時代を越えてお宝探し!?黒猫と僕らの時空大冒険

空道さくら

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第1章

第10話:どうすればいいの…?

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 白く輝く大理石の階段が、どこまでも空へ向かって伸びている。
 磨き上げられた石段は陽光を受けてきらめき、両脇には緑豊かな木々が風に揺れていた。

 木の葉が奏でるささやかな音が静寂を彩る中、ミオ夏輝ナツキ奏多カナタ、そしてユーマ――3人と1匹が、その果てしない階段を一歩ずつ踏みしめていた。



「はあ…本当にどこまで続くの?」
 ミオは息を切らしながら汗を拭き、階段の上を見上げた。
 高くそびえるように連なる段の多さに、思わずため息を漏らす。

「これくらい余裕だろ!」
 夏輝ナツキは元気よく振り返り、陽射しを受けて輝く石段を軽快に駆け上がる。
 隣のユーマも、軽やかに跳ねるような足取りで進んでいた。

「ほら、こんな綺麗な階段なんだから楽しもうぜ!」
 夏輝は足を止めずに声を張り上げ、振り返りざまに言った。
「奏多、大丈夫かーっ!」

 奏多は軽く手を振りながら、優しい笑顔で大きな声を返した。
「大丈夫だよー!」
 その声に安心したように、夏輝はさらに元気よく階段を駆け上がっていった。

「もう少しだよ!」
 澪が前を指差すと、木々の間に白く輝く柱がちらりと見えた。
 そこから吹き込む風が、階段を登る一行の疲労をわずかに和らげた。

「よし、ラストスパートだ!」
 夏輝が声を弾ませ、さらにペースを上げる。

 その姿に触発され、澪たちもそれぞれのペースで足を進める。

 遠くで響く風の音と、足音だけが階段に静かに反響していた。
 磨かれた石段を踏みしめながら、澪たちは神殿への道を少しずつ縮めていった――。



 階段を登りきった瞬間、目の前に広がる光景に、澪たちは思わず息を呑んだ。

 青空を背にそびえ立つ神殿は、白大理石の柱が天高くいくつも伸び、その全体がまばゆい光を受けて輝いている。
 巨大な入口を飾る彫刻には、神々の姿が生き生きと刻まれ、その圧倒的な迫力に立ち尽くすしかなかった。

「…こんなの、写真でも見たことない。」
 澪は息を切らしながら汗を拭い、壮麗な神殿に目を奪われていた。

「で、でっけえ!」
 夏輝が思わず声を張り上げ、両腕を広げるような仕草をする。
「これ、どこからどう見ても普通じゃないよな!本当に人間が作ったのかよ!?」

「圧倒的だね…。」
 奏多は石段に手をかけて体を支えながら、静かに言葉を絞り出した。
「見て、この彫刻の細かさ。これだけのものを作る職人たちの熱意が伝わってくるよ。」

「いやあ、こういうの見るとテンション上がるな!」
 夏輝は元気よく両手を腰に当て、大きく息を吸い込む。
「こんな壮大なもの、そう簡単にはお目にかかれないだろ!」

 澪は膝に手を置いて小さく息を整えながら、目を輝かせて言った。
「ほんとだね…。登るのきつかったから、余計に感動する…。」

 ユーマは胸を張り、得意げに笑った。
「どうだ、すごいだろ?これが神々の力が宿る場所さ。凡人には到底考えつかないよな?」

 奏多は軽く笑いながら、あっさりと言い返した。
「でも、ユーマが作ったわけじゃないでしょ?」

 ユーマは一瞬むっとした表情を見せたが、すぐに尻尾を揺らして言い返す。
「細かいこと言うな!俺の説明でさらにすごさが引き立ったんだろ?」

 その言い草に澪と夏輝も顔を見合わせ、思わず吹き出した。

「ユーマらしいよね。」
 澪が笑いながらそう言うと、

「まあ、確かにそういうとこ、面白いよな!」
 夏輝が大きく頷きながら声を上げた。

 澪たちはそのまま顔を見合わせて笑い出し、大きな笑い声が階段の上で響いた。

「さあ、行こうぜ!」
 夏輝が力強く声を上げると、澪たちは笑顔のまま顔を見合わせ、気持ちを新たに頷き合った。

 澪たちは巨大な神殿の入り口に向けて、意気揚々と足を踏み出していった。



 目の前の荘厳な扉の前で、澪たちは自然と歩みを止めた。

 近くには、厳めしい顔つきの門番が二人立っている。
 筋骨隆々とした体に金属の胸当てを身にまとい、長槍を携えたその姿は神殿の威厳そのものだった。

「私が話してみるね。」
 澪が一歩前に出ると、澪たちは緊張しながらその背中を見守った。

 澪は穏やかな表情を浮かべながら、落ち着いた声で門番に話しかけた。
「こんにちは。この神殿でお聞きしたいことがあって来ました。」

 門番の一人がじろりと澪を見下ろし、低い声で応じた。
「神聖なる神殿に入れるのは、神聖な目的を持つ者だけだ。用件を述べよ。」

 澪は少しだけ考え、まっすぐに門番を見上げて答えた。
「私たちは『黄金のリンゴ』についてお聞きしたいんです。それが、どうしても必要で。」

 門番は険しい顔つきのまま、澪をじっと見つめた。
「黄金のリンゴだと…?その目的を明らかにせよ。」

「あっ…」と声を漏らしながら、澪は視線を彷徨わせた。
 唇を噛むようにして次の言葉を探したが、それでも何も見つからず、困ったように俯いてしまった。

 その様子を見て、奏多が一歩前に出て静かに口を開いた。
「大切な人を助けたいんです。」

 門番が険しい声で問いかける。
「なぜそれが必要なのだ?目的を明確にしなければ、この門を通すことはできない。」

 奏多は澪に目を向けた後、しっかりとした声で続けた。
「この子の母親が病気なんです。治すためには『黄金のリンゴ』が必要だと聞きました。」
 静かながらも力のこもった言葉が、厳かな空気の中に響いた。

 その言葉を聞いた澪と夏輝は、驚きに目を見開き、お互いの顔を見合わせた。
「えっ…?」
 澪は困惑した表情で小声を漏らし、奏多の顔を伺う。

 夏輝も思わず口を開いたが、奏多の落ち着いた横顔を見て、慌てて口を閉じた。

 門番はしばらく無言のまま奏多を見つめ、やがて低い声で言った。
「神官様に確認を取る。ここで待て。」

 そう告げると、門番の一人が巨大な扉を静かに押し開け、神殿の中へと姿を消した。

 澪たちは残された静寂の中、そわそわとしながら立ち尽くした。
「本当に大丈夫かな…?」
 澪が小さく呟くと、夏輝が力強く頷いて応じた。
「大丈夫だって!なんとかなるさ!」

 一方、奏多は石の壁に背を預け、じっと門番が戻るのを待っていた。
「とにかく、今は待つしかないね。」
 落ち着いた声に、澪たちは少しだけ緊張を和らげたようだった。



 しばらく待つと、神殿の扉が重々しい音を立てて再び開いた。
 戻ってきた門番は険しい表情のまま、澪たちに告げた。

「残念だが、神官様は面会を許可されなかった。」

 その言葉に、一瞬息を呑む澪たち。

「そんな…。」
 澪は力なく呟き、肩を落とした。

 夏輝も拳を握りしめ、悔しそうに眉をひそめる。
「マジかよ…。せっかくここまで来たのに…。」

 一方、奏多は何か言おうと口を開きかけたが、その言葉を飲み込むように黙り込んでしまった。

 誰も次の手が思いつかないまま、重苦しい沈黙が澪たちを包む。

 澪は足元を見つめながら、小さく絞り出すように呟いた。
「どうすればいいの…?」

 その声は、途方に暮れた一行の心情をそのまま映し出しているようだった。
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