銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

文字の大きさ
11 / 359
第二章 たった二人の城

家庭的なギウ

しおりを挟む
 魚の姿をした種族ギウと共に砂浜から崖上へと続く階段を昇り、城へ向かう。
 彼は私の案内などなくとも迷うことなく歩いていく。
 その様子から、城の周辺の地理を把握しているようだ。


 彼と共に、城の台所までやってきた。
 大量に取れた魚で料理でも作ってくれるのだろうか?
 彼は荒れ果てた台所を見て、身振り手振りを交え何かを尋ねてきた。
「ギウ、ギウギウ、ギウ?」

 言葉はさっぱりだったが、なんとなく包丁やまな板、鍋などの道具はどこにあるのかと尋ねられているように感じる。

「すまないな、ほとんど片付いていない状況で。道具類はここから少し離れた倉庫に入れてある。調味料の類もあるから取りに行こう」


 ギウを引き連れ、倉庫へ移動する。
 倉庫には乱雑に積まれた荷物。
 私は陽射しが降り注ぐ天井を見上げながら、早急に屋根の必要性を考えていた。

「雨が降る前に何とかしないと。しばらくの間、道具類は割れていない甕の中に保存しておくとして……さて、調味料や包丁はどこに置いたか?」

 ギウに手伝ってもらい、荷解きを行う。
 程なくして、包丁、まな板、大鍋、油、調味料類が見つかった。
 それらの探し物の途中で、仕舞い込んでいた古城トーワに関する書類も見つかる。

「こんなところにあったのか。今夜にでも目を通しておかないと」
「ギウ?」
「ん? ああ、これか? 赴任の際に貰った書類だ。大したことは書いてないだろうが、一応、一般の者には見せられない。すまないな」
「ギウ」


 ギウは軽く頷き、鍋類を運び出していった。
 見た目は巨大な魚で迫力があるが、かなり分別のある者のようだ。
 私は早足で書類を三階の寝所にあるソファにおいて台所へ向かった。

 台所ではギウがお湯を沸かしつつ、まな板の上に置いた魚を捌いている最中だった。


 彼は尾から頭に向かって包丁の先を動かし、鱗を剥がしている。
 それが終えると頭を落とし、刃先で腹に切り込みを入れて内臓をかき出す。
 そして、木桶に貯めた水で血や鱗を洗い流し、綺麗なタオルで魚の水気を取り、まな板を洗い流して、その表面を別の布で拭いた。

 こうして、瞬く間に二十尾はいた魚が捌かれ、二尾はぶつ切りに。もう二尾は三枚におろされた。
 残りの魚は頭を残し捌かれ、最初の四尾とは別に分けられた。

 あまりの包丁さばきに私の出る幕がない。
 彼の後ろで『魚が魚を捌くのかぁ』と下らぬことを考えているだけだ。

 
 次に、ギウは塩のみをお湯に入れ、下地となるスープを作っている様子。
 その合間に野菜を刻んでいる。

 完全に手持ち無沙汰の私だが、黙って見学しているのも悪い。
「ギウ、何か手伝えることはあるか?」
 こう尋ねると、ギウは焚き木用の木の枝を手に取って、これを集めてきて欲しいと頼んできた。
 彼は手で大きさを指定する。
 必要な枝はあまり大ぶりなものではないようだ。

 私はコクリと頷き、急ぎ足で城の少し先にある森に向かう。
 そして、地面に落ちている小枝を籠に入れて、城へ戻る。
 その帰りの途中で、かまどにあった焚き火の痕跡のことを思い出す。
「おそらくあれはギウが使用した痕跡だったんだな。どうりで迷わずかまどに直行できるわけだ」


 焚き火の謎が解けて揚々と城に近づく。すると、胃を刺激する美味しそうな匂いが漂ってきた。
 ここに訪れて、まだまともな食事にありついていない。
 食べた物は小麦を焼いたものと小麦の団子のみ。

 城を包む香りに舌が唾液に溺れる。
「ごくり、これは期待できそうだな」

 小枝の入った籠を抱え、台所へ戻ってきた。
 食欲のそそる香りに満ちた場に、思わずよだれが零れそうになる。
 それをグッと我慢して、ギウに小枝を渡した。

「ギウ、小枝を持ってきたぞ。これをどうするつもりなんだ?」
「ギウ」
 彼は二つあるかまどの前に立っている。
 一つはスープの中で魚と野菜類が仲良く煮込まれていた。
 さらに、すでに二尾の魚が焼き終わっていて、それらが皿に盛りつけられている。
 

 そして、もう一つのかまどの上にある大きな鍋の中では、お湯が沸騰していた。
 彼はそのお湯に、先ほど渡した枝を選別して入れていく。
 何をしているのだろうか?
 数本の枝をさっと煮て、取り出す。
 そしてその枝を、頭を残して捌いていた魚の頭に突き刺していった。
 一本の枝に、数尾の魚の頭が通される。魚たちは頭から枝にぶら下がっている状態だ。

 次にお湯の入っていた鍋をどけて、魚を通した枝を置いていく。
 枝はかまどの円の縁に引っかかる大きさで下に落ちることはない。
 枝に支えられ、かまど内で宙ぶらりんになる魚たち。

 次に、かまどの上に鉄鍋を被せると、別の小枝に火をつけ、それをかまどに入れて魚を燻し始めた。
 そこまで来て、ようやくギウが何をしようとしているのかがわかった。


「もしかして、燻製を作っているのか?」
「ギウ」
 ギウは身体を上下に振る。正解のようだ。

「なるほど、さきほど枝を煮たのは殺虫と消毒のためか。そして、燻製と……たしかに燻製なら、ある程度保存が利くからな。しかし君は、釣りが上手く、料理も上手で、燻製まで作れるとは。すごいな」
「ギウ~」

 ギウはエラに手を当てて、身体を左右に振る。照れているようだ。

「はは、ギウには感謝だな。釣った魚が無駄にならなくてよかった。それでは、今日の料理となるのは台の上の焼き魚と、隣のかまどにあるスープかな?」
「ギウギウ」

 ギウは返事をして、燻製の火種を調節し、料理の盛り付けを始めた。
 
「では、私は食事の場所の用意をしておくか。屋内はまだ、ゆっくり落ち着いて食事を取れる場所は確保できていないが、荷物の中に敷物があったはずだ。それを使い、外で準備して待っているよ」
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件

fuwamofu
ファンタジー
ブラック企業で過労死した平凡サラリーマン・榊悠斗は、気づけば剣と魔法の異世界へ転生していた。 チート能力もない地味な村人として静かに暮らすはずだった……が、なぜか魔物が逃げ出し、勇者が跪き、王女がプロポーズ!? 実は神の息子で、世界最強の存在だったが、その力に本人だけが気づいていない。 「無自覚最強」な悠斗が巻き起こす勘違い系異世界英雄譚、ここに開幕!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...