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「なんだ薬屋って王国最強の騎士様と知り合いだったのか。
 てっきり異国の出かと思ったぜ。」

スキン・シャイニングは薬屋の亭主である自分が騎士に知り合いが居るとは思ってもみなかったらしい。
実際転生者としての知識をフル活用しているので、異国の出身と思われても何ら不思議ではない。

「姉の友人ってだけですよ。」

「姉の友人とは言わずおねえちゃんと呼んでいいんだぞ。」

「呼びませんよ。
 幼馴染というわけでもありませんし、姉の友人におねえちゃんと言ったらマドレーヌさんのご家族と結婚したのかと疑われますよ。」

非情に辛辣な
未婚の女性を特別な呼び名で呼んでいいのは家族か婚約者だけなのがこの国の文化。
つまりは婚約者に見られる。
婚約者に見られるとどのような不都合があるのか。
俺が結婚相手を選べなくなる。
マドレーヌさんのところの家も家格としては俺の家よりも数段上の家。
親の一存決められないように幼少期に一筆書かさせているが、俺は嫌だ。

「お前さんも難儀だな。」

「むむむ、私はおねえちゃんと言ってもらいたいのだがな。」

「おねえちゃんと呼んでいいのは私の姉、セサミ姉さんだけですよ。」

セサミ姉は俺の姉、マドレーヌさんとはとても仲がいいのだが、いわゆる.......

「はーいセサミおねえちゃんですよ。
 呼ばれて、
 飛び出て、
 じゃんじゃじゃーん。」

呼ばれて飛び出てじゃんじゃじゃーんの効果音と共に白と黒が混じった長髪と黒目と白目が反転した右眼と通常の左目をのオッドアイをした大胸筋がヘビー級なお嬢様が白衣にショートパンツという奇妙な格好で窓を突き破って出てきた。

「やはり来ていたんだねセサミ姉さん。」

ブラコンなのだ。
あくまで家族愛のブラコンで結婚しても別に良いとは思っている。
しかし、弟に構いたくてマドレーヌさんと同じく行き遅れの称号を得ている。
せめてもの報いは無職でないことくらいだろうか。

彼女は現在学園で講師を行っている。
しかも幅広く薬学、魔法学、解剖学、医学の四学門を教えるエキスパート教師なのだ。
そのどれもが専門家クラスのため、男性自体もしり込みしてしまい結婚相手ができない状況を助長していた。
マドレーヌさんと相まって学武の百合姫とモテ離されていた。

俺はその愚痴を言い聞かされるべく召喚された召使に過ぎないんだろうなあと思っていた。
いつもヘビー級の大胸筋にヘッドロックを仕掛けられながらコクコク頷くマシンに成っていたしね。
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