父と兄に目をやり何故か呆れ顔である。
ちょっとだけ拓也に同情してしまう二人であった。
そう、末っ子で一人だけ年の離れた美羽は、神崎家では皆のアイドルでありお姫様である。
父も母も兄も姉も美羽には甘い。
極甘なのである!
姉、静とは九つ、兄の仁とは十二も歳が離れている。
何故そんなに歳が離れているかといえば、実は美羽は、まだ三歳の頃に神崎家にひきとられた養女だからである。
仁や静の母親の遠縁の娘である。
十二年前に起こった街を飲み込む土砂災害にまきこまれ美羽の本当の両親は亡くなっている。
美羽はまだ小さかったため覚えてはいないが…。
仁はその時すでに十五歳、静は十二歳だったので覚えている。
仁と静はその小さな女の子を自分たちの妹として心から歓迎した。
可愛くていとけなくて守らなくてはならない存在と、強く強く思ったのである。
両親を亡くして心細さに泣いていた小さな小さな女の子…。
寂しさを埋めるかのように自分たちにすぐになつき、
「お兄ちゃんお姉ちゃん」と後追いしてくる様子はかまわずにはいられないほど愛おしかった。
せつなくなるほど可愛くていとけなくて、守らなくてはならない特別な存在として強く強く思い受け入れたのだった。
「いやー、ほんとに良かった良かった!」
「ほんとねっ!今日はお祝いよっ!」
「ほら、美羽!いっぱい食べて、もっともっと元気になれ!」
父も母も兄も姉も皆ぐちゃぐちゃに、泣き笑いしながら私が喋れるようになったことを喜んでくれている。
胸が熱くなった。
幸せだ。
ルミアーナの時にはなかった幸せをひしひしと感じる。
「ところで、美羽?階段から落ちたのは自分のせいだと言ってたけど本当なの?まさか、拓也なんかのこと庇ってるんじゃ、ないでしょうね?」
静が、問い詰めるように美羽に言った。
「はい…うん。ほんと…です」
「あの日は体調が悪いのを隠して大会に出てて…気分が悪くて…熱くて涙もでてきて…吐きそうになったから皆から慌てて離れようとしたんだけど…階段の所でいよいよ我慢出来そうになくなってうずくまろうとしたらふらついて落っこちちゃった…のです」と、美羽は慎重に記憶にある事実を語った。
静は怪しむように再確認しよう話しかける。
「ええと、私が美羽の親衛隊の子達から聞いた話だと、決勝に敗れて落ちこんでる美羽に男子達が無神経な事を言った挙げ句、拓也が美羽の事をあんな男女なんか相手にする訳ないとか何とか酷い事を言って、それを聞いた美羽が真っ青になって泣きながら階段をかけ降りようとした所、美羽を追いかけてきた拓也の手を振り払おうとして、美羽はバランスを崩して落っこちたって聞いたわよ?嘘をついてるような感じじゃなかったわ」
静は腑におちない顔で言った。
「いいえ、顔色が悪かったのは、さっきも言ったように気持ち悪かっただけで、拓也君や、まわりの男子が何か言ってたのなんて何にも全く聞こえてなどいませんでした」
美羽はきっぱりと言いきった!それが真実である。
「でも、大事な妹の事を男女とか許せん!」と北海道から本当にすっとんで帰ってきた兄が口を挟んだ。
「いえ、それも別に気にする程の事ではないので…」と美羽が言うと今度は母が口を挟んだ。
「本当に?美羽。じつは気にしてたりしないの?」娘が実は傷ついていないか心配げである。
「?何を?」と美羽がきょとんとして言うとさっきからじっと黙って聞いていた父が「ぶはっ」と笑いを堪えきらずに吹き出した。
「あはは、こりゃあ気にしてた拓也の方が気の毒だったか?」
父の言葉に兄も「確かに…」と頷いてにやにやしている。
美羽には全く意味がわからないが、なんだか男二人が急に上機嫌である。
美羽は、気づいてなかったが、あの状況だけ見た周りの人間達は美羽が拓也に好意を寄せていてそんな彼から「男女」などと言われ乙女心を傷つけられたと感じていたようなのである。
そう、拓也自身も…である。(カッコ悪っ!)
てっきり美羽が拓也に好意を寄せていたのかと思い拓也を絞めてやろうかと言うほどにヤキモキしていた父と兄の仁は、美羽が拓也の事をまったく何とも思って無かったと知った途端に拓也に寛大で同情的になる。
全くもってゲンキンなものである。
父と兄はひーひー笑いながら言葉を続ける。
「いや、まあ、その…そりゃあ何だ」
「拓也もいらん濡れ衣でこの一年罪悪感に責められ悩んだこったろう。美羽も、今度あったら何とも思ってないから気にしなくていいと、言ってやるといい」
兄もうんうんと頷きながら
「俺もそれがいいと思う」とにやけている。
妹が拓也の事を本当に全く何とも欠片も思って無いとわかりご機嫌である。
「?そうですね?私が階段から落っこちたのは全く拓也君は関係ないと伝えて安心してもらいます」と美羽が言うと父と兄はお互いに何やら目配せをしながらとても良い笑顔で頷き合った。
「「おしっ」」と、男二人は鼻息を荒くしながら満足そうに拳を握り合った。
母と姉はやれやれといった顔で父と兄に目をやり何故か呆れ顔である。
ちょっとだけ拓也に同情してしまう二人であった。
そう、末っ子で一人だけ年の離れた美羽は、神崎家では皆のアイドルでありお姫様である。
父も母も兄も姉も美羽には甘い。
極甘なのである!
姉、静とは九つ、兄の仁とは十二も歳が離れている。
何故そんなに歳が離れているかといえば、実は美羽は、まだ三歳の頃に神崎家にひきとられた養女だからである。
仁や静の母親の遠縁の娘である。
十二年前に起こった街を飲み込む土砂災害にまきこまれ美羽の本当の両親は亡くなっている。
美羽はまだ小さかったため覚えてはいないが…。
仁はその時すでに十五歳、静は十二歳だったので覚えている。
仁と静はその小さな女の子を自分たちの妹として心から歓迎した。
可愛くていとけなくて守らなくてはならない存在と、強く強く思ったのである。
両親を亡くして心細さに泣いていた小さな小さな女の子…。
寂しさを埋めるかのように自分たちにすぐになつき、
「お兄ちゃんお姉ちゃん」と後追いしてくる様子はかまわずにはいられないほど愛おしかった。
せつなくなるほど可愛くていとけなくて、守らなくてはならない特別な存在として強く強く思い受け入れたのだった。
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