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今日は良き友人が出来ましたわ。
王子に対してイラつくことはありましたが、それを共感しあえる人ができたの。
平民で身分は違うけれど、彼女なりの幸せを考えている素晴らしい人。
私と違って将来が約束されたわけじゃないから、まだ迷っているところも多いけど、なかなか話の分かる人だったわ。

「ねえ爺や。」
「いかがしましたか、お嬢様。」
「今日は良き友人ができたの。」
「それそれは良きことですな。」
「ええ、いいこと。
 でも友人になった人は平民だから、
 あまり多く会うと周りの子にいじめられてしまうかもしれないし、
 王子も目をつけてしまったからどうにかして守ってあげながら一緒に話す時間も欲しいのだけど。
 何か良いアイデアはないかしら。」
「難しいご相談ですな。
 平民と言いますと特待生で上がりましたリヤ様というお方でしょうか。
 彼女の家は花屋のようですし、懇意にしている貴族家の給仕もいるやもしれません。
 貴族家を調べ、そこから自然な流れを作るというのはいかがでしょうか。」
「それなら、我が家でその花屋を懇意にすればいいのではなくて?」
「お嬢さま、ユナイテッド公爵家は王家の次に権力のある家です。
 飾り付ける花々に至るまですべて庭で栽培しております。
 これは王都における権力を誇示するためのものでもあり、土地に余裕がないものたちが花を買う必要があるからです。
 我々が購入してしまってはほかの貴族に示しが付きません。」

 他より優れた血統だからこそ、権威を見せなくてはいけない。
 最も、最近は成績優秀な平民も政治にかかわらせる機会を作ろうと議会で言い合っていることから、平民の地位が向上する日も近いのかもしれない。
 爺やの言っていることは一理あるし、私たちが行けばそれだけほかの貴族の迷惑、もしくはユナイテッド公爵家が平民を政治にかかわらせたい貴族の筆頭との疑いを受ける。
 王家との婚姻を受けたばかりなのにその手のうわさが流れるのは、今後王子を調教する上で足枷になりそう。

「そうねえ、爺やの言う通り、あの子の家で花を買っている家でも調べようかしら。」
「かしこまりました。
 ではそのように手配いたしますね。」
「でも、その貴族家に話しかける口実も欲しいから、それなりに調べておいて頂戴ね。」
「御意に。」

 権力を持つ家は、友人関係ですら気を付けなければならなかった。
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