時代を越えてお宝探し!?黒猫と僕らの時空大冒険

空道さくら

文字の大きさ
12 / 34
第1章

第12話:無理だと思うけど…

しおりを挟む
 澄んだ空気が漂う深い森の中を、ミオたちはヘスペリデスの園を目指して進んでいた。
 木々の枝葉が重なり、差し込む柔らかな光が森の静けさを引き立てる。
 足元にはしっとりとした土の感触が広がり、遠くで鳥のさえずりがかすかに聞こえる。

 夏輝ナツキは少し足を速め、奏多カナタの横に並ぶように歩み寄った。

「なあ、さっきの門番に、なんで嘘ついたんだ?」
 夏輝が少し身を乗り出し、疑問のまなざしを向ける。

 奏多は足を止めることなく、少し間を置いてから答えた。
「ユーマを元に戻すためって言えないでしょ。それっぽい理由を作るのが一番だと思ったんだ。」
 その声は冷静なものの、その裏には責任感とわずかな迷いが隠れていた。

 澪は感心したように小さく頷き、柔らかな口調で続けた。
「すごいね…。私、あの時は何を言えばいいかわからなくて、本当に助かったよ。」

 すると、ユーマが後ろからひょいと顔を出した。
「奏多、あの嘘、やけに自然だったな。もしかして普段から嘘ついてるんじゃないのか?」

 奏多は少し眉をひそめ、振り返りながら苦笑いを浮かべる。
「そんなわけないでしょ。あの場では時間がなかったし、僕がうまく理由を作ればいいかなって思っただけだよ。」

 ユーマはにやりと笑い、しっぽを軽く揺らしながら言った。
「お前、嘘の才能あるんじゃないか?」

 奏多はため息をつき、少し視線を逸らしながら冷静に返した。
「それ、全然嬉しくないけど。」

 澪も思わず笑いを浮かべながら、ユーマに軽く注意するように言った。
「もう、奏多をからかわないの。」

 そのやり取りを聞いていた夏輝が堪えきれずに吹き出した。
「ははっ!でも、奏多、あんな咄嗟に嘘が出るなんて、ほんとすげえな!」

 澪は柔らかな笑みを浮かべながら、夏輝の方を見て言った。
「すごいって言うだけじゃなくて、ちゃんと感謝しなきゃだめだよ。」

 夏輝は少し困ったように頭を掻きながら返す。
「はいはい、わかってるよ。」

 そして、奏多の方を向き直り、照れくさそうに言った。
「奏多、マジで助かったわ!ありがとな!」

 奏多は柔らかく笑いながら肩をすくめる。
「いいよ、気にしなくて。それより、早く行こうよ。」

 奏多が先を指し示すと、澪たちは互いに軽く笑い合いながら、足取りも軽やかに森の奥へと進んでいった。



 森を抜けると視界が開け、門が現れた。

 果樹の枝が複雑に絡み合い、門の形を象っている。
 自然が彫刻のように姿を成した光景がそこにあった。
 その奥には、色とりどりの果実が木々に実り、柔らかな光を浴びてきらめいている。

「これが…ヘスペリデスの園…?」
 澪が静かに呟く。
 その声には驚きと感嘆が混じり、目の前の光景に心を奪われている様子だった。

 夏輝は門をじっと見つめ、興奮を隠せない声で続けた。
「うわ、中って絶対スゲえことになってるだろ!」
 その目には冒険心と期待があふれていた。

 奏多は門をじっくりと見据え、冷静な口調で言った。
「黄金のリンゴがちゃんとあるといいけど。」
 その声は落ち着いていながらも、確かな期待を秘めていた。

 澪たちは少し離れた場所から門を見つめていた。
 それぞれの胸には、期待と緊張、そしてこの先へ進むための強い意志が静かに宿っていた。



 門の近くでは、警備兵たちが鋭い目で周囲を見回し、手に持つ槍が陽光を反射していた。

 ユーマは門の前の警備兵たちをじっと見て、静かに呟いた。
「なるほど、門番の言う通り、しっかり見張ってるな。」

 少し間を置き、観察を続けながら言葉を付け加えた。
「これだけの人数がいるなんて、本気で警戒してるぜ。」
 その声は軽い調子ながら、警備の厳重さを冷静に見極めているようだった。

 夏輝は軽く頷きながら、険しい顔で言った。
「そうだな…。簡単には入れなさそうだ。」

 澪は少し考え込むように眉を寄せ、遠慮がちに提案する。
「やっぱり、もう一度頼んでみようか?」

 ユーマはすかさず尻尾を揺らしながら首を振り、軽く言った。
「いや、それは無理だろ。さっき全然聞く気なかったしな。」

 奏多が冷静に警備兵たちを見つめながら続けた。
「それに、もう一度頼んだら、逆にもっと警戒されるかもしれないよ。」

 澪は視線を落とし、少しの間沈黙した後、小さく息をついて頷いた。
「そっか…でも、どうにかならないのかなあ…。」

 奏多は警備兵たちを観察しながら慎重に口を開いた。
「まずは状況を整理しよう。無理に突破するのはリスクが高いかも。他に使える手を探した方がいいよ。」

 夏輝は腕を組んで考え込むと、ふと顔を上げ、手をぽんと叩いた。
「じゃあさ、周りのどこかに隠れた抜け道がないか探してみようぜ!果樹園なんだから、裏道くらいありそうだろ?」

 その言葉に、澪たちの表情が少し明るくなった。

「確かに…抜け道があれば、正面突破しなくて済むね。」
 奏多が頷きながら賛同する。

 澪もほっとしたように微笑みを浮かべて言った。
「それなら、誰にも見つからずに中に入れるかも!」

 しかし、ユーマが尻尾を揺らしながら少し呆れたように言った。
「抜け道なんか探してたら、夜になるぞ。」

 澪はユーマに視線を向け、小さく眉を寄せながら尋ねた。
「それなら、どうするの?」

 ユーマは門を一瞥し、自信を持った口調で言った。
「この門には扉がないんだよ。だから、あいつらが気づかないうちにスッと行くってのはどうだ?」

「それはさすがに無理だと思うけど…。」
 澪が少し困ったような表情で言う。

「でも、ユーマの言う通り、目立たないように近づくのは一つの手かもね。」
 奏多が慎重に考えながら呟く。

 ユーマは尻尾を揺らしながら一歩前に出て自信たっぷりに言った。
「俺が魔法で鳥に変身して中に入る。それでちょっと騒いで、あいつらの注意を引けばいいだろ?」

「えっ、ユーちゃんが?」
 澪が驚いた顔で問い返した。

 ユーマは鼻を高くして胸を張り、自慢げに答えた。
「俺に任せておけって!」

 奏多は少し考え込むように目を細め、静かに頷いて言った。
「注意を引くのはいいけど、目立ちすぎたら元も子もないからね。」

 ユーマはその言葉に反応するように、軽く姿勢を正した。
「それなら問題ないぜ。」  

 尻尾をピンと立てると、一瞬自信たっぷりに笑みを浮かべたが、すぐに表情を引き締めた。
「ただな…時間があんまりないんだ。変身してもせいぜい数分ってとこだ。」

 夏輝が思わず声を上げた。
「数分!?そんなんで大丈夫かよ!」

 ユーマは肩をすくめて笑いながら返す。
「短い時間でもやるしかないだろ?少なくとも、お前らよりは目立たずに動けるし。」

 奏多は冷静に頷きながら言った。
「じゃあ、その短い時間でできるだけ警備兵の注意を引いて。その間に僕たちはばれないように中に入るよ。」

「よし、任せとけ!」
 ユーマは力強く答えると、その場で軽く身をかがめた。

 ユーマの体をふわりと光が包み込み、周囲に魔法の波動が広がる。
 その輝きは一瞬で黒い羽と鋭いくちばしへと変わり、闇に溶け込むようなカラスの姿が現れた。



「よし、できた!」  
 光が完全に消えると、ユーマはカラスの姿になっていた。

 一瞬の静寂が訪れ、一行の視線がユーマに集中する。
 彼の黒い翼がゆっくりと広がる様子に、誰もが息を呑んだ。

 それを見た夏輝が口元を緩めながら言った。
「お前、変身しても黒いとかマジでキャラブレないな!」

 カラスの姿のユーマはクチバシで翼を軽く払いつつ、得意げに返す。
「当然だろ?黒は俺のトレードマークだからな!」

 澪が思わず笑いを堪えながら呟く。
「確かにユーちゃんらしいけど、ちゃんと気をつけてよね。」

「わかってるって!」
 カラスのユーマは翼を広げ、一行に軽く頷くと、静かに空へと飛び立った。

 その姿を見送りながら、澪が小さく呟く。
「さあ、私たちも動かないとね…。」

 奏多は冷静に周囲を見渡しながら言った。
「うん。タイミングを見て、一気に中に入ろう。」

 カラスとなったユーマが翼を広げ、静かに霞むように光の中へ溶け込んでいった。
 その姿を見送りながら、澪たちは目を合わせ、互いの意志を確かめるように小さく頷いた。

 緊張で空気が重く、一歩踏み出すたびに心臓の鼓動が耳元に響く。
 息を潜めながら、彼らはゆっくりと門へと近づいていった――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

処理中です...