118 / 359
第十一章 世界とトーワと失恋
すまない、あとは任せた!
しおりを挟む
――トーワ城・一階広間
私とギウとエクアと親父の四人は、キャビットを訪ねるメンバーついての話を行っていた。
そこに、ゴリンがある男を引き連れてやってきた。
「ケント様、少しよろしいでやしょうか?」
「どうした、ゴリン?」
「実は、この男がケント様の下で働きたいと」
「はは、どうも、お久しぶりです」
と、ゴリンの背後に立っていた男が挨拶をしてきた。
両腕両足は非常に逞しく、肌は黒々と日焼けした茶色の短髪の男。
しかし、私にはこのような男に見覚えはない。
「うん、どこかで会ったか?」
「いえ、直接は。あの俺、アルリナの港にあるストマー食堂にいた者で、そこでフィナさんから蹴っ飛ばされた……」
「ああ~、思い出したぞっ。あの、恋人を奪われみっともなく泣いて、」
「ケント様ケント様っ、ちょっとそれはっ」
エクアに服の端を引っ張られる。
その刺激を受けて、私は慌て口元に手を置いた。
「おっと、すまない」
「い、いえ、俺はみっともない男ですから……」
ガタイの良い男はその見た目とは違い心は繊細なようで、体を縮こませて小刻みに震えている。
ギウと親父は私を責めるような目で見てきた。
「ギウギウ」
「話はよくわかりませんが旦那、デリカシーってやつがないのはわかりますぜ」
「そうだったな。えっ~と、君は~」
「グーフィスと申します」
「グーフィスか。言葉が過ぎた。すまない」
「いえ、大丈夫です」
「それで、私の下で働きたいと? 元の職業はなんだ?」
「航海士をしていました」
「航海士? 悪いが、トーワには君の能力を役立てそうな場所はないぞ」
「それは承知しています。そこで、ゴリンの棟梁の下で大工仕事を学び、城の整備の仕事を任せていただけないかと思いまして」
「なるほど、それはありがたいが……どうして、ここで働きたい? 航海士の仕事の方が実入りが良いだろうに」
「それはぁ~」
グーフィスはぶっとい人差し指同士をくっつけるようにくるくる回し、よく日に焼けた肌の上からでもわかるくらいに頬を赤くしながら、こう答えた。
「フィ、いえ、あの、ケント様はムキからアルリナを救ってくださったお方。そんなお方に憧れまして、ぜひともお傍でお役に立ちたいんです」
「ふむ……それは嘘だろ?」
「ギクッ!」
「ふふふ、君はわかりやすいな。本当の目的を言いなさい。別に咎めるようなことはしないから」
「は、はい……その、先日の食堂で、フィナさんから蹴っ飛ばされ、その~、活を入れられたというか、新鮮な気分になったというか、生まれ変わったというか」
グーフィスは両拳をギュッと握りしめて、頬をさらに赤く染めて言葉をたどたどしくしていく。
その様子を見て、私は気づいた。
「もしかして、フィナにお礼参りをしに来たのか?」
「え? は、はい、フィナさんにお礼が言いたくてっ」
「そうか。しかし、彼女は手強いぞ。泣くだけでは済まぬかも」
「それは承知の上です!」
「なるほど、覚悟はできているというならば止めはしない。君がお礼を完遂できることを祈っておこう」
「あ、ありがとうございます、ケント様」
「大工仕事の方は?」
「それももちろん、全力で頑張らせてもらいます!」
私とグーフィスが会話を重ねる横で、ギウたちがこそりと会話を行っている。
「ギウ、ギウギウ」
「はい、たぶんケント様、勘違いしてますよね」
「あのグーフィスという男はフィナの嬢ちゃんを?」
「そうでやしょうな。まったく、仕事をさせてくれって必死こいて頼むから真面目な奴と思いきや、色恋沙汰とは、このゴリンも舐められたもんですわ」
こそりと会話を重ねる四人へ、私は顔を向ける。
「私は今から事務仕事を片付けるのでグーフィスのことは皆に頼んだ。ではっ!」
私は足をぐるぐると回転させる勢いで階段を駆け上がり執務室へと逃げ込んだ。
その姿を見た四人が怒ったような口調を背中にぶつけてくる。
「ギウ!? ギウギウ!」
「ケント様、まさか!?」
「旦那、気づいてるでしょう! 」
「面倒だと思い、あっしらに丸投げして逃げ出しやしたねっ」
私とギウとエクアと親父の四人は、キャビットを訪ねるメンバーついての話を行っていた。
そこに、ゴリンがある男を引き連れてやってきた。
「ケント様、少しよろしいでやしょうか?」
「どうした、ゴリン?」
「実は、この男がケント様の下で働きたいと」
「はは、どうも、お久しぶりです」
と、ゴリンの背後に立っていた男が挨拶をしてきた。
両腕両足は非常に逞しく、肌は黒々と日焼けした茶色の短髪の男。
しかし、私にはこのような男に見覚えはない。
「うん、どこかで会ったか?」
「いえ、直接は。あの俺、アルリナの港にあるストマー食堂にいた者で、そこでフィナさんから蹴っ飛ばされた……」
「ああ~、思い出したぞっ。あの、恋人を奪われみっともなく泣いて、」
「ケント様ケント様っ、ちょっとそれはっ」
エクアに服の端を引っ張られる。
その刺激を受けて、私は慌て口元に手を置いた。
「おっと、すまない」
「い、いえ、俺はみっともない男ですから……」
ガタイの良い男はその見た目とは違い心は繊細なようで、体を縮こませて小刻みに震えている。
ギウと親父は私を責めるような目で見てきた。
「ギウギウ」
「話はよくわかりませんが旦那、デリカシーってやつがないのはわかりますぜ」
「そうだったな。えっ~と、君は~」
「グーフィスと申します」
「グーフィスか。言葉が過ぎた。すまない」
「いえ、大丈夫です」
「それで、私の下で働きたいと? 元の職業はなんだ?」
「航海士をしていました」
「航海士? 悪いが、トーワには君の能力を役立てそうな場所はないぞ」
「それは承知しています。そこで、ゴリンの棟梁の下で大工仕事を学び、城の整備の仕事を任せていただけないかと思いまして」
「なるほど、それはありがたいが……どうして、ここで働きたい? 航海士の仕事の方が実入りが良いだろうに」
「それはぁ~」
グーフィスはぶっとい人差し指同士をくっつけるようにくるくる回し、よく日に焼けた肌の上からでもわかるくらいに頬を赤くしながら、こう答えた。
「フィ、いえ、あの、ケント様はムキからアルリナを救ってくださったお方。そんなお方に憧れまして、ぜひともお傍でお役に立ちたいんです」
「ふむ……それは嘘だろ?」
「ギクッ!」
「ふふふ、君はわかりやすいな。本当の目的を言いなさい。別に咎めるようなことはしないから」
「は、はい……その、先日の食堂で、フィナさんから蹴っ飛ばされ、その~、活を入れられたというか、新鮮な気分になったというか、生まれ変わったというか」
グーフィスは両拳をギュッと握りしめて、頬をさらに赤く染めて言葉をたどたどしくしていく。
その様子を見て、私は気づいた。
「もしかして、フィナにお礼参りをしに来たのか?」
「え? は、はい、フィナさんにお礼が言いたくてっ」
「そうか。しかし、彼女は手強いぞ。泣くだけでは済まぬかも」
「それは承知の上です!」
「なるほど、覚悟はできているというならば止めはしない。君がお礼を完遂できることを祈っておこう」
「あ、ありがとうございます、ケント様」
「大工仕事の方は?」
「それももちろん、全力で頑張らせてもらいます!」
私とグーフィスが会話を重ねる横で、ギウたちがこそりと会話を行っている。
「ギウ、ギウギウ」
「はい、たぶんケント様、勘違いしてますよね」
「あのグーフィスという男はフィナの嬢ちゃんを?」
「そうでやしょうな。まったく、仕事をさせてくれって必死こいて頼むから真面目な奴と思いきや、色恋沙汰とは、このゴリンも舐められたもんですわ」
こそりと会話を重ねる四人へ、私は顔を向ける。
「私は今から事務仕事を片付けるのでグーフィスのことは皆に頼んだ。ではっ!」
私は足をぐるぐると回転させる勢いで階段を駆け上がり執務室へと逃げ込んだ。
その姿を見た四人が怒ったような口調を背中にぶつけてくる。
「ギウ!? ギウギウ!」
「ケント様、まさか!?」
「旦那、気づいてるでしょう! 」
「面倒だと思い、あっしらに丸投げして逃げ出しやしたねっ」
10
あなたにおすすめの小説
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件
fuwamofu
ファンタジー
ブラック企業で過労死した平凡サラリーマン・榊悠斗は、気づけば剣と魔法の異世界へ転生していた。
チート能力もない地味な村人として静かに暮らすはずだった……が、なぜか魔物が逃げ出し、勇者が跪き、王女がプロポーズ!?
実は神の息子で、世界最強の存在だったが、その力に本人だけが気づいていない。
「無自覚最強」な悠斗が巻き起こす勘違い系異世界英雄譚、ここに開幕!
迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜
サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。
父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。
そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。
彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。
その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。
「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」
そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。
これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる