時代を越えてお宝探し!?黒猫と僕らの時空大冒険

空道さくら

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第1章

第21話:私たちは諦めません

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 ひんやりと澄んだ朝の空気が満ちる中、木々の影が地面に柔らかな模様を描いている。

 ミオたちはヘラクレスと共に、静かな森の中を抜けながら、ヘスペリデスの園を目指して歩いていた。



「ところで……」
 澪たちの最後尾を歩いていたヘラクレスが、静かに口を開いた。

 その声は低く落ち着いていながらも、どこか重みを感じさせた。

「どうしたんですか?」
 夏輝ナツキが首をかしげて振り返ると、ヘラクレスは足を緩めることなく澪たちを見つめていた。

「君たちは――ヘスペリデスの園がどこにあるのか、知っているのか?」
 低く落ち着いた声が、森の静寂に溶けていく。

 その問いに、澪たちは一瞬視線を交わした。

 奏多カナタが冷静に口を開く。
「……はい。昨日、僕たちは園の中に入りました。」

「なんだと?」
 ヘラクレスの目がわずかに見開かれる。
「ヘスペリデスの園は世界の西の果て――そこまで行くのは並大抵のことではないはずだが……よく辿り着いたな!」

 その驚きに、夏輝は少し戸惑いながら、控えめにそう言った。
「えっと……神殿の裏手に移築されてるんですよ。ヘラクレスさん、知らなかったんですか?」

「むっ……!」
 ヘラクレスは一瞬口ごもり、次の言葉が出てこない。

 そして、目を逸らしながらごまかすように豪快に笑った。
「は、ははは!そうだったか!いやあ、最近は神殿周りをよく見ておらんかったからな!」

「ふん、よく言うぜ。」
 ユーマが尻尾をぴくりと揺らしながら、呆れたようにヘラクレスを見上げた。

「こら、ユーマ……!」
 夏輝が慌ててフォローしようとするが、ユーマはふんっと鼻を鳴らし、すました顔で目を細める。

 澪は思わず小さく苦笑した。

「まあ、そんなわけで園への道はもう分かってるんですよ!」
 夏輝が明るい声で話し、軽快な足取りで前を進む。

「そうか……それなら話が早いな。」
 ヘラクレスが軽く頷いた。

「私たちは、黄金のリンゴの木のそばまで行ったんです。」
 澪が真剣な表情でヘラクレスを見上げ、言葉を続ける。
「だけど……」

 その声には、昨日の記憶が蘇るかのような緊張が滲んでいた。

「そこには、ラドンがいたんです。」
 夏輝が口元を引き結び、拳をぎゅっと握りしめながら言葉を引き継ぐ。
「すごく強そうで……あの場ではどうしようもなくて。」

 夏輝の目には悔しさが浮かんでおり、その声には、自分たちの無力さを痛感した苦い思いが込められていた。

「ラドン、か……」
 ヘラクレスは深く顎に手を当て、しばし考え込む。
「それは黄金のリンゴを守るため、神々が遣わした大蛇だ。」

 澪は息をのみ、少しだけ肩を落とした。
「……私たちだけじゃ、どうにもできなくて。」

 その言葉を聞き、ヘラクレスが静かに頷いた。
「安心しろ。私がついている。」

 低く落ち着いた声は、澪たちの不安を和らげるようだった。
「黄金のリンゴを手に入れるため、一緒にこの試練を乗り越えよう。」

「ありがとうございます!」
 夏輝が笑顔で頷き、大きく息をついた。
「ヘラクレスさんが一緒なら、きっとなんとかなる!」

「だが、油断は禁物だ。」
 ヘラクレスが穏やかながらも鋭い視線を送る。
「ラドンは強大な守護者だ。力だけではなく、知恵も必要になるだろう。」

「知恵、か……」
 奏多が軽く眉を寄せ、何かを考え込むように呟く。
「実際に目の前で見たけど、正面から戦うのは無理そうだね。」

 澪は小さく頷き、前を向いた。
「でも、私たちは諦めません。黄金のリンゴを必ず手に入れます。」

 その言葉にヘラクレスも力強く頷く。
「その覚悟、しかと受け取った。さあ、ヘスペリデスの園へ急ごう。」

 澪たちは再び歩き始めた。

 前方に広がる森の向こうには、昨日見た黄金のリンゴの木が待っている。
 その道の先には、恐るべき大蛇ラドン――彼らが越えねばならない試練が待ち構えていた。



 澪たちは広がる美しいヘスペリデスの園の前へと辿り着いた。
 昨日も見たこの場所――柔らかな光が花々に降り注ぎ、甘い香りが風に乗って漂ってくる。

 だが、園の入り口には屈強な警備兵が並び立ち、昨日以上に警戒が強まっていた。
 その鋭い視線が澪たちに注がれ、空気が一層張り詰める。

「ヘラクレス様!」
 警備兵の一人が気付き、敬意を示しながらも少し困惑した表情を浮かべる。
「どうなさいましたか?」

 ヘラクレスが堂々と澪たちを振り返り、一歩前に出る。
「友人を案内しようと連れてきた。入れてくれ。」

「……申し訳ありませんが、ヘラクレス様。」
 警備兵は少し言いにくそうに言葉を続けた。
「昨日、この園に侵入者が現れ、追跡する事態となりました。そのため、警備を強化しております。」

「なに?」
 ヘラクレスが眉をひそめ、鋭い声で問い返した。

 澪と夏輝は気まずそうに目を合わせた。

「……それ、僕たちのことだね。」
 奏多が静かに呟いた。

「ふむ……」
 ヘラクレスは眉を上げ、警備兵を鋭く見据えながら、堂々とした声で言い放った。
「この者たちは関係ない。ここへ来るのは初めてだ。」

 警備兵は一瞬、口をつぐんだが、その視線はなおも澪たちに向けられていた。
「……そうは言われましても、昨夜の侵入者も子供だったと聞いております。」

 疑いを隠そうともしないその言葉に、澪たちは肩をこわばらせる。

「言ったはずだ。彼らは無関係だ。」
 ヘラクレスの言葉はさらに重く、警備兵を静かに圧倒する。

 それでも警備兵は澪たちを一瞥し、眉をひそめつつも、深く息をついて道を譲った。
「……本当に、初めてですかねぇ……。」

 警備兵の鋭い視線が澪たちに向けられると、自然と肩をこわばらせた。
 足取りも慎重になり、まるで自分たちが監視下に置かれているのを実感しているかのようだ。

 しかし、ヘラクレスの堂々とした背中を見ていると、不思議と緊張が和らいでいくのを感じた。

「行くぞ。」  
 ヘラクレスの力強い声に背中を押されるように、澪たちは歩を進めた。

 警備兵はしばらく澪たちの背中を見つめていたが、最終的に視線を外した。

 だが、その様子を見ながら、ユーマが小さく鼻を鳴らして言った。  
「さすが英雄様、言えばなんでも通るんだな。ほんと、便利な存在だよ。」  

「ちょっと、ユーマ!」  
 澪が慌てて小声で制止するも、ユーマは尻尾をふんっと揺らして歩き続ける。

「さすがヘラクレスさんだな!」
 夏輝が嬉しそうに笑いながら、軽く拳を握る。

「簡単に通れたのは幸運だよ。」
 奏多が納得した様子で言った。

 ヘラクレスがちらりとユーマを見やり、微笑みながら言う。  
「実に口の達者な黒猫だ。」  

「どうも。」  
 ユーマは誇らしげに尻尾を一振りし、すました顔で歩き続ける。

 澪たちは少し笑みを交わしながら、再び園の中へと足を踏み入れた。  

 柔らかな光が花々に降り注ぎ、甘い香りが風に乗って漂ってくる。
 神秘的な空間が、試練の始まりを告げるように彼らを迎えていた。
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