13 / 34
第1章
第13話:こんなのまでいるなんて…
しおりを挟む
澪たちは息を潜め、ヘスペリデスの園の入り口の近くの木の陰に身を隠して緊張を抑えていた。
ユーマが飛び立ってから数分、まだ警備兵たちに目立った動きはない。
澪が小さな声で呟く。
「ユーちゃん、大丈夫かな…。」
奏多は澪を安心させるように微笑みながら、低い声で返した。
「ユーマならちゃんとやってくれるよ。」
その時、門の向こう側で大きなカラスの鳴き声が響き渡った。
鋭く甲高いその声に驚いた警備兵たちは一斉に動き出し、音のする方向に目を向ける。
園の奥へと鋭い飛翔を見せるカラスの姿が、日差しを浴びて黒い影となる。
その翼の動きは警備兵たちの注意を完全に引きつけていた。
警備兵の一人が鋭く声を上げた。 「おい!あの鳥、妙だぞ!追え!」
数人の兵士が槍を手に、園の奥へ走り去る。
その場に残った警備兵はわずか二人だけになった。
夏輝が目を輝かせて奏多に囁く。
「今だ!行こうぜ!」
奏多は冷静に周囲を確認しながら頷いた。
「うん。でも慌てないで、音を立てないように気をつけて。」
澪も深呼吸をして小さく頷く。
「わかった…行こう。」
澪たちは息を潜め、慎重に足音を殺しながら、警備兵たちの視界から外れるようにして門へと近づいた。
風が止み、周囲は不気味なほど静まり返っている。
聞こえるのは、自分の心臓の鼓動と、ごくわずかな衣擦れの音だけだ。
木々の間から視界が開け、目の前にはヘスペリデスの園の入り口が見えてきた。
だが、足取りはさらに慎重になり、一歩一歩が重く、緊張感が肌を刺すようだった。
全員が互いに無言のまま、ただ前を目指して進んでいく。
「誰だ…?」
その時、門の近くに立つ警備兵が、ふと振り返った。
澪が咄嗟に、地面に転がっていた小石を拾い、反対方向へと放り投げた。
石が地面を叩く音に反応して、警備兵はそちらを警戒する。
奏多が澪に目配せをし、小さく呟く。
「ナイス。」
澪は緊張した表情ながらも、少しだけ微笑みを浮かべた。
ヘスペリデスの園の奥へ足を踏み入れた瞬間、澪たちは思わず足を止めた。
そこに広がるのは、まるで夢のような光景だった。
色とりどりの果実が鈴なりに枝を飾り、柔らかな光を受けてきらきらと輝いている。
果樹の間を吹き抜けるかすかな風が、甘い香りを運び、木々の葉をそっと揺らす。
その静けさは、この場所が異世界のような神秘を湛えていることを一層際立たせていた。
誰も言葉を発することなく、その美しさに一瞬だけ見入っていた。
夏輝が声を潜めながら感嘆する。
「すげえ…これがヘスペリデスの園か…。」
その時、遠くから再びカラスの鳴き声が響いた。
それは、ユーマが果樹園の奥へ誘導するように鳴いているかのようだった。
奏多が目を細め、前方を見据える。
「ユーマが時間を稼いでくれてる。この隙に黄金のリンゴを探そう。」
澪たちは気を引き締め、静かに歩みを進めていった。
果樹園の中心に近づくと、一際強い輝きを放つ果実が視界に入った。
黄金に輝く大きなリンゴが一本の大樹に実り、その周囲には神々しい静寂が漂っている。
澪が息を呑み、指を差して小声で言った。
「あれ…黄金のリンゴじゃない?」
夏輝は目を輝かせながら続ける。
「間違いない!絶対あれだよ!」
その瞬間、低く唸る音が耳に届いた。
反射的に視線を向けると、黄金のリンゴが実る木の幹に巨大な蛇が巻き付いていた。
鱗は光を反射し、不気味な輝きを放つ。
尾は地面に垂れ、幹を守るようにしっかりと絡みついている。
鋭い目が澪たちをじっと見据え、空気が一気に張り詰めた。
奏多が静かに呟いた。
「多分、ラドンだと思う。ギリシャ神話で黄金のリンゴを守る蛇って言われてるやつだよ。」
澪が少し怯えた声で尋ねる。
「こんなのまでいるなんて…。どうするの?」
夏輝は目を細めてラドンを見つめる。
「でかいな…。でも、なんとかあのリンゴを取らなきゃだろ?」
奏多は少し考え込んでから言った。
「正面から行くのは、危険だと思う。ただの見張り役じゃない気がする。攻撃してくる可能性もあるよ。」
その時、ラドンの目がギラリと光り、こちらを見据えた。
その視線だけで空気が張り詰め、澪たちは無意識に足を止める。
澪が小声で呟く。
「…本当に、近づく方法なんてあるの?」
奏多は冷静に辺りを見渡し、静かに提案した。
「ラドンを注意散らす方法を考えよう。誰かがラドンの気を引いている間に、リンゴを取るんだ。」
夏輝が自信ありげに手を挙げる。
「よし、俺が行く!ラドンを引きつけてやるよ!」
澪が驚いたように声を上げた。
「え、夏輝が!?危険すぎるよ!」
突然、ユーマがカラスの姿のまま低空から滑り込むように現れ、夏輝の前に降り立った。
翼を広げると、そのまま言葉を続けた。
「いや、俺がやる。カラスの姿なら目立たずに動けるし、すばしっこさも負けないぜ。」
奏多が少し考え込み、頷いた。
「確かに、ユーマが適任かも。だけど、絶対に無理はしないで。僕たちもサポートする。」
ユーマは鋭く頷き、翼を軽く羽ばたかせた。
「任せとけ。俺があいつの気を引いてる間に、リンゴを取れよな!」
澪たちが相談している間も、ラドンの鋭い目は光り続け、その巨体はじっと動かずに構えていた。
まるで一行の一挙一動を見透かしているかのような気配が漂う。
巨大な蛇が果樹を守るように身を張り巡らせているその姿は、澪たちにとって大きな壁となって立ちはだかっていた。
ユーマは空中を旋回しながら翼を羽ばたかせ、鋭い目でラドンをじっと見据えた。
「でかいけど、俺ならやれる。おまえら、準備しとけよ。」
だが、その瞬間、ユーマの体が突然ふわりと揺れ、空中でピタリと止まる。
「えっ、なんだ?」
ユーマがそう言い終わる前に、彼のカラスの姿が急激に光を放ち始めた。
そして、その光が一瞬で弾けると、ユーマはカラスの姿から元の黒猫の姿に戻って地面に落ちた。
「ちょ、ちょっと待て!まだ時間あると思ってたんだけど!」
ユーマが慌てて起き上がり、しっぽをピンと立てながら叫ぶ。
夏輝が目を見開いて驚きの声を上げる。
「おいおい、タイムアップかよ!こんな時に戻るなよ!」
ユーマは鋭く睨み返し、少し苛立った声で言い返した。
「俺だって戻りたくて戻ったわけじゃねーよ!」
ラドンは一瞬その動きに気づいたのか、重々しい体を少しだけ動かした。
鋭い目でユーマを睨みつけ、その巨大な尾をゆっくりと持ち上げる。
奏多が冷静に状況を把握し、小声で指示を出した。
「ユーマ、そこから動かないで。そのままで気を引いてくれるだけでいい。夏輝、澪、僕たちはリンゴを狙う!」
ユーマは唇を尖らせて抗議するように言った。
「いやいや、俺ただの猫だぞ?こんなデカい蛇の気を引けって、無理だろ?」
夏輝が笑いながらユーマに言った。
「お前、猫のお前にしかできないこともあるだろ?頼むぞ!」
「お前、褒めてるのかバカにしてるのかわかんねーけど…!」
ユーマは小声でぼやきつつ、仕方なくその場に留まった。
澪が優しく微笑み、ユーマに言葉を添える。
「ユーちゃん、お願い。私たちはその間に動くから。」
奏多、夏輝、澪は息を潜め、慎重にラドンの注意が完全にユーマへ向く瞬間を伺っていた。
巨大な蛇の目はユーマを鋭く見据え、わずかに動く尾が地面を這う音が耳を刺す。
その隙を突き、澪たちは静かに黄金のリンゴの樹へと歩を進めていく。
ユーマは仕方なくその場で尻尾を大きく揺らしながら、ラドンの視線を正面から受け止めていた。
その猫らしい動きに反応するように、ラドンの目が僅かに光り、長い舌がチロっと覗いて空中を探るように動いた。
鋭い瞳がユーマに固定される。
「おい、完全に餌認定されてんじゃねーか…!」
ユーマが小声でぼやいたその時、ラドンの尾が地面に叩きつけられた。
重い音が響き、緊張感が一気に高まる。
夏輝が小声で奏多に囁いた。
「今がチャンスじゃね?行こうぜ!」
奏多は慎重に頷き、澪と一緒にリンゴの樹に向かって一歩を踏み出す。
しかし、その瞬間――。
ラドンが体を大きくくねらせ、その鋭い目が澪たちのわずかな動きを捉えたかのようにギラリと光る。
視線がユーマから外れ、ゆっくりと澪たちに向けられた。
「まずい…バレたかもしれない!」
奏多が低く鋭い声で囁き、足を止める。
澪は思わず息を呑み、震える声で小さく呟いた。
「ど、どうしよう…。ラドン、こっちを見てる…!」
夏輝が息を呑み、肩越しにラドンを見上げながら声を上げた。
「これ、本当にどうすんだよ!?おい、ユーマ、何とかしろって――!」
ユーマが猫らしい目を大きく見開き、渾身の力で叫んだ。
「俺だってどうすりゃいいんだよー!!」
ユーマの叫びが響く中、ラドンの尾が再び大きく地面を叩きつけた。
その衝撃で地面が揺れ、澪たちの足元に緊張が走る。
ラドンの巨大な頭が澪たちに向けてわずかに前進し、その動きが静寂を引き裂くような圧力を生む。
澪たちは息を潜め、次の瞬間に備えるしかなかった。
ユーマが飛び立ってから数分、まだ警備兵たちに目立った動きはない。
澪が小さな声で呟く。
「ユーちゃん、大丈夫かな…。」
奏多は澪を安心させるように微笑みながら、低い声で返した。
「ユーマならちゃんとやってくれるよ。」
その時、門の向こう側で大きなカラスの鳴き声が響き渡った。
鋭く甲高いその声に驚いた警備兵たちは一斉に動き出し、音のする方向に目を向ける。
園の奥へと鋭い飛翔を見せるカラスの姿が、日差しを浴びて黒い影となる。
その翼の動きは警備兵たちの注意を完全に引きつけていた。
警備兵の一人が鋭く声を上げた。 「おい!あの鳥、妙だぞ!追え!」
数人の兵士が槍を手に、園の奥へ走り去る。
その場に残った警備兵はわずか二人だけになった。
夏輝が目を輝かせて奏多に囁く。
「今だ!行こうぜ!」
奏多は冷静に周囲を確認しながら頷いた。
「うん。でも慌てないで、音を立てないように気をつけて。」
澪も深呼吸をして小さく頷く。
「わかった…行こう。」
澪たちは息を潜め、慎重に足音を殺しながら、警備兵たちの視界から外れるようにして門へと近づいた。
風が止み、周囲は不気味なほど静まり返っている。
聞こえるのは、自分の心臓の鼓動と、ごくわずかな衣擦れの音だけだ。
木々の間から視界が開け、目の前にはヘスペリデスの園の入り口が見えてきた。
だが、足取りはさらに慎重になり、一歩一歩が重く、緊張感が肌を刺すようだった。
全員が互いに無言のまま、ただ前を目指して進んでいく。
「誰だ…?」
その時、門の近くに立つ警備兵が、ふと振り返った。
澪が咄嗟に、地面に転がっていた小石を拾い、反対方向へと放り投げた。
石が地面を叩く音に反応して、警備兵はそちらを警戒する。
奏多が澪に目配せをし、小さく呟く。
「ナイス。」
澪は緊張した表情ながらも、少しだけ微笑みを浮かべた。
ヘスペリデスの園の奥へ足を踏み入れた瞬間、澪たちは思わず足を止めた。
そこに広がるのは、まるで夢のような光景だった。
色とりどりの果実が鈴なりに枝を飾り、柔らかな光を受けてきらきらと輝いている。
果樹の間を吹き抜けるかすかな風が、甘い香りを運び、木々の葉をそっと揺らす。
その静けさは、この場所が異世界のような神秘を湛えていることを一層際立たせていた。
誰も言葉を発することなく、その美しさに一瞬だけ見入っていた。
夏輝が声を潜めながら感嘆する。
「すげえ…これがヘスペリデスの園か…。」
その時、遠くから再びカラスの鳴き声が響いた。
それは、ユーマが果樹園の奥へ誘導するように鳴いているかのようだった。
奏多が目を細め、前方を見据える。
「ユーマが時間を稼いでくれてる。この隙に黄金のリンゴを探そう。」
澪たちは気を引き締め、静かに歩みを進めていった。
果樹園の中心に近づくと、一際強い輝きを放つ果実が視界に入った。
黄金に輝く大きなリンゴが一本の大樹に実り、その周囲には神々しい静寂が漂っている。
澪が息を呑み、指を差して小声で言った。
「あれ…黄金のリンゴじゃない?」
夏輝は目を輝かせながら続ける。
「間違いない!絶対あれだよ!」
その瞬間、低く唸る音が耳に届いた。
反射的に視線を向けると、黄金のリンゴが実る木の幹に巨大な蛇が巻き付いていた。
鱗は光を反射し、不気味な輝きを放つ。
尾は地面に垂れ、幹を守るようにしっかりと絡みついている。
鋭い目が澪たちをじっと見据え、空気が一気に張り詰めた。
奏多が静かに呟いた。
「多分、ラドンだと思う。ギリシャ神話で黄金のリンゴを守る蛇って言われてるやつだよ。」
澪が少し怯えた声で尋ねる。
「こんなのまでいるなんて…。どうするの?」
夏輝は目を細めてラドンを見つめる。
「でかいな…。でも、なんとかあのリンゴを取らなきゃだろ?」
奏多は少し考え込んでから言った。
「正面から行くのは、危険だと思う。ただの見張り役じゃない気がする。攻撃してくる可能性もあるよ。」
その時、ラドンの目がギラリと光り、こちらを見据えた。
その視線だけで空気が張り詰め、澪たちは無意識に足を止める。
澪が小声で呟く。
「…本当に、近づく方法なんてあるの?」
奏多は冷静に辺りを見渡し、静かに提案した。
「ラドンを注意散らす方法を考えよう。誰かがラドンの気を引いている間に、リンゴを取るんだ。」
夏輝が自信ありげに手を挙げる。
「よし、俺が行く!ラドンを引きつけてやるよ!」
澪が驚いたように声を上げた。
「え、夏輝が!?危険すぎるよ!」
突然、ユーマがカラスの姿のまま低空から滑り込むように現れ、夏輝の前に降り立った。
翼を広げると、そのまま言葉を続けた。
「いや、俺がやる。カラスの姿なら目立たずに動けるし、すばしっこさも負けないぜ。」
奏多が少し考え込み、頷いた。
「確かに、ユーマが適任かも。だけど、絶対に無理はしないで。僕たちもサポートする。」
ユーマは鋭く頷き、翼を軽く羽ばたかせた。
「任せとけ。俺があいつの気を引いてる間に、リンゴを取れよな!」
澪たちが相談している間も、ラドンの鋭い目は光り続け、その巨体はじっと動かずに構えていた。
まるで一行の一挙一動を見透かしているかのような気配が漂う。
巨大な蛇が果樹を守るように身を張り巡らせているその姿は、澪たちにとって大きな壁となって立ちはだかっていた。
ユーマは空中を旋回しながら翼を羽ばたかせ、鋭い目でラドンをじっと見据えた。
「でかいけど、俺ならやれる。おまえら、準備しとけよ。」
だが、その瞬間、ユーマの体が突然ふわりと揺れ、空中でピタリと止まる。
「えっ、なんだ?」
ユーマがそう言い終わる前に、彼のカラスの姿が急激に光を放ち始めた。
そして、その光が一瞬で弾けると、ユーマはカラスの姿から元の黒猫の姿に戻って地面に落ちた。
「ちょ、ちょっと待て!まだ時間あると思ってたんだけど!」
ユーマが慌てて起き上がり、しっぽをピンと立てながら叫ぶ。
夏輝が目を見開いて驚きの声を上げる。
「おいおい、タイムアップかよ!こんな時に戻るなよ!」
ユーマは鋭く睨み返し、少し苛立った声で言い返した。
「俺だって戻りたくて戻ったわけじゃねーよ!」
ラドンは一瞬その動きに気づいたのか、重々しい体を少しだけ動かした。
鋭い目でユーマを睨みつけ、その巨大な尾をゆっくりと持ち上げる。
奏多が冷静に状況を把握し、小声で指示を出した。
「ユーマ、そこから動かないで。そのままで気を引いてくれるだけでいい。夏輝、澪、僕たちはリンゴを狙う!」
ユーマは唇を尖らせて抗議するように言った。
「いやいや、俺ただの猫だぞ?こんなデカい蛇の気を引けって、無理だろ?」
夏輝が笑いながらユーマに言った。
「お前、猫のお前にしかできないこともあるだろ?頼むぞ!」
「お前、褒めてるのかバカにしてるのかわかんねーけど…!」
ユーマは小声でぼやきつつ、仕方なくその場に留まった。
澪が優しく微笑み、ユーマに言葉を添える。
「ユーちゃん、お願い。私たちはその間に動くから。」
奏多、夏輝、澪は息を潜め、慎重にラドンの注意が完全にユーマへ向く瞬間を伺っていた。
巨大な蛇の目はユーマを鋭く見据え、わずかに動く尾が地面を這う音が耳を刺す。
その隙を突き、澪たちは静かに黄金のリンゴの樹へと歩を進めていく。
ユーマは仕方なくその場で尻尾を大きく揺らしながら、ラドンの視線を正面から受け止めていた。
その猫らしい動きに反応するように、ラドンの目が僅かに光り、長い舌がチロっと覗いて空中を探るように動いた。
鋭い瞳がユーマに固定される。
「おい、完全に餌認定されてんじゃねーか…!」
ユーマが小声でぼやいたその時、ラドンの尾が地面に叩きつけられた。
重い音が響き、緊張感が一気に高まる。
夏輝が小声で奏多に囁いた。
「今がチャンスじゃね?行こうぜ!」
奏多は慎重に頷き、澪と一緒にリンゴの樹に向かって一歩を踏み出す。
しかし、その瞬間――。
ラドンが体を大きくくねらせ、その鋭い目が澪たちのわずかな動きを捉えたかのようにギラリと光る。
視線がユーマから外れ、ゆっくりと澪たちに向けられた。
「まずい…バレたかもしれない!」
奏多が低く鋭い声で囁き、足を止める。
澪は思わず息を呑み、震える声で小さく呟いた。
「ど、どうしよう…。ラドン、こっちを見てる…!」
夏輝が息を呑み、肩越しにラドンを見上げながら声を上げた。
「これ、本当にどうすんだよ!?おい、ユーマ、何とかしろって――!」
ユーマが猫らしい目を大きく見開き、渾身の力で叫んだ。
「俺だってどうすりゃいいんだよー!!」
ユーマの叫びが響く中、ラドンの尾が再び大きく地面を叩きつけた。
その衝撃で地面が揺れ、澪たちの足元に緊張が走る。
ラドンの巨大な頭が澪たちに向けてわずかに前進し、その動きが静寂を引き裂くような圧力を生む。
澪たちは息を潜め、次の瞬間に備えるしかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
異世界転移魔方陣をネットオークションで買って行ってみたら、日本に帰れなくなった件。
蛇崩 通
ファンタジー
ネットオークションに、異世界転移魔方陣が出品されていた。
三千円で。
二枚入り。
手製のガイドブック『異世界の歩き方』付き。
ガイドブックには、異世界会話集も収録。
出品商品の説明文には、「魔力が充分にあれば、異世界に行けます」とあった。
おもしろそうなので、買ってみた。
使ってみた。
帰れなくなった。日本に。
魔力切れのようだ。
しかたがないので、異世界で魔法の勉強をすることにした。
それなのに……
気がついたら、魔王軍と戦うことに。
はたして、日本に無事戻れるのか?
<第1章の主な内容>
王立魔法学園南校で授業を受けていたら、クラスまるごと徴兵されてしまった。
魔王軍が、王都まで迫ったからだ。
同じクラスは、女生徒ばかり。
毒薔薇姫、毒蛇姫、サソリ姫など、毒はあるけど魔法はからっきしの美少女ばかり。
ベテラン騎士も兵士たちも、あっという間にアース・ドラゴンに喰われてしまった。
しかたがない。ぼくが戦うか。
<第2章の主な内容>
救援要請が来た。南城壁を守る氷姫から。彼女は、王立魔法学園北校が誇る三大魔法剣姫の一人。氷結魔法剣を持つ魔法姫騎士だ。
さっそく救援に行くと、氷姫たち守備隊は、アース・ドラゴンの大軍に包囲され、絶体絶命の窮地だった。
どう救出する?
<第3章の主な内容>
南城壁第十六砦の屋上では、三大魔法剣姫が、そろい踏みをしていた。氷結魔法剣の使い手、氷姫。火炎魔法剣の炎姫。それに、雷鳴魔法剣の雷姫だ。
そこへ、魔王の娘にして、王都侵攻魔王軍の総司令官、炎龍王女がやって来た。三名の女魔族を率いて。交渉のためだ。だが、炎龍王女の要求内容は、常軌を逸していた。
交渉は、すぐに決裂。三大魔法剣姫と魔王の娘との激しいバトルが勃発する。
驚異的な再生能力を誇る女魔族たちに、三大魔法剣姫は苦戦するが……
<第4章の主な内容>
リリーシア王女が、魔王軍に拉致された。
明日の夜明けまでに王女を奪還しなければ、王都平民区の十万人の命が失われる。
なぜなら、兵力の減少に苦しむ王国騎士団は、王都外壁の放棄と、内壁への撤退を主張していた。それを拒否し、外壁での徹底抗戦を主張していたのが、臨時副司令官のリリーシア王女だったからだ。
三大魔法剣姫とトッキロたちは、王女を救出するため、深夜、魔王軍の野営陣地に侵入するが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる