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塩気が全てを引き立てる。
身を適度に締め、塩分が味の濃厚さをさっぱりとしつつも引き立てることを忘れない。
視の外側に着けているというのに後から塩分が追いかけてきて舌に酔いしれる味が残り続けた。

「この岩塩も凄いね。」
「コレ、昔からある。」

海塩ではこの味は出ないだろう。
海塩は風味が若干強く岩塩の方がさっぱりと食べられると感じる。

「チェリーフィッシュも舐めてるみたい。
 だから美味しい多分。」

根拠のない美味しさは文化の違いだったりするけどこれは間違いなく美味しいことには変わりなかった。

「このウロコも美味しいよ。」

見た目はただの葉っぱだが言われた通り食べてみる。

「甘。」

一瞬桜の風味がそうさせているのかと思ったが普通に甘い。
香りも良いし甘い。
甘いと言ってもほのかな甘さだが香りが甘さを強調して思った以上に甘く感じさせていた。
シナモンの甘い香りと味のギャップは驚く人は結構いるだろう。
それがとても辛く感じたり刺激を作用させる。

逆の例としてはさほど甘くないミルクジェラートにバニラエッセンスなどを使用すれば

「甘い?」
「うん甘いよ。」
「そう。
 ならこれはもっと甘い。」
「これは目玉の部分?」
「そう。
 花の部分。」

チェリーフィッシュの目玉の瞳は八重桜の花をそのまま模したかのような不思議な瞳をしていた。

「中に空があるから気を付けて。」

そのままパクリと食べてみれば花の蜜の味が伝わる。
すっきりとした甘さを持つ蜜はハチミツとは異なり桜の香りがダイレクトに伝わる。
ハチミツはどう頑張っても蜂が変化させたしつこさが残る。

純粋な花の蜜はとても柔らかでどんなお菓子にも合う不思議な素材なのだ。

そして不思議な甘さを持つ蜜が終わりを告げると硬い芯にあたる部分が出てきた。
この芯は特に味がしなかったのでそのままペッと吐き出す。

それは魚の目の芯というには透明で宝石のようにキラキラと輝いていた。
語弊があった。

「これ、発光してる?」
「うん。ランタン代わりに丁度いいよ。」

輝く宝石、ムーンチェリーと高値で取引されると知るのは今鑑定を行ったときの話。

ムーンチェリー
チェリーフィッシュの構造の要。
無尽蔵に発光する。
宝石としても扱われる。
現在これを最初に手にした人類はアマデウス帝国の初代女王とザーハック王国初代国王。
二人はこの二つに分かれた一組の宝石を巡り争ったという。
今では名だたる冒険者が稀に取ってくることがあり競りにかけられると国庫が空になると言う。

価格、アマデウス帝国オリハルコン貨幣 X枚。
時価最高額不明。

値が付けられないモノということか。

「神の介入すらも逃れているってことは神になってるかもしれねえな。」
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