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お見合いのお相手
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ルカはヘルキャット邸の自室で執事から受け取った二通の手紙を広げていた。
一つ目は待ちに待ったブラウン侯爵夫人からの手紙である。
その中身は予想通りこの間お願いしていた件で、ちょうど年頃の合いそうな相手がいるのでまず二人で会ってみてはどうかという内容だった。
もちろん会うに決まってる。
でもこちらから頼んでおいてなんだがこんなに早く実現するとはとは思わなかったので少し驚いた。
…それで、肝心のお相手は。
手紙に素早く目を通す。
……スペーシア伯爵家、次男?
正直聞いたことのあるような、ないような関わりのない家である。父の派閥にも敵対派閥にいなかった気がするので中立派かもしれない。
でもまあしがらみがないという意味では良い方向に働く可能性もあるし、同じ伯爵家なら父の身分チェックはクリアできるだろう。
あとは私の加護が受け入れられるかどうかだけど…
こればかりはある程度近づいてみなければ分からない。
「…そういえば、アシュリー公爵は平気そうだったな」
加護のことを考えていてルカはこの間の子猫救出事件を思い出した。
テーブルに置いていたもう一つの手紙を手に取る。ちょうど公爵へ送ったお礼の返事だ。
あの後冷静になってみれば、アシュリー公爵があそこにいたということは、他の魔道士の貴族もいてもおかしくないということに気づいてしまい、事件からしばらくはドキドキひやひやしてしまった。
でも幸いにも目撃者はおらず、公爵も約束を守ってくれたらしく今のところ変な噂は聞こえてこないし、父にもバレていないようである。
それから公爵へのお礼だが、あの時は咄嗟に何でもすると言ってしまったが、ルカに出来ることはあまり多くない。
ましてや自分と公爵が近づくことをよく思っていない父の協力は得られない。
…手紙を出すのだって気づかれないよう一苦労した。
散々頭を悩ませた後、結局手持ちの宝石をこっそり売って珍しいリコウッドの木で出来た魔法杖を取り寄せた。
杖なら魔道士であるアシュリー公爵はよく使うはずだ。無駄になることはないだろう。
魔法は杖なしでも使えるが、媒体があると魔力消費が抑えられると言われており、魔道士たちの間では一般的に使われている。
もちろん命の恩人に対してこんなものでお礼と言えるか分からないが、今のルカの精一杯だ。
公爵からの手紙には「とても良い杖だな。ありがたく使わせてもらう」という返事が来ていたのでどうやら気に入って貰えたらしい。
ほっとして息をつく。とりあえずこの件はこれで落着となりそうである。
さて問題が一つ片付けばまた次の問題に取り掛からねばならない。例のお見合いである。
もうあんな失敗はこりごりだ。ルカは気を取り直して準備を始めることにした。
父に話を通したところ、お見合い自体の了承は得ることができた。
新しい繋がりを作るという意味で利があると判断したらしい。
「うーん、ドレスどうしようかな…この前作ったばっかりだけどあれはちょっと派手すぎ…?」
相手の情報はある程度勉強しておかないといけないし、準備するものがいっぱいある。
特にドレスや装飾品は意外と選ぶのが難しい。
清楚な雰囲気が好まれるが、ある程度は流行を取り入れておいた方がいいし、髪と瞳の色の取り合わせとか。
ルカは髪が黒色、瞳は紫、と顔周りが落ち着いたカラーなせいで、いつもドレスはついつい派手になりがちである。
今回のお見合いでこちらからはよっぽどの欠陥がない限り、断るつもりはないが、向こうが気に入ってくれないと話を進めることは出来ない。
成功させるために精一杯見栄えは良く見せたい。
そういう訳でしばらくはデザイナーと相談してドレスを注文したり、知り合いにさりげなくスペーシア伯爵家の話を聞いたり情報収集をして忙しく過ごすこととなった。
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