時代を越えてお宝探し!?黒猫と僕らの時空大冒険

空道さくら

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第1章

第1話:UMAって本当にいたら、すごいよね!

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 放課後、中学2年生のミオ夏輝ナツキ奏多カナタの3人は、理科準備室で顧問の西本先生と「オカルト研究会」の活動に励んでいた。

 科学では説明できない現象や謎を追い求めるこの部活は、3人にとって日常の中の非日常だった。

 放課後の準備室には、いつも通りのメンバーが揃い、机の上には参考書や怪しげな資料が広がっている。

「今日はどんな話が聞けるのかな?」
 澪が期待に満ちた表情で尋ねた。

 先生はニヤリと微笑み、棚から古びたノートを取り出した。

 その瞬間、先生の手元が滑り、ノートが床に「パタン」と音を立てて落ちた。

「あっ、大丈夫ですか?」
 澪が驚いたように声を上げ、先生の方に目を向ける。

「あはは!先生、しっかりしてよー!」
 夏輝は声を上げて笑う。

「先生、気をつけてくださいね。」
 奏多が微笑みながら一言添えた。

「おっと、すまんすまん。」
 先生は苦笑いを浮かべながらノートを拾い上げ、埃を軽く払う。

「さて、今日は未確認生物――UMAユーマについて話そうかな。」
 そう言って、先生はノートの表紙を軽く指でなぞった。

「このノートには、私が長年集めたUMAの情報が詰まっているんだ。例えば、日本の河川に潜む河童や、ヒマラヤの雪男――イエティの話とかね。」
 先生はノートを開き、古びた文字や図を指先で軽くなぞりながら語った。

「面白そう!」
 澪は目を輝かせる。

 先生はノートをパラパラとめくり始めた。
「よし、今日はUMA特集だ。さあ、どこから話そうかな……?」

 澪たちは思わず前のめりになり、目を輝かせながら先生の言葉に耳を傾けていた。



「未確認生物――UMAというと、まだ科学的に解明されていない存在として語られることが多いけれど……」
 先生はノートをめくりながら、少し神妙な面持ちで続けた。

「古い神話や伝説の中に、UMAのルーツが隠されていることがある。」
 視線をノートに落としながら、先生はさらに話を続ける。

「例えば何ですか?」
 澪が首をかしげる。

「ギリシャ神話のヒドラ。九つの頭を持つ毒を吐く怪物だ。」
 先生は説明を続けた。

「ヒドラって、倒しても頭が生えてくるってやつだっけ?」
 夏輝が身を乗り出した。

「そうだ。実際には、当時の人々が見たUMAを誇張して伝えた可能性もある。」
 先生はノートに目を落としながら話した。

「でも、ただの想像かもしれないですよね?」
 奏多が冷静に言いながらも、その瞳には微かな期待が宿っている。

「そうかもしれない。でも、伝説には意外と真実が含まれていることがある。」
 先生は微笑みながら、ノートの一節を指で軽くなぞった。

「UMAって、神話が由来になっていることもあるんですか?」
 澪が少し前のめりになって聞いた。

「そう考えると面白いだろう? UMAを解明することが、神話の謎を解き明かす鍵になるかもしれない。」
 先生はノートを閉じ、にやりと笑った。

 そして、部屋全体に響くような声で一言。

「この世界の真実は、追い求める者だけが知ることができる。」

 先生の言葉に感心した声が次々と飛び交った。
 準備室は、次のUMAの話題でさらに熱を帯び、笑い声とともに活気に満ちていた。

 澪たちは次々に思いついた疑問を投げかけ、先生の答えに耳を傾けていた。
 身振り手振りを交えて意見を交わしながら、会話はますます熱を帯びていく。

 それぞれの言葉が重なり合い、和やかな空気の中で会話は弾んでいった。




「それで次のUMAは――」
 先生が楽しそうに話し始めたところで、校内放送のチャイムが鳴り響いた。

「あ、もうこんな時間だ。」
 澪が時計を見て驚いた声を上げると、先生はノートを閉じて立ち上がった。

「今日のところはここまでだな。」
 先生は軽く微笑みながら言葉を続けた。
「続きはまた次回だ。」

 澪たちは名残惜しそうに机の上の資料を片付けていた。
 片付けの手を動かしながら、時折窓の外の夕焼けに目を向ける。
 準備室を出る頃には、夕焼けが静かに薄れ始めていた。



 部活動を終えた3人は、夕焼けに染まる道を歩きながら家路についた。
 未確認生物UMAの話題で盛り上がり、足取りは軽やかだった。

「UMAって、本当にいたらすごいよね!」
 澪が少し早足になりながら、力を込めて言った。

「わかる!絶対ロマンあるよな!」
 夏輝がすぐに頷き、勢いよく続ける。
「目撃例をもっと調べてみたら面白いかもな!古い資料とか、現地調査とかやったら最高じゃん!」

「現地調査ね……それなら、まず目撃情報を整理してからだね。」
 奏多が考え込むように言った。
「仮説を立てておかないと、調査の方向性がぶれるし。」

「ふふ、真面目だね。」
 澪は肩をすくめて笑いながら言った。

「でもさ、現地調査とか言ってるけど、そんな時間もお金もどこにあるの?」
 澪はちょっと困ったように手を広げて、周囲を見渡した。

 一瞬の沈黙の後、3人は顔を見合わせて吹き出した。
 笑い声が夕焼け空に溶け込み、柔らかな影が長く伸びていく。



 そんな会話をしながら歩いていると、前方に黒い影が現れた。

 一匹の黒猫が道の真ん中に立ち、大きな金色の瞳でじっとこちらを見つめている。
 黒猫の瞳が夕陽を反射し、まるで炎のように揺らめいた。

 澪の頬に微かな冷たい風が触れ、周囲の空気が一瞬で静まり返ったように感じる。

「ねえ、あの猫、なんかすごい目で見てない?」
 澪が足を止め、小さな声で言った。

「本当だ。こっちを観察しているみたいだね。」
 奏多が黒猫から目を離さない。

「おいおい、なんだこれ。目力やばすぎ!絶対ただ者じゃない!」
 夏輝は驚きつつも楽しそうに黒猫に近づこうとする。

 黒猫は「ニャア」と鳴きながら澪の足元をくるりと回り、鼻を動かして匂いを嗅ぐ仕草を見せた。
 やがてじっと澪を見上げ、一瞬動きを止めた後、もう一度「ニャア」と短く鳴き、踵を返して歩き出した。

 黒猫は数歩進むと立ち止まり、ふいに振り返った。
 夕陽を受けたその瞳は鈍く輝き、3人の視線を強く引きつけて離さない。

 澪たちは息を呑み、張り詰めた空気の中、緊張と戸惑いに足を縫い止められたようにその場に立ち尽くしている。

「ついて来いって言ってるみたいだね。」
 奏多が低く呟き、黒猫を観察する目には冷静さと探究心が宿っている。

「でも、これ追いかけても大丈夫か?」
 夏輝が腕を組み、不安そうに視線を交わした。

「なんだか気になるよ。普通の猫じゃない気がする。」
 澪は黒猫を見つめたまま答えた。
 その表情には、興味と警戒が入り混じっている。



 3人それぞれの思いが交差する中、誰も言葉を発しなかったが、空気には期待感が漂っていた。
 澪は次の一歩を踏み出そうとする自分を押し留め、夏輝は今にも行動を起こしそうな興奮を抑えきれず、奏多は冷静に状況を見つめながら仲間たちの反応を観察している。

 夕陽の中に伸びる3人の影が、ゆっくりと黒猫の影に重なりそうになった瞬間、また静けさが訪れた。
 未知の出来事が目の前に広がる中、3人は胸に湧き上がる期待感を感じ取っていた。
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