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「これが物語序盤の料理人の気持ちかあ。」

「それだとアニメ版は石焼ステーキを作ることになるけどね。」

「なら、僕が作っちゃお!」

「焼けるモノは無いよ。」

「ざんねーん。」

 アンズさんがどれほど料理ができるのか未知数だが、この世界の調理器具は現代のモノと比べるとひどく不便に感じるはず。
 まだ、料理をさせるべきではないかな。
 薪とガスとでは火力が段違いだし調整も難しい。
 ガスの火力不足に悩まさせる料理あれこれこだわり体系男子には申し訳ないがガスは意外と便利なモノだ。

 今まで必要に駆られることが無かったが、初心者用としてガスコンロを作ってみた方が良いのかもしれない。

「あ!
 でも作れるのがあるよ!」

「何かあったかな?」

 蝙蝠の肉は上手いがスパイスが多すぎる。
 他に合わせる野菜などの具材が少なかった。

「タンドリーコウモリ?
 バット?
 みたいなのならすぐにできそう。」

「ここでは危ないから、洞窟から出てからね。」

「はーい。」

 洞窟から出ると着ぐるみをいそいそと脱ぎ始める。
 そして目に入ったのは汗ばんだ肌と乱れた髪の来空魔アーモンド。
 SNSの趣味でお書きいただく紳士たちの間でしか見せることのできない扇情的な身体に心を持ってかれた。

「ん?
 あれれ?
 どうしたー?
 おーい!」

「....」

「返事が無い、ただのファンのようだ。」

 自分の姿をみて叡智智な姿に顔が赤くなる。
 でも欲情してくれたから良し!
 
「供給が多すぎてショートしちゃったかな?」

 目覚めてくれないと構ってくれないので少し悲しい。
 立ったまま気絶したエレンツォを見ながら、くんくんと匂いを嗅いでみたり、マッサージしてみたり、頬っぺたをグニグニしてみたりしているが反応が一切ない。
 まるで、ペニー株で儲け過ぎて国から勧告された気分。

 好きが強すぎて好きって言ってもらえないのって女冥利に尽きる。
 気付くのは難しいけどね。

「あれ?」

 元の姿、生前の生身の姿に戻っている。
 服もTシャツだ。

「これはこれでエロい。」

 今のままだったら気絶するくらい好きでいっぱいになってくれるのかな。
 もし違ったら。

「なんて、わかんないよねー。」

 どっちも好きだって言ってくれるし、適度な距離感を保ってくれるから、どっちも好き。
 僕の下の姿の好きは家族、親友の好きに近いのかも。
 オタク友達と話したことあるけど、こんな感じだったよね。
 あの頃は、いろんなの漁ったしなあ。
 クラスの男子と仲良く混ざりたかったけど、一度はっちゃけて引かれたなあ。

 その点、エレンツォは1990年代のアニメも、2000年代前半のアニメにもしっかり反応してくれる。
 生まれてくる時代を間違えたって、オタクの先生にも言われたっけ?

「たのしいなー。
 …好き。」
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