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第十一章 世界とトーワと失恋
愛の告白
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一階の広間――
フィナさんへ、『私が城の外で待っている』――そう、親父さんに言付けをお願いします。
こうして呼び出されたフィナさんが地下から広間までやってきたところで、グーフィスさんが告白を行う予定です
私たちはそれを陰ながら看取る……見守ることにしました。
呼び出され、地下の研究室から出てきたフィナさんが広間を通り、正面玄関に向かおうとしています。
そこへ予定通りグーフィスさんが姿を現して声を掛けました。
「あ、あの、ふぃ、フィナさんっ」
「うん? 誰、あんた?」
なんと、フィナさんはグーフィスさんのことを覚えていません。
出鼻をくじかれましたが、グーフィスさんはめげずに自己紹介をしています。
「お、俺はストマー食堂でフィナさんに蹴っ飛ばされたグーフィスという者です」
「蹴っ飛ばした? ああ、あの時のヘタレ」
「ぐはっ! へ、へた……はい、そうですっ」
フィナさんの痛恨の一撃が決まりました。ですが、グーフィスさんは片膝をつくことなく、しっかり両足で立っています。思いのほか頑丈な方です。
グーフィスさんはさらに言葉を続けているようです。
「あの、実は今日はお話があって」
「話? なに、まさか、仕返しに来たの? いい度胸してるじゃない。相手になってやる!」
フィナさんは赤黒い気を纏って、鞭に手を置き臨戦態勢に入りました。
それを見たグーフィスさんは慌てて誤解と伝え、さらにお礼を口にします。
「ま、待ってください! 仕返しなんてとんでもねぇ。それどころか、フィナさんのおかげで立ち直れました! ありがとうございます!!」
「あら、そうなの?」
フィナさんは殺気を消します。だけど、鞭に手を置いたままです。
臨戦態勢は依然崩していません……。
「それで、わざわざお礼を言いにトーワまで?」
「いえ、とても伝えたい思いがありまして」
「なに?」
「俺、俺、グーフィス=ストランはあなたが、フィナさんが、フィナさんのことがっ、好きなんです!!」
グーフィスさんの告白が広間に広がりました。
それを柱や壁そばなどの物陰から、私やギウさん・親父さん・ゴリンさん。
そして、いつ耳にしたのか、カイン先生にキサちゃん。さらには大工の皆さんやお手伝いさんに物資を運んでいる配達屋さんも覗いています。
皆さん、まるで暗殺者のように、気配を消し去りこっそりと……。
告白を終えたグーフィスさんは、全身から汗を拭きだして呼吸はバラバラ。動悸は激しい様子で肩を激しく上下させて、カラカラであるはずの喉なのに、何度も唾を飲み込む動作を見せていました。
一人の男性が伝えたい大切な思いに、恐れと期待を込めた告白。
それを受けたフィナさんは…………グーフィスさんの腹部を殴りつけました!?
「ふんぬっ!」
「ぐふっ! ど、どうして……?」
広間の石床にばったりと倒れるグーフィスさん。
それを鋭い眼光とともに見下ろしながら、『どうして』の言葉にフィナんさんは答えます。
「どうしてもなにもないでしょ。最近振られたばっかりで、私に? 舐めんなよ」
「へ? ごほごほ」
「あんたを振った女よりも、私の方が落としやすいとでも思ったの?」
「ごほっ、ち、ちがいます! 俺は心の底からフィナさんを!」
「はぁ!」
フィナさんはグーフィスさんの腹部を踏みつけるように足を置きます。
「あんたさぁ、酒に逃げるぐらいに愛した女がいたんでしょ? それをいきなり私に乗り換えるなんて……心の底から? 信じれるわけないでしょっ!」
「それは……違うんです!」
「どう違うのよ?」
「俺にはたしかに愛した女性がいた。だけど裏切られた! 絶望もした! でも、フィナさんが救ってくれた! あなたのくれた説教で、俺は前を向けた! 新しく道を歩む勇気を持てたんです!」
「ふ~ん、それで?」
「俺は自分を変えてくれた、フィナさんに惚れたんです! うじうじしていた俺の全てを吹き飛ばしてくれたフィナさんが、フィナさんが大好きなんですっ!!」
「へぇ~」
フィナさんはグーフィスさんの腹部に乗せていた足を降ろしました。
少しは認めた、ということでしょうか? 目は氷のように冷たいままですが……。
フィナさんはため息交じりの声を漏らしながら首を横に振っています。
「はぁ、ま、気持ちはわかった。でもね、簡単に心変わりしてる印象は拭えないよ。昨日の今日で昔の女は忘れました。あなたのことが好きです、なんて」
「うっ」
「まぁ、女心っていうの? 人の心の機微がわかってないよね。せめて、もう少し経験を積んでから来なさい。じゃ、私は待ち合わせがあるから」
フィナさんは床に転がるグーフィスさんを置いて、私と待ち合わせをしている場所に向かいました。
フィナさんの姿が消えたところで、広間に隠れていた人たちがぞろぞろと出てきます。
ギウさんから親父さん・カイン先生・ゴリンさん・キサちゃんと会話のバトンが繋がっていきます。
「ギウギウ……ギウ」
「ええ、予想通りの末路でしたな」
「カウンセリングは専門ではないのですが、抗不安薬でも処方しましょうか?」
「いやいや、カイン先生。若いんだから薬に頼らずとも大丈夫でやしょう」
「でも、お酒を飲んで暴れられても困るよ。もし、どうしても飲みたいなら、私の隣のミニャさんのお店で販売してるからよろしくね」
わかりきった結末とはいえ、ひどい惨状には違いありません。
ですが、私にはどうすることもできませんので、フィナさんとの話の都合を合わせるべく、待ち合わせ場所へ向かうことにしました。
去り際に、グーフィスさんに慰めの言葉を送ります。
「あの、あまり思いつめないでくださいね」
「あ、ああ、わかってる。ありがとよ」
「いえ」
受け答えは思ったよりもはっきりしています。大丈夫そうです……と思ったのですが、この人、とんでもない勘違いを言葉に出しました。
「経験が足りないからいけねぇのか。だったら、もっと色んな女と付き合って、フィナさんにアタックしねぇとな!!」
広間にいた一同はガクッと頭を落とします。
これはどうしようもない人のようです。
ここに、トーワ一のナンパ男が誕生してしまいました。
もちろん、誰にも相手にされないのですが……ところが、このナンパ男となってしまったグーフィスさんが、トーワで奇妙な女性と出会ってしまうのです……。
フィナさんへ、『私が城の外で待っている』――そう、親父さんに言付けをお願いします。
こうして呼び出されたフィナさんが地下から広間までやってきたところで、グーフィスさんが告白を行う予定です
私たちはそれを陰ながら看取る……見守ることにしました。
呼び出され、地下の研究室から出てきたフィナさんが広間を通り、正面玄関に向かおうとしています。
そこへ予定通りグーフィスさんが姿を現して声を掛けました。
「あ、あの、ふぃ、フィナさんっ」
「うん? 誰、あんた?」
なんと、フィナさんはグーフィスさんのことを覚えていません。
出鼻をくじかれましたが、グーフィスさんはめげずに自己紹介をしています。
「お、俺はストマー食堂でフィナさんに蹴っ飛ばされたグーフィスという者です」
「蹴っ飛ばした? ああ、あの時のヘタレ」
「ぐはっ! へ、へた……はい、そうですっ」
フィナさんの痛恨の一撃が決まりました。ですが、グーフィスさんは片膝をつくことなく、しっかり両足で立っています。思いのほか頑丈な方です。
グーフィスさんはさらに言葉を続けているようです。
「あの、実は今日はお話があって」
「話? なに、まさか、仕返しに来たの? いい度胸してるじゃない。相手になってやる!」
フィナさんは赤黒い気を纏って、鞭に手を置き臨戦態勢に入りました。
それを見たグーフィスさんは慌てて誤解と伝え、さらにお礼を口にします。
「ま、待ってください! 仕返しなんてとんでもねぇ。それどころか、フィナさんのおかげで立ち直れました! ありがとうございます!!」
「あら、そうなの?」
フィナさんは殺気を消します。だけど、鞭に手を置いたままです。
臨戦態勢は依然崩していません……。
「それで、わざわざお礼を言いにトーワまで?」
「いえ、とても伝えたい思いがありまして」
「なに?」
「俺、俺、グーフィス=ストランはあなたが、フィナさんが、フィナさんのことがっ、好きなんです!!」
グーフィスさんの告白が広間に広がりました。
それを柱や壁そばなどの物陰から、私やギウさん・親父さん・ゴリンさん。
そして、いつ耳にしたのか、カイン先生にキサちゃん。さらには大工の皆さんやお手伝いさんに物資を運んでいる配達屋さんも覗いています。
皆さん、まるで暗殺者のように、気配を消し去りこっそりと……。
告白を終えたグーフィスさんは、全身から汗を拭きだして呼吸はバラバラ。動悸は激しい様子で肩を激しく上下させて、カラカラであるはずの喉なのに、何度も唾を飲み込む動作を見せていました。
一人の男性が伝えたい大切な思いに、恐れと期待を込めた告白。
それを受けたフィナさんは…………グーフィスさんの腹部を殴りつけました!?
「ふんぬっ!」
「ぐふっ! ど、どうして……?」
広間の石床にばったりと倒れるグーフィスさん。
それを鋭い眼光とともに見下ろしながら、『どうして』の言葉にフィナんさんは答えます。
「どうしてもなにもないでしょ。最近振られたばっかりで、私に? 舐めんなよ」
「へ? ごほごほ」
「あんたを振った女よりも、私の方が落としやすいとでも思ったの?」
「ごほっ、ち、ちがいます! 俺は心の底からフィナさんを!」
「はぁ!」
フィナさんはグーフィスさんの腹部を踏みつけるように足を置きます。
「あんたさぁ、酒に逃げるぐらいに愛した女がいたんでしょ? それをいきなり私に乗り換えるなんて……心の底から? 信じれるわけないでしょっ!」
「それは……違うんです!」
「どう違うのよ?」
「俺にはたしかに愛した女性がいた。だけど裏切られた! 絶望もした! でも、フィナさんが救ってくれた! あなたのくれた説教で、俺は前を向けた! 新しく道を歩む勇気を持てたんです!」
「ふ~ん、それで?」
「俺は自分を変えてくれた、フィナさんに惚れたんです! うじうじしていた俺の全てを吹き飛ばしてくれたフィナさんが、フィナさんが大好きなんですっ!!」
「へぇ~」
フィナさんはグーフィスさんの腹部に乗せていた足を降ろしました。
少しは認めた、ということでしょうか? 目は氷のように冷たいままですが……。
フィナさんはため息交じりの声を漏らしながら首を横に振っています。
「はぁ、ま、気持ちはわかった。でもね、簡単に心変わりしてる印象は拭えないよ。昨日の今日で昔の女は忘れました。あなたのことが好きです、なんて」
「うっ」
「まぁ、女心っていうの? 人の心の機微がわかってないよね。せめて、もう少し経験を積んでから来なさい。じゃ、私は待ち合わせがあるから」
フィナさんは床に転がるグーフィスさんを置いて、私と待ち合わせをしている場所に向かいました。
フィナさんの姿が消えたところで、広間に隠れていた人たちがぞろぞろと出てきます。
ギウさんから親父さん・カイン先生・ゴリンさん・キサちゃんと会話のバトンが繋がっていきます。
「ギウギウ……ギウ」
「ええ、予想通りの末路でしたな」
「カウンセリングは専門ではないのですが、抗不安薬でも処方しましょうか?」
「いやいや、カイン先生。若いんだから薬に頼らずとも大丈夫でやしょう」
「でも、お酒を飲んで暴れられても困るよ。もし、どうしても飲みたいなら、私の隣のミニャさんのお店で販売してるからよろしくね」
わかりきった結末とはいえ、ひどい惨状には違いありません。
ですが、私にはどうすることもできませんので、フィナさんとの話の都合を合わせるべく、待ち合わせ場所へ向かうことにしました。
去り際に、グーフィスさんに慰めの言葉を送ります。
「あの、あまり思いつめないでくださいね」
「あ、ああ、わかってる。ありがとよ」
「いえ」
受け答えは思ったよりもはっきりしています。大丈夫そうです……と思ったのですが、この人、とんでもない勘違いを言葉に出しました。
「経験が足りないからいけねぇのか。だったら、もっと色んな女と付き合って、フィナさんにアタックしねぇとな!!」
広間にいた一同はガクッと頭を落とします。
これはどうしようもない人のようです。
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