重なる世界の物語

えんとま

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闇に染まる森

封印された力

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『えぇ、わかったわ。貴方の武器は一番多用して欲しくないのだけど仕方ないわね。武器の使用を許可するわ』

「すいません、無茶はしないようにするので」

森の魔女ドロシーの使い魔を追いながら、アリスは森の中を走る。

本領発揮できないドロシーと二人で狂化した森の王を退けるのは困難と判断し、シリエに専属武器の使用許可を煽ったのだ。

使い魔を通した通信の向こう側からは、シリエの不安げな声が聞こえてくる。

『アリス、貴方はあれを使うのも三年ぶりよね。、解いてもニノ門までよ』

「はい、分かっています。それでは本格的に森の王を追っていくので、一旦切りますね。また連絡します」

そういうとアリスは通信を切り使い魔に呼びかける。

「シンク、一ノ門を解きます」

アリスの中で何かがカチッと音を立てる。その瞬間、ズッと魔力が這ってくるのがわかった。

服から出る腕には黒い紋が肩に伸び、アリスの銀髪の端の方が少しばかり黒に染まっている。

この感じ、久しぶりだな…

アリスは自身の身体が強化されたのを確認すると、思い切り地面を蹴った。

先ほどとは段違いの速度で走り始めたアリスは急いで森の王の元へと向かっていく。

・・・・・・・・
・・・・・
・・・


10分ほど走り抜いただろうか。
アリスはある異変に気付く。あたりの木々や草花が枯れ落ちているのだ。
森の王が近くにいる証だ。

ザザザザザザッ

なにかが木々を抜けこちらに猛スピードで向かってくる音がする。
とっさにアリスは武器を手に身構える。

「!?ドロシーさん!?」

目の前に現れたのはドロシーだった。
吹き飛ばされてきたその先をみると、そこには森の王の姿があった。

「アリス…ごめんなさい、止めきれなかったわ…」

「ドロシーさん、今は休んでください。ここから先は私がやります!」

そういうとアリスは再び武器を構え、森の王めがけて走り出した。

アリスは体のうちに封印している力の一端を解放しているため、その動きは普段の比ではない。しかし…

「ウボォオオオオオオオオオ!!!」

森の王は枝の伸びる四肢をぶん回し、アリスを薙ぎ払う。いくら身体能力が向上したとはいえ、森の王をつなぎとめるのにはパワー不足だった。

縦横無尽な森の王の攻撃に、アリスの体は宙へ放り出される。

「クッ…シンク!!」

アリスは辛うじて身体を反転させ、森の王へ向き直る。

「ニノ門、解放します!」

ほんの一瞬、あたりが闇に包まれた気がした。
少し離れたところに伏していたドロシーは何が起きたのかわからず、辺りを見回す。

その目に移ったのは、地面に倒れこむ森の王。
そして…

「アリス…?その姿…」

アリスの腕からは漆黒の、ロープのような影が伸びていた。影の先は武器の柄につながっているようだ。

肩から見えていた刺青のような黒い紋も、さっきより腕まで侵食しており、影もここから伸びているようだ。
銀色の髪も先ほどよりはっきりと黒に染まってきている。

「グゥウウ、ガァアアアアア!」

転倒させられ頭にきたのか、森の王は立ち上がると同時に先ほどよりも苛烈に暴れ始める!

「うぉおおおおおおおお!」

負けじとアリスも森の王を見据え吠える。

森の王の腕を双剣でいなしつつ、腕に飛び乗り肩へと走る。
左手に持つ剣を首に深くつきたて、そのまま森の王の胴へと駆け下りる。左手の武器と左腕の影で森の王の身体を締め上げた。

そのまま森の王の攻撃を避けながら、今度は右腕の影を絡めていく。

「ゴァアアアアアアアア!」

森の王は思うように動けなくなってきた。アリスは右手の剣を地面につきたて、森の王を拘束する。

「ハァ、ハァ…」

アリスは辛そうに肩で息をする。どうやらそれなりに負荷のかかる状態らしい。その上久しく使っていなかったためか、体がついていけていないようだ。

「これで…止められる!」

アリスが安堵したその時だった。

「グ…ガァア」

森の王がおとなしくなったかと思った次の瞬間、森の王が纏っている狂気のオーラが体の中心に集まっていく…!

「ゴァアアアアアアア!!!!!」

辺りをつんざく咆哮とともに、狂気のオーラが爆発する!

「キャァアアアアアアア!」

近くにいたアリスは何とか拘束を解くまいと踏みとどまるも、あまりの威力に吹き飛ばされてしまった。

「くぅ…森の王は!」

先ほどまで拘束していた影は吹き飛ばされてしまったようだ。

「嘘…」

意図せずして、アリスの封印も戻ってしまったようだ。髪はいつもの銀髪に戻り、刺青もどこかへと引っ込んでしまった。

やはり使い慣れていない力に体の方がついていけなかったようだ。

急に疲労感が身体を襲い、たまらずその場に倒れこむアリス。

「クッ…まだ…こんなところで!」

ズン! ズン!

ゆっくりと森の王が近づいてくる。
ふとアリスの周りに影ができる。森の王が腕を振り上げ、アリスめがけて振り下ろす!

「…?」

目を閉じたアリスだが、いつまでたっても攻撃が来ない。
ふと目を開けると…

「…クライン!」

「ごめん、遅くなった!」

「ヌォオオオオ!」

一緒に来たドイルが森の王に体当たりをかます。突然の不意打ちにバランスを崩し、再び転倒する森の王が数m先で見えた。

どうやらグリフォンダガーの瞬時移動で間一髪脱出したらしい。

「何とか間に合ったみたいね」

抱きかかえられたアリスの顔をナタリアがのぞく。

「こっちもちゃんと準備してきたわ」

ナタリアの手には液体の入った小瓶があった。おそらくこれが聖水というやつだろう。

「さぁ、アリスはここで休んでいて」

「大丈夫、まだ動けるわ」

アリスは立ち上がると、武器を取り出す。

「クライン、アリス。ドイルと一緒に奴の気を引きつけてちょうだい。隙を見てこいつを浴びせてやるわ」

ナタリアは二人の肩をトンと押す。

「さぁて、リベンジマッチよ!」
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