銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

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第九章 危機と頼れる友たち

旧街道

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 旧街道――半島を縦断するマッキンドーの森と汚染された荒れ地の間にある街道。


 この街道はトーワ城から北へ真っ直ぐと伸び、途中からマッキンドーの森を通って、アグリスへと繋がる。
 だが、現在は使われることがないため人影は一切見えず、背の低い雑草たちだけが賑わっている。
 
 街道の西側は森。
 東側には汚染された荒れ地があるが、トーワ城と同じく街道には汚染の影響は見えず緑に溢れていた。
 馬に跨るフィナは手のひらサイズの真実の瞳ナルフを取り出して、街道と荒れ地の境界線を観察している。


「ここも防壁のところと同じ。この街道を境界に見えない壁がある」
「これも遺跡の力か……上手い具合に街道を境界にしてくれているな」
「う~ん、そうでもないかも。街道は少し荒れ地の影響を受けてる」
「そうなのか?」

「うん、街道の全体から見て東寄りの部分10%ってところ。もし、長い時間をかけて浄化しているなら、あと数年か十数年かで街道から影響はなくなるかも」
「気の長い話だ」
「遺跡の探索が可能になったら、浄化機構に触れることができるかもよ。そうしたら、むふ」


 フィナはニンマリとした笑顔をこちらへ見せてくる。
 この笑いは、あんたも興味あるでしょ。浄化したいでしょ。だから、協力するよね。の笑顔だ。

「まぁ、興味はある。だが、入念な下調べをしてからな。それでは、街道をチェックしながらトーワへ帰るとするか。エクア、しっかりフィナにつかまっておくんだぞ」
「はい」

 エクアはフィナの背中にぴったりくっつくような体勢をとる。
 その様子に何故かご満悦のフィナ。


「ふふ~ん、いいねぇ。この小動物感。守りがいがある」
「おや、人に頼られるのは好きなのか?」
「頼ってくる人によるかな。エクアは可愛いから大丈夫。あんたは微妙」
「ふっ、それは光栄だ。さて、行こう」


 鼻から軽く息を飛ばし、馬の手綱を打つ。
 フィナはさらりと嫌味をかわされたことにム~っと不満顔を見せながら後ろからついてきた。

 街道を観察しつつ馬の足を運ぶ。
 整備されていない街道は背の低い草によって埋め尽くされているが、草は薄っすらと道の形を浮かべていた。
 道には、倒木や岩などなく、今でも道として機能できている。

 時折、背の高い草もあるようなので、草が車輪に絡まる可能性のある馬車を使った移動は難しそうだ。
 だが、徒歩や馬での移動ならばそれほど問題ではない。

 私は風に揺れる黄色の花に目を向けながら声を出す。それにエクアが言葉を返してきた。


「思ったよりも道として使えそうだな」
「そうですね。でも、今後ワントワーフの皆さんと交流を深めるなら、整備は必要になるかもしれませんよ」
「そうだな。大きな荷物を運ぶとなれば、荷馬車が必要。荒れ地を縦断するという手もあるが、あっちはあっちでヒビ割れた大地が車輪を掴む。それに、空気も悪いしな」


 私たちが会話を行っている間、フィナは会話に参加することなくナルフを傍に浮かべ、それを覗き込んでいる。
 ひし形の青水晶の形をしたナルフは荒れ地の状態を走査スキャンし、データとして表面に波形を浮かべているようだ。


「とりあえず、何も問題はなさそ。つまんないね」
「またそれか。君はなんで厄介事を好むんだ? それと、ながら乗馬はやめろ。危ないぞ」
「大丈夫よ、走ってるわけじゃないし。それに、厄介事イベントは旅にとって大事なエッセンスでしょ?」
「トロッカー鉱山で起きた事故のようなエッセンスが欲しいのか、君は?」

「ああいうのじゃなくて、血沸き肉躍る感じ。私の戦士の血が、こうカ~っと沸騰するような」
「君は錬金術師だろ?」
「そうだけど、学問と戦士の才能があるなら、両方生かしたいみたいな?」
「はぁ、あまり調子に乗っていると、いずれ痛い目に遭うぞ」

「残念、今のところそんな目に遭ったことないし。ま、魔族を三匹同時に相手できる私をどうこうできる奴なんて滅多にいないからね」


「…………三匹ではなく、七匹ならどうだ?」
「七匹? あ~、山脈を越えてきた奴ら? さすがに~、その数はきついかも。あんたたちを守りながらなら絶望的だね」
「そうか……だが、ここは踏ん張ってもらいたい……」
「え?」

 
 フィナがナルフから視線を切り、前へ向ける。


「ぐぐぐがぁぁあ」
「げっげげごごごぉぉ」

 それらは喉奥から唾液を巻き上げるような呻き声を響かせる。
 全身を毛に覆われる者。蜥蜴トカゲのように滑らかな皮膚を見せる者。
 顔もまた、獣の顔を持つ者。爬虫類のような顔を持つ者。

 服の原型が全くない襤褸ぼろを纏う者に、服すら纏っていない者。
 そのような異形の存在が唾液をぽたりぽたりと落とし、私たちの前に立ちはだかる。
 私は声を振るわせ、異形の名を呼んだ。


「魔族……」
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