重なる世界の物語

えんとま

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闇に染まる森

アースガルドを襲う波

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「今度の依頼はあのアースガルドの街からよ」

ここはギルド猟犬の牙ハウンドファングの一階。

依頼を持って変えてきたシリエ、雲仙に加え、用を終え戻ってきたナタリア、ドイル、アリス、クラインの4人はテーブルを囲み依頼内容を聞いていた。

「アースガルドの街ですか。あそこはアスクランほどではありませんがそこそこ大きい街ですし、立派なギルドもありましたが…猟犬の牙ハウンドファングに依頼を出してきたということは、相当困難な状況にあるということですね」

アリスはこの街のことを知っているようだ。

「えぇ、その通りよ。この依頼のランクはB +ビープラスBBダブルビー、かなり高いわね」

「マスター、うちに来る依頼でランクが高いのはいつものことだわ。いいから内容の方を教えてよ」

ナタリアがシリエを急かす。

かなりせっかちなんだな、と会ったばかりのクラインは率直な感想を心の中で呟いた。

「はいはい、今この街には大量の魔物が押し寄せてきているの。街のギルドは街を守るために冒険者を展開しているみたいだけど、あまりに連日襲われるものでかなり疲弊してしまっているみたいね。最近じゃ高ランクの魔物も混じってきて、防衛ラインも崩壊一歩手前よ。このままじゃ国の軍を動かす必要まで出てくるわ」

国の軍。王国騎士団のことだろう。基本的に国は街の安全はギルドに委託しているので、軍を動かすのは国を脅かす存在に対してのみである。だが、ギルドで手に負えずどうしようもないときは国に申請して軍を動かしてもらうケースがまれにあるのだ。

「我輩たちが最後の砦か。ここで失敗すれば軍が動く。国も出来る限り王国騎士団の出動は避けたいだろう。奴らは魔物より国を相手にする立場だからな」

ふとクラインは思ったことを口にする。

「今回の件、またしても例のアルフェウスの仕業でしょうか」

「アルフェウス?何よそれ」

ナタリアは頭にハテナを浮かべる。
そうか、ナタリアはさっきここについたばかりで知らなかった。クラインはアルパクイルの村での人狼騒動と、キースの話を二人に聞かせた。

「へー、なるほどね。ってことは私たちが倒したジャバウォックもアルフェウスの仕業だったのね。これで納得いったわ」

なにやら腑に落ちたと納得するナタリア。

「ジャバウォックというと醜い竜として知られる魔物じゃな。随分珍しい魔物に出くわしたんじゃのう」

「出くわしたというよりは向こうから襲ってきたという方が正しいぞ雲仙殿。我輩たちがいった街はその街だけ霧に覆われており、その街中をジャバウォックは徘徊しながら人を襲っておったのだ。今の話だと、アルフェウスだとかいう奴らが手引きしていたと思って間違いなかろう」

どうやら事態はそれなりに深刻なようだ。人狼の一件でアルフェウスの計画を阻止していたと思っていたが、すでに様々な地域で同時に動き始めていたらしい。

ナタリアとドイルの話を聞いて、シリエは今回の依頼に話を戻す。

「そうねぇ。今回の依頼に関してはその辺が微妙なの。アースガルドはもともと魔物が多く住まう大樹林が近くにあって、時折魔物は街を襲っていたという話よ。今回の件が果たしてアルフェウスの仕組んだことかどうかはまだ断言できないわね」

ちなみに…と雲仙が話を止める。

「ワシは今回同行できん。別の依頼で単独行動するでな。お前さんたち4人に任せたいのじゃが、構わんじゃろうか」

「えぇ、構いません。4人もいれば問題ないでしょう」

キリッとアリスが答える。

猟犬の牙ハウンドファングの半数を向かわせて解決できないなんてギルドの名折れよ。任せなさい、確実にこなすわ」

自信満々に答えるナタリア。
4人は依頼に向かう前の準備に取りかかった。

・・・・・・・・
・・・・・
・・・


アスクランを出てかなり馬を走らせている。距離的にはもう少しなはずだが、思いのほかアースガルドは離れたところにあるようだ。

馬で行くとドイルが重くて一人だけ遅れてしまうため、今回も馬車を使っての移動だ。

「やだ、すごい可愛い使い魔じゃない!」

馬車の中ではナタリアにせがまれクラインがフィリィを呼び出しているところだった。

「フィリィと言います。皆さん使い魔を戦闘の中で使っていますが、僕の場合それも叶いそうになくって…」

「いいと思いますよ。こうして癒されることができるのですから、それだけで十分です」

アリスの顔もふやけている。女性というのは小動物には目がないのだろうか。

その時だった。

まだアースガルドには着いていないが馬車が急に止まってしまう。

「はて、やはり我輩が重すぎたか?」

ドイルは余計な心配をする。そういうわけではないようだ。

馬車を操っていた御者ぎょしゃが声を荒げる。

猟犬の牙ハウンドファングの皆様、魔物です!魔物が出ました!」

その声にアリス、クライン、ナタリアが素早く馬車を出る。遅れてドイルが出てきた。

確かに魔物が道を塞いでいる。

人型だか醜悪な顔をし悪臭を放ている。
一匹はかなり大柄で下顎から上に向かって無骨な牙が伸びている。

そのほかに4匹、同じような見た目だが牙はなく小柄な魔物がいる。

皆、手に棍棒のような武器を持ち腰布を巻いている。

その悪臭にアリスは顔をしかめた。

「オーガとゴブリンですね。こんなところで出くわすとは思いませんでした」

全員武器を構える。

ナタリアは距離を置いて腕に装備しているクロスボウを構えた。

「グルルゥ、グォォォオ!」

オーガの咆哮とともにゴブリンたちが飛びかかる。

クラインはグリフォンダガーで飛びかかるゴブリンたちの包囲網をすっ飛んで、オーガのもとに移動する。

ナタリアはゴブリンをクロスボウで撃ち落としカバーする。

ドイルが大剣で道を開き、アリスはそこからオーガのもとへ向かう。

「オォオォォオオ!」

オーガは一瞬で目の前に現れたクラインに驚き、反射的に棍棒を振り回す。

紙一重でそれを交わすと、巨大な棍棒に飛び乗り腕を伝って駆け上がるクライン。

そのままオーガの両目をダガーで斬りつける!

「ガァァアアァアァアア!」

激痛と暗闇に混乱するオーガのもとにアリスが到着する。

オーガの背後に回ると足の腱を斬りさばく。

たまらず倒れこむオーガ。その隙にオーガの目の前に出てきたクラインは、槍を構えると地面に突き立てた。

オーガが倒れ込んでくる。
クラインはグリフォンダガーでその場から離れる。槍の矛先にまっすぐ倒れこむオーガは、そのまま自身の体重に任せて槍に突き刺さり、そのまま絶命した。

「数がいてもそんなものか!歯ごたえがないぞ!」

一方背後ではドイルが大剣を振り回しゴブリンたちをバッタバッタなぎ倒していく。宙に飛ばされたところをナタリアが矢で射っていく。ゴブリンたちは空中で塵となり消えていった。

クラインは魔物が全滅したことを確認する。

「もういないみたいですね。先に進みましょうか」

「えぇそうね。それにしても貴方達2人息ぴったりじゃない。相当2人で一緒に依頼をこなしてるみたいね」

「うむ、お互いを信じあうだけコンビネーションはより輝く。仲が良いのはいいことだな!」

ガハハハと笑うドイル。

アリスは顔を真っ赤にしている。

「そ、それよりこんなところでオーガにゴブリンまで、これも街に魔物がなだれ込んでいるその一端でしょうか!」

無理やり話を変えるアリアス。
なんでも見た目や動作に動揺が出てしまうアリスに、ナタリアはニヤニヤが止まらなかった。
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