幼馴染が勇者だったけど僕はスライムと一緒に不毛の土地を開拓する~勇者の誘いを断った農民の建国記~

スライム道

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間章 初代勇者

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「俺の前世の記憶って童貞なんだよな。」

前世の知識によれば成人までの童貞率は42%と高い国の生まれで男女に対して閉鎖的な環境でもあったらしい。

「まあ、もう関係ないことか。」

世界樹の封印、弱体化をさせた時、適性の儀によって自覚した自分の最も向いている職業とかけ離れたことをしてしまったせいか心臓がとても苦しくてそのまま何も感じなくなったから死んだんだと思う。

「でも何でここに居るのかは知らねえけどな。」
「まあまあほらこの果物美味しいよ。」
「なあ精霊さんや俺は精霊になったのか?」
「違うよ。」
「君はね、幼馴染の勇者ちゃんの捨てきれない未練のせいで無理矢理ここにとどめられているんだよ。」
「なにそれ、すげえ迷惑。」

死んだら殺してやるの矛盾が可能になっちゃうじゃないですか。

「面白いよねそれ。よく戦場に行く人にそんな声かけるけど精霊界に来たらできちゃうんだからここのこと知ってる人は昔はいっぱいいたのかもしれないね。」
「こっちはきちんと死んだのに死ねないっておかしくね。」
「怨霊とかでも自分の未練だからね。」
「あいつの未練が俺を縛り付けるってどこの監禁屋だよ。好きな女の子攫って監禁するのって男子の方じゃないの?」
「いやいや最近は肉食系女子ってのも出てきているらしいじゃないか。君は草食系みたいだけど。」
「違う、俺は恋愛にかける時間も金も自分のために使いたいだけだ。」

他人のことを気遣うのはとても疲れるし進んでやりたいとはもう思わない。
対価に見合ってないと感じるし身勝手にプラプラと生きてみたい。

「でも、君、自分のためにやりたいことをやったことなんてないじゃん。」
「自分のためにやりたいことね。」
「何がやりたかったの?やっぱり幼馴染との結婚?」
「そんなことしねえよ。俺がやりたかったのはな。」

前世の記憶では個別の部屋があるのはここ最近で昔は長男だけの場合が多かった。
その個室にも制限があって自分だけの部屋とは言えなかった。
自分だけの部屋を欲しがるうちに自分だけの家、自分だけの城を建ててみたいと思うようになっていたらしい。

転生したこの世界ではそもそも個別の部屋なんてものは存在しなかった。
独身でいる人も少なすぎるし人と関わっているのはつらく感じる。
はっきり言って引きこもりたい。

「そうだな、城、それも俺だけのための城。そうだなそのためには土地、建材、時間、資格、契約、権利、手段が足りないかな。」
「6個も必要なんだ。」
「俺だけの城が必要なら俺だけの国も必要だろ。だから土地と建材は抜きにしても、国を名乗る資格、その土地を主張する権利、国としての他国との契約、それらすべてを行うための手段と時間、どれもが俺には足りないと思うぜ。」
「じゃあ次は開拓民にでも成れると良いね。」
「開拓民じゃなくても開拓村の農民でもあればいいかね。それとペットなんかが居ると嬉しいかな。特にスライムなんかを寝具にすれば夏は涼しく冬は暖かくて極上の柔らかさを提供してくれそうで良いよな。」

「じゃあ来世は農民とスライムトレーナーだね。」

その後精霊界に勇者が訪れたという。
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