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「大山ですただいま刀赤を連れて参りました。」
「ああ、大山先生に刀赤君、すまないね。これから授業が始まるって時に急に君を読んでしまって。」
職員室に行くと教頭先生が出迎えてくれた。
「それで刀赤君には悪いんだけど車を出すからいつも通っている病院に行ってほしいんだよ。」
「病院?何でですか?」
「実はこの学校法人を運営しているオーナーの娘さん、明日香さんと言うのだけども彼女が君に会いたいと言っていてね。
娘さんは原因不明の病にかかっていて今も入院しているんだけど今日、急に体調が良くなって日常生活が送れるくらいに回復したんだ。
それでなんか約束をした人に会いたいって言われて調べた結果刀赤君だったんだよ。
できれば今から会いに行ってくれるかい?」
約束をした覚えは無いが一方的な要求をされた記憶のある女子は思い浮かぶ。
あの子は白虎の力によって治ったのかもしれない。
だが俺には関係ない。
「申し訳ございませんが私はそのような約束をした覚えもございませんし、生徒の本分は学業ですのでお断りさせていただいてもよろしいでしょうか。」
「一応単位とかは後日テストなどをして免除するよ。」
「そういう問題ではありません。
私は学園に来るにあたり勉学を本業とする契約をしております。
学園側から勉学からの離脱をほのめかす発言はしない方がよろしいかと。」
「しかしな。」
「大山先生、彼の言うことも最もです。
ましてや高校生、早ければもう就職しているかもしれない身です。
契約においての責任の大変さは知っていて当然、むしろここで守っているからこそ社会に進出する学園本来の在り方として間違いではありません。
今回の場合、刀赤君と明日香さんは赤の他人ですから学園の規則的に言えば今回のことは学園側は勉学に専念させることが重要となります。」
教頭は社会人としてそれなりに上司としての責任と契約上起こりうることとしては間違いではないと言っていた。
「ですが、人情というものを考慮できない会社など数字だけを見る会社と変わりありません。」
「教頭先生。」
大山先生は教頭先生が擁護するとは思わなかったのだろう。
「ですが、学園ではそういう人情というものも学んでほしいとも思っています。」
「人情ですか。」
「ええ、今回は刀赤君には行っていただきたいんです。
あなたの事情は教員の間でも周知しています。
社会に出ればこの学園なんて児戯に等しいような厳しい世の中が待っているでしょう。」
「それはこの学園に来るまで十分に厳しさを知ったつもりです。」
教頭先生はその話を聞いたのちにとある教科書を出した。
その教科書は道徳の教科書だった。
「社会人に道徳教育はありません。
だから今のうちに刀赤君には人との関りをもっと持っていただきたいのです。
今回のことは特別授業扱いにいたします。
そうですね校外ボランティア扱いにしておきます。」
教頭先生がそこまで行ってくれるのならと行ってみても損はないかもしれないと思えてきた。
「わかりました。行きますよ。」
「ええ、お願いします。
それと昨日校長が起こした不祥事ですが理事長にも報告が行き解雇通告という形に成りました。
校長は五十嵐さんの母親の従弟にあたるらしく親族に対する職権の乱用という形ですので妥当なところでもあります。
校長先生は自覚しておりましたので、今回は懲戒免職はせずに解雇通告をする形にしました。五十嵐さんの家についてはまた後日お話しします。
では行きましょうか、病院までは私が車でお送りいたします。」
「はい。」
そこから無言で車に乗った。
「いいですか、刀赤君、社会は魑魅魍魎が渦巻くような場所です。あ、魑魅魍魎というのはですね。」
「化け物、妖怪などが数多くいる例えですよね。」
「すみませんねわかりづらい言葉を用いてしまって、私これでも元国語教師で本を読むのがとても好きなんですよ。
ですから言葉を知っていてくれてしかもきちんと理解してくれていうようで嬉しい限りです。」
「どうも。」
「それでですね。社会は昨日来た大人なんて序の口に思えるような人がいっぱいいます。
それが大企業であれ、中小企業であれ大きさは変わりません。
よく学校は社会の縮図という言葉がありますがアレは正にその通りなんですよ。
悪意の大きさも含めて縮図と呼べるでしょう。」
車が信号で止まった。
車のフロントガラスからは散り残された桜の花が舞い落ちてきている。
「その悪意から部下を守るために上司が存在していますが機能していないのも事実です。
だから学校でも昨日のようなことが起こってしまいます
。しかし、それだけが社会では無いことを知ってもらいたいんですよ。
希望に満ち溢れた若者が社会に出て荒波に飲まれてしまうことはよくあることですが希望に満ち溢れる前から社会の荒波を知りすぎていては社会に不信感しか持たないでしょう。」
実際、不信感しか持っていない。
契約の保護なんてものはニュースで日常茶飯事のように報道されているしニュアンスの違いだとかで言い逃れする人なんかもよく見かける。
グローバル社会と謳って自分たちの不信感を払拭しようとすらしない人たちに不信感を抱くなという方が無理に近い。
教頭先生は俺の不信感について考えているのが解っているのか黙ったままだ。
そして車が発信したとき教頭先生は言葉を発した。
「今回会う明日香さんはあなたのことを希望として捉えています。
希望になってくれとは言いません。
ですが、怪我もへったくれもなく話せるような関係になって欲しいんですよ。」
「ああ、大山先生に刀赤君、すまないね。これから授業が始まるって時に急に君を読んでしまって。」
職員室に行くと教頭先生が出迎えてくれた。
「それで刀赤君には悪いんだけど車を出すからいつも通っている病院に行ってほしいんだよ。」
「病院?何でですか?」
「実はこの学校法人を運営しているオーナーの娘さん、明日香さんと言うのだけども彼女が君に会いたいと言っていてね。
娘さんは原因不明の病にかかっていて今も入院しているんだけど今日、急に体調が良くなって日常生活が送れるくらいに回復したんだ。
それでなんか約束をした人に会いたいって言われて調べた結果刀赤君だったんだよ。
できれば今から会いに行ってくれるかい?」
約束をした覚えは無いが一方的な要求をされた記憶のある女子は思い浮かぶ。
あの子は白虎の力によって治ったのかもしれない。
だが俺には関係ない。
「申し訳ございませんが私はそのような約束をした覚えもございませんし、生徒の本分は学業ですのでお断りさせていただいてもよろしいでしょうか。」
「一応単位とかは後日テストなどをして免除するよ。」
「そういう問題ではありません。
私は学園に来るにあたり勉学を本業とする契約をしております。
学園側から勉学からの離脱をほのめかす発言はしない方がよろしいかと。」
「しかしな。」
「大山先生、彼の言うことも最もです。
ましてや高校生、早ければもう就職しているかもしれない身です。
契約においての責任の大変さは知っていて当然、むしろここで守っているからこそ社会に進出する学園本来の在り方として間違いではありません。
今回の場合、刀赤君と明日香さんは赤の他人ですから学園の規則的に言えば今回のことは学園側は勉学に専念させることが重要となります。」
教頭は社会人としてそれなりに上司としての責任と契約上起こりうることとしては間違いではないと言っていた。
「ですが、人情というものを考慮できない会社など数字だけを見る会社と変わりありません。」
「教頭先生。」
大山先生は教頭先生が擁護するとは思わなかったのだろう。
「ですが、学園ではそういう人情というものも学んでほしいとも思っています。」
「人情ですか。」
「ええ、今回は刀赤君には行っていただきたいんです。
あなたの事情は教員の間でも周知しています。
社会に出ればこの学園なんて児戯に等しいような厳しい世の中が待っているでしょう。」
「それはこの学園に来るまで十分に厳しさを知ったつもりです。」
教頭先生はその話を聞いたのちにとある教科書を出した。
その教科書は道徳の教科書だった。
「社会人に道徳教育はありません。
だから今のうちに刀赤君には人との関りをもっと持っていただきたいのです。
今回のことは特別授業扱いにいたします。
そうですね校外ボランティア扱いにしておきます。」
教頭先生がそこまで行ってくれるのならと行ってみても損はないかもしれないと思えてきた。
「わかりました。行きますよ。」
「ええ、お願いします。
それと昨日校長が起こした不祥事ですが理事長にも報告が行き解雇通告という形に成りました。
校長は五十嵐さんの母親の従弟にあたるらしく親族に対する職権の乱用という形ですので妥当なところでもあります。
校長先生は自覚しておりましたので、今回は懲戒免職はせずに解雇通告をする形にしました。五十嵐さんの家についてはまた後日お話しします。
では行きましょうか、病院までは私が車でお送りいたします。」
「はい。」
そこから無言で車に乗った。
「いいですか、刀赤君、社会は魑魅魍魎が渦巻くような場所です。あ、魑魅魍魎というのはですね。」
「化け物、妖怪などが数多くいる例えですよね。」
「すみませんねわかりづらい言葉を用いてしまって、私これでも元国語教師で本を読むのがとても好きなんですよ。
ですから言葉を知っていてくれてしかもきちんと理解してくれていうようで嬉しい限りです。」
「どうも。」
「それでですね。社会は昨日来た大人なんて序の口に思えるような人がいっぱいいます。
それが大企業であれ、中小企業であれ大きさは変わりません。
よく学校は社会の縮図という言葉がありますがアレは正にその通りなんですよ。
悪意の大きさも含めて縮図と呼べるでしょう。」
車が信号で止まった。
車のフロントガラスからは散り残された桜の花が舞い落ちてきている。
「その悪意から部下を守るために上司が存在していますが機能していないのも事実です。
だから学校でも昨日のようなことが起こってしまいます
。しかし、それだけが社会では無いことを知ってもらいたいんですよ。
希望に満ち溢れた若者が社会に出て荒波に飲まれてしまうことはよくあることですが希望に満ち溢れる前から社会の荒波を知りすぎていては社会に不信感しか持たないでしょう。」
実際、不信感しか持っていない。
契約の保護なんてものはニュースで日常茶飯事のように報道されているしニュアンスの違いだとかで言い逃れする人なんかもよく見かける。
グローバル社会と謳って自分たちの不信感を払拭しようとすらしない人たちに不信感を抱くなという方が無理に近い。
教頭先生は俺の不信感について考えているのが解っているのか黙ったままだ。
そして車が発信したとき教頭先生は言葉を発した。
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