上 下
6 / 7

F2 2/2

しおりを挟む
「シクシク.......悲しいよう愛しのおねえちゃんが来たのに弟が冷たくて...シクシク....悲しいよう。」

これがウソナキならどれだけよかったことか。
この人はウソナキに見えて本気で泣いているのが本気なのだ。
本気で泣くときはもっと泣くけど、本音で泣いてるから質が悪い。

難儀な性格な分やるときはやる。
我が儘なおねえちゃんだけど、頼りがいのある姉。

「はいはい、セサミおねえちゃん、よしよししてあげるから元気出して。」

「ホントゥ....アタマナデナデモツケテクレル?」

小さな声でボソボソと小さな声で呟いていく。
決まっておねえちゃんは悲しくなると闇落ちする寸前の人みたいに拗ねながら卑屈っぽくなる。

「もちろんだよ。」

「耳かきもいい?」

「それはダメ。
 きちんと自分でやりなさい。」

闇落ちサイドから戻ればそれなりの対応に戻す。
天使サイドとでも言うべきセサミ姉さんの時はただの我が儘だとわかるので放置する。

「...............羨ましい、私もなでなでしてほしいなぁ。」

幻聴かもしれないが、今マドレーヌさんからそのような声が聴こえた気がした。
振り向いてみると指をくわえて物欲しそうにこちらを見ていた。
僕の視線に気が付くとはっとしたように姿勢を戻した。

「すまん、俺はお呼びじゃないようだから帰るわ。」

「今度は患者として来てくれよ。」

苦笑いしながら客は帰って行った。
あの冒険者も領主の使いで来ることも多いが常連客の一人であることには変りない。
冒険者は怪我が多いので身体のメンテナンスに必要な薬品を摂取する必要があるためだ。

「さっきの人も言ってたけど、ここはお料理屋さんなの?
 だったら私にも何かごちそうしてよ。」

「姉さんここはあくまでも薬屋だから料理はでないよ。
 俺が出すのは病人食、食べる薬だけ。
 何も悪くない人に薬は出しません。」

「けちんぼ。」

「まあまあ、シーザーの言うことも最もだ。
 技術の体系化の一つに組み合わせる工程がある。
 今はそれの実験段階だし、薬は食べ過ぎれば毒にも転じる。
 彼は人に毒を食べさせている以上、責任を持つのだからおいそれと出すわけにはいかないのさ。」

薬学を齧っているだけあってセサミ姉さんはすぐに理解して飲み込んだ。
ちょっと納得が行かないオーラを出しているが無視だ無視。
強請られてもまだ、この世界の人間の長期的な症状を知らないのに食べさせるわけにはいかない。
亜人なんかも居る世界だ医学は慎重に。
しおりを挟む

処理中です...