上 下
24 / 31

二十一話

しおりを挟む
次の日、学園の提示版にある貼り紙が貼られていた。

今季ランキング戦の覇者には変現の指輪が届けられます。変現の指輪は全ての変化作用を操る魔道具です。使用回数が一回しか使えないという制限はありますがこれ以上にない強力な力を貴方たちに授けることでしょう。しかしあくまでも変化作用をもとにしたものなので経験には叶いません。もし手に入れたとしても精進は怠らないように。

また今回新たに特別優秀賞という枠組みを設け副賞として変体の魔道具を差し上げます。こちらは回数制限のない魔道具で自由に体を作り替えることができます。女子の皆さんであれば足の脂肪を胸に持っていくことも可能です。男子の皆さんは体の余分な肉を筋肉に変換することもできますので皆さん首位にこだわらず戦場を想定した戦いを行い特別優秀賞を取りましょう。

学園長より。

「なーるほど確かに女装癖のある俺に取っちゃあ変体の魔道具は欲しく成るわな。つーかあの学園長歳食いすぎて貞操概念イってんのか。」

「それは違うと思うわイグアス。多分戦場に長くいることがあるから異性の心を使い見たいのは誰だって一緒よ。いつ死ぬかもわからないのに恋も満足にできないまま死にたくないじゃない。私の父と母はそんな風に出会って私が生まれたと聞かされているわ。」

「マジかよリュヒル。だいぶオープンな家族なんだな。」

「ええ、だっていつ死ぬかわからないもの自分のことをさらけ出して少しでもいいから覚えていてほしい。それが我が家の家訓よ。」

「まあ、俺ははやに親から離れたしミーナの家庭は戦士の家庭じゃなくて一般家庭だしな。」

「一般家庭?」

普通一般家庭ならこの学園に入れること自体を拒否する。ましてや攻撃スキルではない四則演算使いなら尚のこと。

「それはね、私がイグアスのことが好きだって言ったらお母さんが許してくれたんだ。」

そこにミーナはこめかみをぴくぴくと言わせながらリュヒルをにらみつけていた。俺の腕をがっしりと抱き着きながら。

どうやら彼女たちの決闘に開始の合図は要らないらしい。

今日もまた空が綺麗だなあと違うことを考えているとミーナたちはまた隠語を用いながら話をしだしていた。

「あ、イグアスさん。あのうランキング戦について教えていただけないでしょうか?」

どうやら愛理が話しかけてきたらしい。まわりが怯えながらミーナとリュヒルの会話を見ているこの状況でよく来れるなと思いながら俺は答えることにした。そうこの状況から逃げたいがために。
しおりを挟む

処理中です...